スマートフォンの通知を受けたり支払いにも使える便利なスマートウォッチですが、日々腕にはめているということから健康管理デバイスとしての用途も広がっています。スマートウォッチの心拍数計測機能はもはや一般的であり、最近では血中酸素濃度測定可能な製品も急増しています。しかしそれだけにとどまらず、さらに高度な機能を持ったスマートウォッチが登場しています。

「BP Doctor MED」は血圧が測れるスマートウォッチです。一部のスマートウォッチにも血圧測定機能を搭載したものがありますが、その精度はいまひとつ。医療機器としてではなく自分の健康状態の傾向を見る程度に使うレベルのものでした。それらに対してBP Doctor MEDは、市販されている血圧計のように腕を圧迫して血圧を測定可能で、高い精度のデータを得ることができます。BP Doctor MEDがあれば旅行先にも血圧計を持っていく必要がなく、腕に時計をはめているだけで常に血圧測定が可能なのです。

  • 外観は普通のスマートウォッチと変わらないBP Doctor MED

BP Doctor MEDは時計の裏側にじゃばら状の「カフ」を内蔵しています。血圧測定時には、時計を心臓と同じ高さに置いて、20秒ほど待ちます。するとカフが手首を圧迫して正確な血圧が測定できるのです。市販されている血圧測定可能なスマートウォッチはPPG式で血圧を測定しますが、誤差はプラスマイナス20mmHgとかなり広め。一方BP Doctor MEDはプラスマイナス5mmHgと、医療機器として使える精度とのこと。

  • 時計の裏側の「カフ」が手首を圧迫して正確な血圧を測定

BP Doctor MEDはクラウドファンディングのIndiegogoで資金調達を行ないましたが(2021年12月時点)、開始早々に目標金額を大幅にクリア。自分自身が血圧計を必要としていなくとも、高齢なご両親など家族の健康を気にする人も出資をしているのでしょう。BP Doctor MEDはもちろんスマートウォッチとして日々の運動量の計測もできますし、血圧データもスマートフォンに保存可能。自動測定機能もあり、そのデータは家族や医者と共有できますから、遠地に離れていても家族の健康状態を確認できます。

  • 血圧データを医者や家族と共有できるのは便利だ

定価は359ドル(約4万1,000円)、クラウドファンディング終了後は一般販売も期待されており、これまでスマートウォッチに興味のなかった高齢者などにも注目される製品になりそうです。なお電池の持ちは一般的な使い方で7日間とのこと。1週間に1度の充電ならわずらわしさもないでしょう。

  • 自宅でリラックスしながら血圧を測ることもできる

一方、糖尿病の患者さんなど日々血糖値の測定を行っている方々に便利なスマートウォッチが現在開発中の「K’Watch Glucose」です。こちらも見た目は普通のスマートウォッチ。腕に装着して使います。

  • 血糖値を測定できるK'Watch Glucose

K’Watch Glucoseは時計の裏面に「SkinTaste」テクノロジーと呼ぶ技術を使用したパッチ「K'apsul」を取り付け利用します。このK'apsulは表面に小さな針(マイクロニードル)が配置されており、皮膚を通して痛みを伴わずに血糖値を測定できるとのこと。K'apsulは7日間の使用が可能。定期的に交換する必要があるものの、スマートウォッチを腕にはめていればどんなときでも血糖値を測定できる点は利便性が高いでしょう。なお一度の充電で7日間利用可能、本体は2万円程度になる予定です。

  • マイクロニードルのついたパッチで測定、パッチは7日ごとに交換する

今回紹介したBP Doctor MED、K'Watch Glucoseはどちらも常に身に着けておく腕時計型デバイスです。「すでに左手にはApple Watchをはめている」という人もいるでしょうが、これからは健康管理用の医療スマートウォッチを右手にはめ、両手にスマートウォッチ、なんてスタイルも一般的になっていくのかもしれません。もちろん1つのスマートウォッチであらゆることができるのが理想ですから、スマートウォッチメーカーだけではなく、医療センサーを開発するメーカーも部材の小型化や測定データの精度アップの開発を進めていることでしょう。

  • どのスマートウォッチを左手にはめるかという「腕の取り合い」もおきそうだ

さらにはスマートフォンで収集した医療データをユーザーの合意のもとに医療機関や保険会社と共有することで、スマートウォッチ単体の価格を下げたり、月額ベースのサービスとして本体無料で提供するビジネス展開も行えるでしょう。K'Watch Glucoseは毎週パッチの交換が必要ですが、パッチを10枚パック、20枚パックなどで割引販売する以外にも、「月額制、2年契約で毎月パッチ4枚送付」なんて売り方も面白そうです。

  • ヘルスケア製品化する

体重計など様々な機器がスマートフォンと接続され生体データや運動データが記録・管理できるようになったことで、個人個人の健康管理の意識が高まり病気予防の効果も期待できます。スマートウォッチならば朝出かける前にかならず腕にはめるでしょうから、「今日は測定を忘れてしまった」といったことも防げます。スマートフォンのアシスタントとして生まれたスマートウォッチですが、今後はヘルスケア製品として新たな機能展開が計られるようになるかもしれません。

  • 日々のデータ記録が病気予防や健康管理に役に立つ