スマートフォンのカメラ性能は年々高まっています。シャオミの「Redmi Note 10 Pro」は3万4,800円という低価格ながらも1億画素のカメラを搭載しています。日常的な写真撮影はもちろんのこと、夜間でもスマートフォンのカメラなら明るく撮影してくれるため、SNSでシェアする「映える」写真を撮るのにも向いています。
とはいえ、どのメーカーもセンサーはソニーやサムスンなど大手メーカーのモノを使っており、カメラの性能そのもので差別化するのが難しくなっています。そこで最近増えているのが大手カメラメーカーとコラボレーションしたカメラの搭載です。その代表と言えるのはファーウェイで、今から実に5年前、2016年にライカと協業を行い、今ではファーウェイの最新スマートフォンのカメラ性能は業界トップレベルとなっています。
ファーウェイとライカの協業は、中国メーカーであったファーウェイのヨーロッパでの人気拡大を後押ししました。「あのライカが提携している」というだけでも、ヨーロッパの消費者にとっては信用できる製品と思えるわけです。もちろんファーウェイのスマートフォンは性能や仕上げも十分高く、先進国市場でも人気になりました。
このようにカメラメーカーとスマートフォンメーカーの協業は、カメラ品質を高めるだけではなく製品のブランドイメージを高める効果もあります。たとえばソニーは最新のXperiaにツァイス製のレンズを搭載しています。ソニーの名は世界中で知られていますが、残念ながらXperiaの知名度は高くありません。ソニーのデジタルカメラは世界中でも人気ですが、同じブランドのスマートフォンがツアイスのレンズを搭載しているとなれば、多くの消費者が興味を示すことでしょう。「カメラやAV機能に強いXperia」というイメージを強化したことで、ソニーのスマートフォン事業は2020年に3年ぶりとなる黒字を達成しています。
ツァイスとの協業は海外ではノキア(製造販売はHMD Global)も行っています。ノキアブランドのスマートフォンは2017年に市場に復活しましたが、ツァイスとの協業はスマートフォンのカメラ性能の高さをアピールするためにも必須だったと言えます。なお両者の協業は2012年の「Nokia 808 Pureview」から始まっています。
そのツァイスはさらにスマートフォンメーカーとの協業を広げています。Vivoから今年発売された「X60 Pro」「X60 Pro+」はツァイス製カメラを搭載。カメラ部分にはXperiaとは異なり「ZEISS」の青いロゴを誇らしげに入れています。Vivoは日本にはまだ進出していませんが、海外ではカメラを強化したスマートフォンを次々と出しています。X60 Proは光学5軸の手振れ補正を持ったジンバルカメラを搭載、X60 Pro+はツアイス「T*コーティングレンズ」を採用。カメラ性能を一気に向上させるとともに、ヨーロッパなど先進国でのプレゼンスが高まるでしょう。
さて老舗のカメラメーカーと言えば、ハッセルブラッドの名前も忘れてはいけません。同社はハイエンドスマートフォンメーカーのOnePlusと提携を開始しました。最新モデル「OnePlus 9 Pro」「OnePlus 9」にはハッセルブラッド開発の「Hasselblad Camera for Mobile」システムを採用。どちらもメインカメラは4,800万画素、超広角カメラは5,000万画素と高画質で、OnePlus 9 Proのメインカメラにはソニーと共同開発した最新の「IMX789センサー」が採用されています。ハッセルブラッドの名に恥じない高性能なカメラセンサーを搭載しているのです。
ハッセルブラッドはモトローラの合体式スマートフォン「moto Z」シリーズ向けに、デジタルカメラのような外観のカメラモジュール「Hasselblad True Zoom Camera Mod」を2016年に発売しました。スマートフォンメーカーとの協業はその頃から進めていたのです。ハイエンドモデルに特化するOnePlusとの協業は、両者のブランド価値を大きく高める相乗効果が期待できます。
サムスンもオリンパスと共同でカメラモジュールを開発するという噂もあります。いずれスマートフォンの背面に、カメラメーカーのロゴが掲示されていることが当たり前になっていくかもしれませんね。