日本では格安SIM、格安スマホという言葉が一般的なものになりつつあります。スマートフォンを使うためには今まで意識していなかったSIMカードが必要なことが、格安SIMの普及でだんだんと認知され始めています。契約者情報の書きこまれたSIMカードを入れることで、スマートフォンは携帯電話回線を利用できるようになるのです。

ところがそのSIMカードがいらないスマートフォンが登場しました。香港でブロードバンドとWi-Fiサービスを展開している「香港ブロードバンド(HKBN)」のスマートフォン「Global Phone」は、正真正銘のSIMカードなしで使えるスマートフォンなのです。

  • SIMカード不要のスマートフォンが香港で発売

Global Phoneのスペックは5.5インチ1,920x1,080ピクセルディスプレイ、チップセットがSnapdragon 652、RAM4GB、ROM32GB、カメラはメインが1,300万画素、フロントが800万画素。バッテリー容量は2,950mAhです。価格は2,680香港ドル(約3万7,600円)で、スペックを考えるとまあまあ妥当な値段でしょう。

しかし他のスマートフォンにはない最大の特徴がSIMカードなしで利用できる点です。これは香港のucloudlink社のvSIMソリューションを使っています。vSIMはバーチャルSIMの意味で、利用先で自動的に最適なSIMカードをクラウド側で選んで端末に割り当ててくれるのです。Global Phoneはその名の通り、海外での利用を考えたスマートフォンですが、海外へ到着後、Global PhoneにSIMカードが入っていなくとも、現地のキャリアの電波をつかんでそのまま利用できるのです。

  • 見た目はごく普通のスマートフォン

難しいことは考えずに、Global Phoneを海外に持ち出して電源を入れると、SIMカードが入っていなくても現地の電波を拾ってくれます。Global Phoneの毎月の料金プランは世界データ5GBで約2,800円(198香港ドル)/月。つまり3,000円弱を払えば世界どこへ行ってもその場ですぐに5GBまでのデータ通信を利用できるのです。

スマートフォンを使う場合は、まずSIMカード契約をしてそれを本体に入れる必要がありました。ところがGlobal PhoneはHKBNと契約はする必要があるものの、SIMカードを受け取ったり入れる必要が無いのです。しかも世界60か国で利用可能。海外旅行や出張の多い人には最適なスマートフォンと言えます。

  • 世界60か国でそのまま使える

実はucloudlinkも自社でこのGlobal Phoneを「World Phone S1」として販売しています。料金プランはプリペイドで、必要な分だけを買って利用できます。こちらも世界中で使えるので、もはや自分の住んでいる国の通信キャリアと契約しなくとも、World Phone S1を買うだけで好きな時に料金を支払って利用できるのです。

もちろん自国のキャリアで契約したほうが料金は安いのですが、World Phone S1の料金が際立って高いわけではありません。日本の料金は1カ月(30日)3GBで10ドル。日本のMVNOと極端には変わらない料金です。

  • こちらはucloudlinkの製品。接続中のアプリは共通でデータ利用分が確認できる

Global Phone/World Phone S1はさらにSIMカードスロットも2つあるので、現地のSIMカードや、予備のSIMカード、自分の国で契約しているSIMカードを入れておくこともできます。仕事の電話がかかってくるような場合も、そのSIMを入れておけばいつでも発着信が可能です。そしてもちろんデータ通信はスマートフォン本体のvSIMを利用すればいいのです。

  • 追加でさらに2枚のSIMカードを装着できる

SIMカードなしスマートフォンとはいえ、自分の国では自分の契約しているSIMカードを入れて安価に使い、海外へ行くときはそのまま持ち出してvSIMで使う、と切り替えれば急な海外出張や海外旅行時にも安心して現地で通信できます。海外旅行時はレンタルのWi-Fiルーターを借りる人も多いでしょうが、Global Phone/World Phone S1なら受け取りや返却も必要ありませんし、単体で通信できるのでWi-Fiがうまくつながらない、ということもありません。またスマートフォンのテザリングをONにすれば、さらに5台の機器をつなぐこともできます。

  • スマートフォン単体でネットアクセス可能。さらにほかの端末を5台接続できる

HKBNがGlobal Phoneの導入を決めたのは、香港内では格安SIMを提供できるものの、海外でのデータ通信が利用できません。中国や台湾、タイなど香港人は仕事や旅行で頻繁に海外を訪れますから、香港だけ料金が安くても使い勝手は良くはありません。しかも香港では大手のMNOキャリア4社ともに、今ではデータ通信は香港だけではなく中国でもそのまま無料利用分が利用できます。これに対抗するにはMVNOキャリアでは難しく、香港のMNOの回線を直接使わずuclouldlink社のソリューションを使うことにしたのです。

  • MVNOはローミングサービスが弱いことからGlobal Phoneの導入を決めた

日本でもMVNOキャリア契約している人は多いでしょうが、海外へ行くときはデータローミングができないためWi-Fiルーターをレンタルするなり、海外で現地のプリペイドSIMカードを買う必要があります。しかしGlobal Phoneなら自分のスマートフォンをそのまま海外へ持ち出せるのです。ぜひ日本のMVNOキャリアにも導入してほしい製品ですね。