海外旅行時に気になるのが現地でのスマートフォンの利用。日本からWi-Fiルーターを借りたり現地SIMを買ったり、国際ローミングサービスを使うなどいろいろな方法がありますが、いずれも出費が気になるところ。ところがロンドンでは、最高1Gbpsという高速Wi-Fiが無料で利用できるホットスポットが急激に増えているのです。

  • 高速Wi-Fiがだれでも無料で使えるロンドン

今ではすっかり使われなくなった公衆電話。それを高速Wi-Fiが使えるホットスポットに置き換え、さらに広告表示ができるデジタルサイネージを組み合わせて運営費を賄うという「LinkNYC」がニューヨークのマンハッタンを中心に展開されています。ニューヨークを訪れた旅行者もLinkNYCのホットスポットのそばに行けば、だれでも高速ネット通信が可能。日本から持ち込んだスマートフォンを接続すれば、SNSどころかYouTubeなどの動画視聴も快適です。

  • ニューヨークのLinkNYC。公衆電話の跡地を置き換えている

同じ試みがいま、ロンドンでも広がっています。InLinkUKというサービスがロンドン市内に広がっているのです。ロンドンの街中には今でも数多くの公衆電話が設置されています。しかしそのほとんどは使われていないのが実情です。ロンドンの公衆電話は通話だけではなくショートメッセージ(SMS)も使えますが、SMSを使う人も少数派になりつつあります。

  • ロンドンの公衆電話。SMSも使えるが利用者は見当たらない

一部の公衆電話はWi-Fiのホットスポットになっています。しかし使い方や料金の説明はありませんし、速度も期待できるものではありません。おそらくこのタイプのWi-Fiなら、スマートフォンのLTE回線のほうが十分高速でしょう。

  • Wi-Fiのホットスポットになっている公衆電話もあるが、速度は期待できない

InLinkUKはニューヨークのLinkNYC同様に、高速なネット回線のバックボーンで接続され、さらには側面に大型のデジタルサイネージを搭載し広告を掲載、その広告費で運営費を賄います。つまり税金なども投入されず、このシステムで収益も完結するソリューションになっているのです。

  • 側面のデジタル広告で運営費を賄うInLinkUK

設置されているステーションはニューヨークにあるものと同じ形をしています。大型のディスプレイを備える一方、幅はスリムで道路を占有する面積は最小限で済むようになっています。見た目もスタイリッシュですね。

  • 本体の幅はスリムで場所をとらない

機能はLinkNYCとほぼ同じです。約10インチのAndroid OSで動くタブレットが搭載されており、市内通話や緊急通話が可能、グーグルマップによる地図検索、電話番号の検索などがタブレットから行えます。また天気予報の表示、InLinkUKを使ったポイントプログラムなども提供。万が一スマートフォンを忘れて街に出てしまっても、ある程度の市内の情報を入手できそうです。

  • 10インチタブレットと10キーが埋め込まれている

  • タッチ操作で地図や電話帳検索、無料通話が可能

またその下部にはUSBポートを2つ備えます。ケーブルは自分で用意する必要がありますが、スマートフォンやタブレットを自由に充電できるのです。

  • 雨に濡れないように下向きに設置された充電用のUSB端子

  • 実際に使っているロンドン市民の姿もちらほら

さてWi-Fiの使い方は簡単です。スマートフォンのWi-Fi検索でSSID「InLinkUK Free Wi-Fi from BT」を見つけて接続します。ブラウザを開くと接続画面になるので、自分のメールアドレスで登録。これでつながります。日本から持ち込んだスマートフォンももちろん利用OK。無料でネットにつながり、しかも高速なので快適です。

  • SSIDを探す

  • メールアドレス登録で使える

実際にどれくらいの速度が出るのか測定してみたところ、90Mbps近くを楽に出していました。さすがに1Gbpsは理論値なのでしょうが、これでも十分高速。スマートフォンはおろか、ノートPCからのネットアクセスも快適に行えるでしょう。またローミング・現地SIM・Wi-FiルーターなどのLTE回線よりも実測値は速いかもしれません。

  • 実測で90Mbps、かなり快適だ

InLinkUKの設置場所はWEBサイトから検索できます。2018年10月時点でロンドン市内261か所が利用可能、146か所が工事中です。数年以内には750か所に増える予定で、ロンドン市内の主要エリアはがほぼすべてカバーされることになります。単なる無料Wi-Fiではなく充電や地図検索もできるInLinkUKは、外国からの出張者や観光客のことも考えたインバウンド客向けの情報インフラサービスでもあるわけです。東京五輪を控えた日本でも、このような取り組みをぜひ進めてほしいものです。

  • 数年内にロンドン全域で無料高速ネットが使えるようになる