「Big Sur」ことmacOS 11.1のリリースからはや2カ月、そろそろMacユーザに行き届いた頃だろう。思えばこのBig Sur、Mac OS X Public Betaの公開以来約20年ぶりにメジャー番号が10から11に上がるというメジャーアップデートであるにもかかわらず、それほど大きな変更はないのか...確かに、同時期公開の「M1」が話題を独占したきらいはあるが、刮目すべき新機能はある。当コラムなりの目線で、Big Surの新機能をチェックしていこう。

iOS風になった「UI」、アイコンの扱いにも変化が

今回のアップデートにおける最大の変更点と言っていい、Big SurのUIデザイン。Finderウインドウを始めとするUIの構成要素は、四隅の角丸比率が引き上げられ、丸みが強調されている。特に目立つのはDock領域で、Public Beta以来変わらなかったDockの"四角い"印象は一変してしまった。当コラムでもやはり避けては通れない話題であり、まずはここからBig Surを語ることにしたい。

その丸み(角丸比率)は、やはりiOS由来のようだ。試しにDock領域の左端に鎮座するFinderアイコン周辺とiOSアプリのアイコンとを重ねてみると、角丸比率はほぼ同じ。そういえば、Apple TVも似たような丸みだったなあ...と重ねてみれば、案の定違和感はない。この角丸比率が、現在のAppleにおけるゴールデンレシオなのだろうか。

  • 角丸比率がiOS風となり、全体的に"丸っこく"なったBig SurのUI

  • 角丸比率はiOSアプリのアイコンとほぼ同じ

早速アイコン画像を確認すべく、アプリのバンドル内にあるアイコンファイル(¥*.icns)を開いてみると、Catalinaまでとはなにか様子が違う。プレビューにしてもテキストエディットにしても、標準装備のアプリのアイコンファイルはそれまでのアプリと同名から「AppIcon.icns」に統一され、収録されている解像度違いの画像はバリエーションが減らされている。Catalinaのときは、解像度が最大1,024×1,024だったところが、Big Surでは最大256×256なのだ。

ファイルサイズも大幅に減少し、Catalina(Preview.icns)では約2.3MBだったところが、Big Sur(AppIcon.icns)では約83KB。しかも、Resourcesフォルダ内を見回せば、画像フォーマットごとに用意されていたicnsファイルが消えている。カレンダーやシステム環境設定に至っては、icnsファイルがひとつも見当たらない。

しかし、JPEGやPNGといった画像ファイルの情報ウインドウ左上のアイコンをコピー&ペーストすると、1,024×1,024のアイコンリソースにたどり着ける。前述したプレビューやテキストエディットも、情報ウインドウのアイコンをコピー&ペーストすれば、解像度はやはり1,024×1,024だ。これは一体どういうことか、高解像度アイコンデータはどこに保存されている?

  • プレビューに内包されている「AppIcon.icns」を開いてみたところ、ピクセル数は最大でも256×256だった

  • ファイルの情報ウインドウ左上に表示されているアイコンをコピーしたところ、そのピクセル数は最大1,024×1,024だった

悩むこと30分。アクティビティモニタでプレビューが開いているファイルを探せばいいことに気づき、あれこれ物色していたところ、そうだ、アセットカタログ...アイコンデータをリソースフォークに保存していたClassic MacOSじゃあるまいし、これに違いない、ということで内包されている「Assets.car」を開いたところビンゴ。Catalinaのときと変わらない解像度のアイコンファイルならぬアイコンデータを確認した。

この「Assets.car」は、iOSアプリ開発における重要な存在。Xcode 5のときに登場した画像データを一元管理するための「Asset Catalog」から生成されるファイルで、iOSアプリではここにアイコンデータが収録される。macOSの場合、アイコンはicnsファイルとして独自に管理されてきたが、Big SurからAsset Catalogを活用する方向にハンドルを切ったというわけだ。

  • 高解像度のアイコンデータは「Assets.car」に収録されていた

システムワイドに利用されるアイコンデータも傾向は同じで、「/System/Library/CoreServices/IconsetResources.bundle/Contents/Resources/Assets.car」はそのひとつだ。サウンドファイル(¥.m4aや¥.mp3)やオフィス文書ファイル(¥.xlsxや¥.doc)のほか、これまでプレビューのバンドル内部に収められていた各種画像ファイル(¥.jpgや¥.pdf)のアイコンデータは、このシステムライブラリの奥深くにあるAssets.carに格納されている。

ほかにも、「/System/Library/CoreServices/CoreTypes.bundle/Contents/Resources/Assets.car」や「/System/Library/CoreServices/Finder.app/Contents/Resources/Assets.car」など、icnsファイルとしては見つからないアイコンデータが格納されたファイルがいくつか存在する。熱心なアイコンファン(?)ならチェックしてみよう。

  • iOS風となったFinderの高解像度アイコンも「Assets.car」に収録されている