いまやどのメーカーのスマートフォンも大型ディスプレイを搭載した板状デザインのものばかりになっています。一昔前に流行ったフルキーボードを搭載したモデルも、かろうじてBlackBerryから登場するくらい。ディスプレイサイズが大きくなれば指先タッチも楽になるので、画面上に表示されるソフトウェアキーボードでも長文を楽に入力できるようになっています。

  • 最近のスマホの画面サイズは大型化している

とはいえ物理的なQWERTYキーボードはスマートフォンを机の上に置いてタッチタイプできるというメリットもあります。数千文字の長文を書くときなどはパソコンのようにキーボードがあったほうが入力が楽になるのではないでしょうか。そこに目を付けたスタートアップ企業のPlanet Computersは昨年クラウドファンディングでキーボード付きスマートフォン「Gemini PDA」を発表し、資金調達に成功。日本からの応募も多く日本語キーボードモデルも用意されたほどです。

  • 日本からの出資も多く集めたGemini PDA

そのPlanet Computersから今度はアップグレードモデルとして「Cosmo Communicator」が発表されています。こちらもクラウドファンディングで資金調達を行っていますが、2018年11月26日、締め切りまで10日を残した時点で目標額の400%もの調達に成功しました。世界にはまだまだキーボード付きスマートフォンを求めている消費者が多いということを証明したのです。

  • わずか1年でアップグレードモデルが登場

Cosmo CommunicatorはGemini PDAと開いた状態ではほぼ同じ外観をしています。しかし製品名は初代が「PDA」、今回のモデルが「Communicator」と異なっています。つまり見た目は似ていても異なるカテゴリの製品というわけです。ではどこが違うのでしょうか?

  • 初代モデル(左)と最新モデル(右)

初代のGemini PDAはWi-FiモデルとLTEモデルの2種類がありました。Wi-Fiモデルは超小型のノートPCのように使うことができるAndroid端末で、まだスマートフォンが登場する前に世界中で使われていたPDA(Personal Digital Assistant)を現代によみがえらせたような製品でした。

  • 日本語キーボードモデルもあるGemini PDA

一方Cosmo CommunicatorはLTEモデルを基本にしています。また横開きの本体を閉じると、上ふた部分には電話の発着信ボタンや着信関連の表示ができる小型ディスプレイを搭載しています。つまり「コミュニケーター」、すなわちいつでもどこでも誰かとコミュニケーションをとれるツールになっているわけです。

  • Cosmo Communicatorは閉じたまま電話がかけられる

今から10年以上前にノキアが出していた「E90 Communicator」も同様の製品で、開けばQWERTYキーボード、閉じれば10キーで操作でき、どちらの画面からも電話をかけたりスマートフォンとして使うこともできたのです。Cosmo Communicatorはノキアのコミュニケーターを改めて現代によみがえらせた端末といえるのです。

  • 閉じても開いても使えたNokia E90 Communicator

マニア向けとも思えるCosmo Communicatorですが、iPhoneなどを使いながら長文入力をしたり、エクセルなどのスプレッドシートアプリを使う人には魅力的な製品に見えるかもしれません。最近はMVNOの料金も安いので、iPhoneではできない用途にCosmo Communicatorを使うというのも十分アリでしょう。ノートパソコンやタブレットでもオフィス作業はできますが、普段から身軽で移動したい人には超小型のキーボード端末も十分有用です。

  • カフェでも場所をとらずにスイスイ入力できる

筆者も今年頭にGemini PDAを入手して便利に使っています。Mobile World Congress 2018などの海外展示会でPlanet Computersの関係者に話を伺うと、キーボード端末の選択肢がないことからGemini PDAはニッチな製品ながらも評判はかなりいいとのことでした。とはいえ長年キーボード端末を求めていた人はGemini PDAを買って満足しているでしょうから、1年後に改めてCosmo Communicatorを発表しても出資者はそれほど集まらないだろうと筆者は思ったのです。

  • キーボード愛好者のすべてがGemini PDAを買ったわけではなかった

しかしCosmo Communicatorが4倍以上の資金調達を受けたということは、Gemini PDAを様子見していた人がようやく飛びついたことや、閉じても操作できることから電話機としての使い勝手が高まったことで購入意欲がわいた人も多いということでしょう。またGemini PDAからの乗り換えユーザーもかなりいると思われます。なぜなら前述したようにPDAとコミュニケーターは異なるカテゴリの製品ですから。実は筆者もCosmo Communicatorが発表されたときに「買い替えたい」と思ってしまったくらいですから。

  • 外観もカッコよくなり物欲をそそられる

もちろんキーボード付きスマートフォンに興味のない人には存在すら知られることはないでしょう。でも最近はカメラが飛び出すスマートフォンが出てきたり、画面が折りたためるスマートフォンの話が大きな話題になっています。タッチパネル式のスマートフォンがすべての人に最適な製品とは言えない、Cosmo Communicatorがこっそり人気になっているのはそんな理由があるのかもしれません。