Big Surの変更点といえば、iOS風に丸みを帯びたアイコンデザイン、機能がコンパクトにまとまったコントロールセンター、そして伝統の「Sosumi」が「Sonumi」に変わったシステムサウンドが思い浮かぶが、変わったのはUI面ばかりではない。CUI然り、セキュリティ然り。ネットワークもまた然りだ。Big Surのココに注目シリーズ、今回は「ネットワーク」を取りあげる。

あの「ネットワークユーティリティ」が廃止

Big Surのネットワークに関連した変更点でわかりやすいものといえば、「ネットワークユーティリティ」の廃止が挙げられる。OS X El Captian以降、ユーティリティフォルダからシステムフォルダの奥深く(/System/Library/CoreServices/Applications/Network Utility.app)へと追いやられてしまい、Spotlight検索経由での起動を余儀なくされていたところ、ついにBig Surでは廃止の憂き目にあうこととなった。

Network Utility.appはBig Surの現在も存在し起動できるが、画面に表示されるのは「ネットワークユーティリティは廃止されました」、今後はTerminalからnetstatやpingを実行してほしいというメッセージのみ。同様に存続が危ぶまれていた「DVDプレーヤー」が健在なことには、ある種の理不尽さを感じずにいられないが、メジャー番号が10から11に引き上げられたタイミングでの勇退と考えれば割り切りもつくというものだろう。

  • 「ネットワークユーティリティ」が廃止された

ついに「AFP」がディスコン、ただしサーバの話

多くのユーザに影響をおよぼす変更といえば、AFP(Apple Filing Protocol/AFP over TCP/IP)ファイルサーバの廃止だろう。OS X Mavericksのときから覚悟していたこと(第99回 Mavericks以降なくなる(はずの)アレコレ)とはいえ、ついにAFPが使えなくなるというのは感慨深い。

この変更は、システム環境設定「共有」パネルの「ファイル共有」項目、オプション画面から確認できる。ファイル共有サービスとして、長らくAFPとSMBの2つが用意されていたところ、ついにSMBのみとなってしまったのだ。High Sierra以降デフォルトのファイルシステム「APFS」は、そもそもAFPによるファイル共有を許されないため、大半のユーザには影響しないだろうが、macOSのネットワーク機能における転換点であることは確かだろう。

ただし、AFPのクライアント機能は残されている。Catalina以前のmacOSでファイル共有を有効にするとき、オプション画面でAFPをチェックしていれば、Big Surの現在でも「afp://〜」として共有ボリュームに接続できるのだ。サーバが廃止された現在となっては断言できないものの、Intel Macの耐用年数も考慮に入れればあと数年は存続するのではないか...と考えるが、どうだろう?

  • ファイル共有のオプション画面から「AFP」が消えた

  • AFPクライアントは残されているため、当面困ることはなさそう

ネットワーク越しにコピーしたフォントスーツケースに異変が

AFPサーバの廃止は、実際のところそれほど困らない。SMBがApple独自開発のものに置き換えられたときだから、あれはMavericksのときだろうか、共有ボリュームに接続するときのネゴシエートがそれまでのAFP→SMBからSMB→AFPに変わったタイミングで、筆者のMacはSMBでファイル共有を行うようになったからだ。

すでにSMBで何年も運用しているのだから問題なからん、そもそもHigh Sierra以降AFPを内蔵SSDの共有に使えなかったのだし、ただオプション画面からチェックボックスが消えただけ...と最初はタカをくくっていたが、しばらくして異変に気がついた。Emacsで愛用している日本語フォント「TOKYO-等幅」が表示されないのだ。SMBでファイル共有しているMacBook Pro(OSはCatalina)からBig Sur環境の/Library/Fontsへ、ネットワーク経由でコピーしたのだけれど...。

調べたところ、フォントファイルに問題が発生していた。Big SurのFinderでCatalina上の共有ボリュームにアクセス、件の「TOKYO-等幅」を確認したところ、ファイルは存在するがサイズは0バイト。Catalina側ではしっかり2.2MBと表示されるし、Font Bookにも認識されているが、ネットワーク経由でBig Surから見ると0バイトになってしまうのだ。

フォントスーツケースは、リソースフォーク部分にフォントデータを格納したMac独特の(Classic MacOS由来の)ファイルで、データフォークには何も含まれない。SMBサーバ/クライアント双方でうまく処理してもらわねばならない部分だが、Big SurのSMBクライアントはそのリソースフォークの扱いに難があるらしい。試しに、AirDropでCatalinaからBig Surへフォントスーツケースを転送し(これは成功)、それをCatalina側から表示すると問題なく認識される。

念には念を入れ、OS X YosemiteをSMBサーバにして同じことを試したが、Finderでファイル情報を確認(コピー前)したところ2.2MBと表示されていたが、それをBig Surにコピーすると0バイトになってしまった。やはり、Big SurのSMBクライアントに問題があるのだろう。フォントスーツケースなどリソースフォーク付きのファイルをBig Surでネットワーク越しに扱う場合は、同じ轍を踏まないよう注意してほしい。

  • Catalina上のSMB共有ボリュームでフォントスーツケースは「0バイト」だった

  • YosemiteからCatalina上のSMB共有ボリュームにアクセスすると、フォントスーツケースは正しく認識されていた