では逆にDevice側をUSB 3.0にしたら多少は意味があるか、という事もついでに確認してみた。利用したのは近所のPC Depotで売っていた、玄人志向のGW3.5FR-SU3である(Photo01)。コントローラ部は到って簡単(Photo02)で、SATAとUSB 3.0の相互変換だけを行う仕組みである。搭載しているコントローラは台湾ASMediaのASM1051だった(Photo03)。さて、このケース(というか、I/FにHGSTのHTS542512K9SA00(2.5inch 120GB/5400rpmのSATA HDD))を突っ込んで、前回同様ICH10及びUSB3.0N2-PCIeに接続、CyrstalDiskMarkをかけながらCPU負荷を確認してみた。

Photo01: キットの中身全部。これ以外に3.5inch HDDを内蔵するためのプラスチック製ブラケットが付属する。USB 3.0のケーブル長は1m。ちなみにお値段は3,720円なり。

Photo02: ちなみにこのケース、USB Bus Powerでは動作しない。ちょっと残念。

Photo03: このブリッジチップ、なぜかTektronicsからもプレスリリースが出ているのが面白い。ちなみにASM1051Eという製品もあるのだが、Productページを見ている限り、ASM1051と何が違うのかさっぱり判らない。

まずは前回とも異なるHDDなので、HDDの素性自身を確認ということで、DX58SOのSATAポートに直接接続した結果がこちらである(Photo04)。SSDはおろか、最近の1TBクラスのHDDにも及ばないスコアではあるが、まぁ2.5inchの5400rpmドライブだし、プラッタ密度もそう高いものではないから、そう考えるとそこそこ妥当なスコアなのではないかと思う。この状態で、500MBのSequential Read/Writeを行った結果(Photo05)とCPU負荷(Photo06)を見ると、これもまぁ妥当なところであろう。

Photo04: ICH10のSATAポートに直結の結果。

Photo05: 概ねPhoto04と同じ性能になっている。

Photo06: CPU負荷はごくわずか。ちょっとうっかりして、縦軸が31マスで100%でキャプチャしてしまったので、1マスあたりの負荷は概ね3.2%というところ。殆どのケースで負荷は5%以下、ピークでも10%といったあたりなのがわかる。

この状態で、HDDをGW3.5FR-SU3のI/Fに接続し、まずはICH10のUSBポートに接続してみた結果がこちらである(Photo07)。特にSequential Accessではほぼ性能が半減している(逆に4KBのRandom Accessでは殆ど性能が変わらない)というのは、やはりBulk TransferのオーバーヘッドがSequential Accessでは出やすい(逆にRandom Accessではアクセスタイムの方がボトルネックになっており、Bulk Transferのオーバーヘッドが遮蔽されている)事が見て取れる。まぁ性能は概ねこんなところだろう。で、次にSequential Accessを行った際の性能(Photo08)と負荷(Photo09)だが、こちらは前回のこちらを彷彿させる負荷の多さだった。Photo06と比較すると、負荷が掛かっている時間も長くなっているが、これは転送速度の遅さがそのまま時間にダイレクトに反映される(Sequential Accessの場合、定められたサイズ(今回なら500MB)のアクセスに何秒掛かるかを試すわけで、なので転送速度が速いほどテストに必要な時間も短くなる道理だ)から致し方ない。とりあえず、USB 3.0のDevicveを使ったからといって、USB 2.0 Controllerに繋いでいる限り転送速度/CPU負荷の両面で何のアドバンテージもない、というこれはこれでセオリー通りの結果が出た事になる。

Photo07: 理論上は60MB/secまで引っ張れる筈だが、実際にはまぁこの程度になるのが普通だろう。

Photo08: スコアそのものはPhoto07とほぼ同じ。

Photo09: 負荷はピークで40%近くに達する。

ということで、次は3.0 Host+3.0 Deviceの場合である。まず全体のテスト結果(Photo10)を見ると、かなりSATAに直結の場合(Photo04)と近い数字が出ていることが判る。まぁこの位のスコアが出てくれないとUSB 3.0のメリットが無いとも言えるのだが。さて、肝心の転送時の負荷である(Photo11,12)。前回のUSB 3.0 Host+USB 2.0 Deviceの組み合わせと比較すると、負荷の平均値自体は大きく変わらないがスパイクの高さがぐんと減り、また時間も短くなっていることが判る。前回同様に2つのCPU負荷グラフを重ね合わせたのがこちら(Photo13)であるが、圧倒的に負荷が減っていることが判る。性能そのものの絶対値は何しろHDDが遅いものを使っているからそれほどぱっとしない(こちらの性能測定にはSSDか何かを持ち込む必要があるだろう)が、このCPU負荷は圧倒的である。

Photo10: QD32のReadだけが落ち込んでいるのがちょっと気になるが、これがUSB 3.0全般の特徴なのか、ASMediaのコントローラの癖なのか、あるいは他の要因なのかというのはちょっとこれだけでは判断しにくいところ。

Photo11: Photo10と比較するとSequential Readが1MB/secほど落ちているが、逆にSequential Writeは1MB程度上がっており、総じてこの程度なら誤差(というか、バラつき)の範囲内であろう。

Photo12: 圧倒的に低い負荷。ピークでも15%前後で収まっている。

Photo13: ちらちらと赤いものが見えるのは、Task Managerで「カーネル時間を表示する」を選択しているからで、ピーク付近に赤いものがちらちら見えるというのは、要するに負荷の大半がKernel処理であることを物語っている。

判っていた事ではあるが、やはりUSB 3.0 Host ControllerのCPU負荷に関するアドバンテージは圧倒的であり、逆にこれはDeviceだけをUSB 3.0にしても何のご利益も無い、ということが再確認できた形になる。昨今ではマザーボードベンダー各社が争うようにUSB 3.0 Host Controllerを搭載したマザーボードを出荷しているが、この結果を見ればそうした風潮は歓迎すべきものに思える。もっとも今回はあくまでStorageなので問題はなかったが、様々なUSB 1.1/2.0 Deviceが全部xHCIできちんと動くのかは一度確認してみるべき事かもしれない。