2019年末に電波免許取得が開始されて以降、多くの企業が参入を表明して話題となったローカル5G。ですが、それからおよそ1年が経過した現在、ローカル5Gを活用したビジネスが本格化したかと言うと、決してそうとは言えません。ゼロからインフラを構築するため小回りが利き、早期の立ち上げが見込めるはずのローカル5Gがなぜ順調に立ち上がっていないのでしょうか。
28GHz帯に起因するデメリットが大きな課題に
2020年は携帯電話各社の5G商用サービスが本格的にスタートしましたが、実際のエリアが非常に狭く、しかも5G対応端末が高額だったこともあり、広く普及したとは決して言えないのが現状です。5Gに対応したiPhone 12シリーズや低価格の5G対応スマートフォンの販売が本格化し、エリアの面展開が始まる2021年にならないと、5Gの普及は本格化しないと見られています。
そうした状況はローカル5Gも同じようです。携帯電話以外の企業や自治体がエリアを限定した5Gネットワークを整備できるローカル5Gは、携帯電話会社の5Gと同様にサービス開始前は非常に大きな注目を集め、2019年12月にローカル5G向けの28GHz帯の割り当てがなされた際には多くの企業や自治体が免許を申請するなど、大きな盛り上がりを見せていました。
しかし、それから約1年が経とうとしている現在、ローカル5Gを活用したサービスやソリューションが多数登場してビジネスの現場をにぎわせているかというと、決してそうとは言えません。ローカル5Gは携帯電話会社の5Gとは違い、ゼロから5Gのネットワークを構築できることからインフラ整備に関連する制約が少なく、早期に立ち上げられるはずなのですが、実際にはいくつかのデメリットが影響して有効活用できていないようです。
最大の要因は周波数帯です。現在ローカル5G向けに割り当てられているのは28GHz帯ですが、この帯域は「ミリ波」と呼ばれる非常に周波数が高い帯域で、帯域幅が広いことから高速大容量通信ができるメリットがある一方、障害物に遮られやすく遠くに飛びにくいという大きな弱点を抱えています。
そうした特性から28GHz帯は、4Gと一体で運用するノンスタンドアローン運用が必要とされており、ゼロからネットワークの構築が可能なローカル5G事業者であっても、28GHz帯を使用する限り4Gの基地局整備が求められるのです。広範囲のカバーがしづらい上、4Gの基地局も設置しなければならないため整備コストが高く運用も複雑であるというデメリットが、ローカル5Gの活用を阻んだ大きな要因の1つとなっているのです。
もう1つ、取材を通じて聞こえてくるのがローカル5Gに対応した端末が少ないということ。28GHz帯に対応するデバイスの数が少なく種類が限られるというのも、ローカル5Gの活用が進まない要因の1つとなったようです。
強い期待を集める4.7GHz帯の割り当て
28GHz帯に起因する問題がローカル5Gの大きな課題となっているだけに、それを解決するためにはより周波数が低くて障害物に強く、5G単体でのスタンドアローン(SA)運用ができる「サブ6」の割り当てが求められているようです。そこで非常に強い期待を集めているのが、ローカル5G向けのもう1つの帯域である4.7GHz帯(4.6~4.9GHz)の割り当てです。
総務省もローカル5G向けのサブ6の帯域となる4.7GHz帯の割り当てに向けた動きを進めており、2020年12月には割り当てがなされるのではないかと見られています。そうしたことから4.7GHz帯の割り当てを待って本格的にローカル5Gのサービスを開始するという企業が多いようです。
4.7GHz帯に対する期待の高さは、デバイスからも見て取ることができます。実際、富士通や京セラは4.7GHzでSA運用に対応したローカル5G向けの基地局を自社開発していますが、こうした動きは28GHz帯では見られなかったものです。
また京セラや富士通コネクテッドテクノロジーなどは、2020年10月20日より開催されていた「CEATEC 2020 ONLINE」に合わせ、ローカル5Gの4.7GHz帯や28GHz帯に対応したデバイスを相次いで発表しています。こうした動きも近いタイミングで4.7GHz帯の割り当てがなされ、ローカル5Gが本格的に立ち上がることを見据えたものといえるでしょう。
このほかにもシャープが2020年8月にローカル5G対応Wi-Fiルーター端末の試作機を開発、同9月以降に提供開始予定としているなど、対応端末の不足といった課題も解消に向かいつつあるようです。そうしたことからローカル5Gも携帯電話会社の5Gと同様、本格的な利活用が始まるのは2021年からということになりそうです。