こんにちは、阿久津です。筆者が寄稿したレポート記事でも述べたように、Windows 8にDVDビデオ再生用コーデックは含まれません。執筆時点で使用可能なWindows 8 Consumer Previewを導入したコンピューターの光学ドライブにDVDビデオを挿入しますと、自動再生機能が起動し、Windows Media Centerが選択肢として現れます。そのまま<DVDムービーの再生>を選択しますと、Windows Media Centerが起動しますが、初回起動時の場合は初期設定ウィザードが起動しますので、DVDビデオは再生されません。再び自動再生機能を呼び出し、同じ操作を行いますと無事DVDビデオが再生されました(図01~02)。

図01 光学ドライブにDVDビデオを挿入すると自動再生機能が稼働し、Windows Media Centerの実行をうながされます

図02 事前の初期設定は必要ですが、Windows Media CenterによるDVDビデオの再生を確認しました

Microsoftが説明するように、DVDビデオの再生はWindows Media Centerに制限されているのかを確認するため、Windows Media Playerを起動してみましたが、確かにDVDビデオを認識するような気配はありません。アドレスバーから光学ドライブのドライブ文字を参照しても「不明なディスク」と表示され、選択しても再生不可能です。それもそのはず、オプションダイアログで確認しますと、<セキュリティ>タブと<ネットワーク>タブの間にあったはずの<DVD>タブが存在しません(図03~04)。

図03 こちらはWindows Media Player。アドレスバーからは光学ドライブ内のDVDビデオを認識しませんでした

図04 オプションダイアログからは、<DVD>タブが取り除かれています

このようにレポート記事の内容と同じくWindows 8では、Windows Media Centerがメインの再生プレーヤーとなるようです。もっとも、Windows OS上でDVDビデオを視聴する際、必ずしもWindows Media Playerなどの標準ツールを使う必要はありません。DVDビデオを再生できるフリーソフトウェアは数多くありますが、筆者が長らく使ってきたのが「VLCメディアプレーヤー」。GPL下で開発・公開されているマルチメディアプレーヤーの一種です(図05)。

図05 Windows 8上でもVLCメディアプレーヤーは動作可能。DVDビデオの再生も可能です(バージョン2.0.1で確認)

オープンソースベースで開発が続けられている同ツールは、さまざまなメディアの再生が可能なため、以前から愛用している方も少なくないでしょう。再生に用いる各コーデックを内蔵していることから、面倒なコーデックの準備や調整が必要ないため、誰でも気軽に使用可能です。しかし、ここで問題となるのがレポート記事でも述べたライセンス問題。DVDビデオにはMPEG-2やAC3といった技術が使用されており、これらを使用するにはラインセンス代理店であるMPEG-LAとの契約を結ばなくてはなりません。

VLCの公式ページでも、以前は"ユーザーがDVDビデオを再生する場合、MPEG LAにライセンス料を支払う必要があります"と解説していましたが、現在のFAQからは取り除かれていました。開発元であるVideoLAN projectとMPEG-LAの間で、どのような話し合いがなされたのかを示す情報は掲載されていません。そもそもMPEG-LAが一括ライセンス業務を始めた1997年、同社は「MPEG-2技術を保有するソフトウェアの配布は、有料・無料に関わらずライセンス料が発生する」と発表してから、フリーウェア作者の多くは戸惑いを覚え、右往左往していたのを覚えてる方もおられるでしょう。

古いところでは、国産MPEGエンコーダとして有名な「TMPGEnc」がMPEG-2エンコード機能を除外した例や、近年のH.264 vs WebMもこのようなライセンスビジネスを背景に生まれた事例なのです。もっともMPEG LAが過去に発した発言を踏まえますと、あくまでも同社の対応は企業に対してであり、無償可能で使用可能なソフトウェアに対しては、"目をつぶっている"のが現状です。ライセンスビジネスの是非はともかく、このような背景が存在しています。

しかし、コンピューターの歴史はオープンソースやフリーソフトウェアという優れた概念の元に発展してきた側面も大きく、ライセンスビジネス"だけ"を推し進めますと、多様性から生まれる自由を得るのは難しくなります。Windows 8におけるDVDビデオ再生の同こん解除からスポットライトを浴びつつあるライセンス問題。これを機に皆様も一度お考えください。

さて、今回は前文が長くなってしまいましたので、簡単な設定ながらも便利なチューニングを紹介しましょう。本誌読者のなかには既にSkyDrive for Windowsを導入し、ローカルディスクとオンラインストレージの同期を行っているのではないでしょうか。しかし、同機能を使っていて不満を覚えるのが、"ワンステップでファイルをSkyDriveに送れない"という点。

同サービスがソフトウェアを提供していなかった時代、同様の機能を実現するフリーウェアも存在しました。しかし、SkyDrive for Windowsはベータ版のためか必要最低限の機能しかサポートしていません。そこで今回は同ソフトウェアで同期環境が整っていることを前提に、SkyDrive用フォルダーをコンテキストメニューの<送る>に登録するチューニングを紹介します。

1.「%USERPROFILE%\SkyDrive\」フォルダーを開きます。
2.専用フォルダーを作成します。
3.「%APPDATA%\Microsoft\Windows\SendTo」フォルダーを開きます。
4.ステップ02で作成した専用フォルダーのショートカットファイルを作成します。

これでチューニングが終了しました(図06~12)。

図06 [Win]+[R]キーを押して「ファイル名を指定して実行」を起動し、テキストボックスに「%USERPROFILE%\SkyDrive\」と入力して<OK>ボタンをクリックします

図07 もしくは通知領域にあるSkyDrive for Windowsのアイコンをダブルクリックします

図08 SkyDrive用フォルダーが開いたら、何もないところを右クリックします。メニューから<新規作成>→<フォルダー>とクリックしてください

図09 新たに作成したフォルダーを任意の名前に変更します。今回は「Upload」としました

図10 [Win]+[R]キーを押して「ファイル名を指定して実行」を起動し、テキストボックスに「Shell:sendto」と入力して<OK>ボタンをクリックします

図11 図08~09で作成したフォルダーをSendToフォルダーに右ボタンでドラッグ&ドロップし、メニューから<ショートカットをここに作成>をクリックします

図12 ショートカットファイル名を「SkyDrive」に変更します

早速結果を確認してみましょう。あらかじめ用意した適当なファイルもしくはフォルダーを右クリックし、コンテキストメニューから<送る>を選択しますと、先ほど作成した<SkyDrive>が現れますので同項目をクリックしてください。するとファイルもしくはフォルダーがステップ02で作成した専用フォルダーにコピーされ、自動的にオンラインストレージとの同期が行われます(図13~15)。

図13 任意のファイルやフォルダーを右クリックし、<送る>→<SkyDrive>とクリックします

図14 これで任意のファイルやフォルダーが、SkyDrive専用フォルダーに作成したフォルダー内にコピーされます

図15 数秒から数十秒すると自動同期が完了し、オンラインストレージ上にもファイルやフォルダーが作成されます

なお、ファイルの動作やエクスプローラーと同じため、[Shift]キーを押しながら<SkyDrive>を選択しますと、ファイルやフォルダーが移動します。不要になった場合は「%APPDATA%\Microsoft\Windows\SendTo」フォルダーに作成したショートカットファイルを削除してください。今回はGUI操作を前提にした簡単なチューニングでしたが、バッチファイルやスクリプトを組み合わせることで自動化も可能ではないでしょうか。ご自身のアイディアをお試しください。

それでは、また次号でお会いしましょう。

阿久津良和(Cactus)