1億800万画素という高スペックなカメラを搭載したスマートフォンをひっさげて、世界シェア4位のスマートフォンメーカーであるシャオミが日本市場に参入しました。しかもスマートフォンだけではなくウェアラブルデバイスの「Miスマートバンド4」などスマートデバイスも投入されます。そしてその中で注目したいのがスマートフォンからコントロールできる炊飯器「Mi IH炊飯器」です。
スマートフォンメーカーが炊飯器を作るとは何の関連性もないように見えますが、しゃおみはすでに多数の家電を中国で販売しています。その多くがシャオミが出資したり協力を行う関連会社によるもの。製品はすべてホワイトカラーで統一され、しかもスマートフォンのアプリ「Mi Home」で一括コントロールができます。現在販売されているスマート家電は空気清浄機、電子レンジ、エアコン、自走式掃除機、浄水器、洗濯機、冷蔵庫など多数。シャオミの中国のWEBサイトで「家電」のページを見ると、まるで家電メーカーのような品ぞろえに驚きます。
その中でも炊飯器は中国の消費者にとっても毎日使う必須の家電です。一時期は中国からの観光客が日本に押し寄せて炊飯器を買い漁った時期があったくらい、中国人の炊飯器に対するこだわりは日本人に負けていません。なかなか国産の炊飯器の性能が上がらない中、シャオミは日本の元サンヨーの技術者を引き入れ炊飯器を開発。つまり世界一性能のいい炊飯器を作る国の技術を中国産の製品に移植したのです。
Mi IH炊飯器はMi Homeアプリから米の種類に応じた細かい設定を自動的に行ってくれます(中国内の米を使うとき)。もちろん炊飯器としての性能も他の国産炊飯器に負けないレベルに仕上がっています。シャオミが炊飯器を手掛けたことで、中国の家電メーカーも改めて炊飯器開発に力を入れたことでしょう。その結果国産炊飯器の性能が高まり、日本に炊飯器を買いに来る中国人が減ったとも言えます。
さて日本では今や核家族化さらには一人暮らしが増えており、自宅に炊飯器の無い家屋も増えています。コンビニやスーパーで一人分の食事を買ったほうが自炊より安上がりということもあるでしょう。また脱・炭水化物の動きもあります。シャオミは日本参入に際しスマート炊飯器を投入しましたが、シャオミのスマートフォンを買うターゲット層はそもそも炊飯器を買わない若い世代が多いと思われます。またご飯の炊き具合にこだわる消費者は引き続き日本メーカーの炊飯器を買うでしょう。
それでもシャオミが日本で炊飯器を販売するのは、日本の技術者が生み出した製品を日本で出すことにより、シャオミがどこまで本気で家電を作りこんだかを日本の消費者に判断してほしいと考えたからと筆者は考えます。おそらく日本の高級炊飯器には性能はかなわないでしょう。しかしスマートフォンから簡単に操作できる機能は優れていますし、シンプルな外観はどんなインテリア、あるいは他社の家電ともマッチします。
もしも日本人から「シャオミもなかなかやるじゃないか」なんて声を聞くことができれば、シャオミの炊飯器の開発に関わっていた人たちもその努力がここで一旦認められたことになるのではないでしょうか。炊飯器の本場である日本にあえてスマート炊飯器を投入した理由は、こんな感情的な背景もあったのではないかと筆者は思うのです。
スマート家電は世界各国で家電メーカーを中心に導入が進んでいるものの、すべてをスマートフォンでコントロールできる家屋はまだまだ多くありません。その要因は様々なものがありますが、家電の買い替えサイクルが長いことやスマート家電の価格が高いこと、1つのスマートフォンアプリで複数メーカーの家電が完全にコントロールできないことなどがあります。しかしシャオミは電源をON/OFFする単純動作のスマートプラグから前述した冷蔵庫など様々な製品を出しています。しかも価格は安価です。
スマート炊飯器を皮切りに、スマートプラグやスマートライトなど手ごろな価格のスマート機器を日本に投入しつつ、冷蔵庫や洗濯機は日本メーカーのスマート製品との連携を果たしていけば、各家庭の中にシャオミの製品がどんどん入り込み、しかもシャオミのアプリでコントロールできる、そんな時代がいずれやってくるかもしれません。
そうなれば「シャオミの家電コントロールアプリを使うなら、シャオミのスマートフォンを使ったほうが便利」と思う消費者も増えるでしょう。結果としてシャオミの全製品の販売数を引き上げる効果も期待できます。2020年のシャオミはスマートフォンだけではなく、スマートデバイスを含めた「シャオミ・ワールド」を日本に展開してくれることでしょう。次はどんな製品が発売されるのか楽しみです。