ラズパイで動画を再生するには

いきなりで恐縮だが、Macをビデオプレーヤーとして活用しているだろうか? Super DriveがMacから消えたいま、DVDなど光学ディスクを再生するではなし、せいぜいYouTubeを眺めるか、HuluやNetflixといったVODサービスを利用するかだろう。

思うに、動画鑑賞をMacで済ませるのは惜しい。ふだん利用している機種がMacBook Air 11インチということもあるが、たとえYouTubeでも小さな画面では満足を得られない。YouTubeで鑑賞するのはもっぱら音楽PVだが、書斎に鎮座する40インチのモニタ兼用テレビで見たほうが映像に迫力はあるし、それなりに整えたオーディオシステムがあるので音もいい。Macで行うとしたら、目当ての曲がYouTubeにあるかどうかのチェック程度だ。

これを"Appleの文法"で解くとすれば、AirPlayを使うということになるが、映像の送信先はApple TVのみで選択肢はない。一方、ラズパイは……昔から存在する方法でメディアプレイヤーを遠隔操作することができる。必ずしも送信元がMacである必要はなく、熱心なAppleファンからは拒否反応の声すら聞こえてきそうだが、個人的には悪くない方法と考えている。

それは、CUIベースのメディアプレイヤー「Omxplayer」を使うという方法だ。このプレイヤーはラズパイのSoCに内蔵のGPUに最適化されているため、フルHDの映像でも無理なく再生できる。X Window Systemに依存しないため、動作が軽いというメリットもある。Apple TVやChromecastより安価なラズパイのこと、コストパフォーマンスは抜群だ。apt-getを使えば、かんたんにインストールできる点もうれしい。

SSHでリモートログインしたRaspberry Piで、CUIベースのメディアプレイヤー「Omxplayer」を使いiPhoneで撮影したフルHDムービーを再生しているところ

インストールはapt-getを使えばかんたん、もちろんMacからTerminalを使い実行できる

# apt-get update
# apt-get install omxplayer

※:ディストリビューションにVolumioを利用している場合、あらかじめ「echo "deb http://archive.raspberrypi.org/debian/ wheezy main" >> /etc/apt/sources.list」を実行しておくこと

YouTubeムービーをラズパイに"人力AirPlay"

このOmxplayer、MPEG-1/2やMPEG-4、H.264など多様なコーデックをサポートしているため、世に出回っている動画ファイルの多くを再生できる。ストリーミングもサポート、URLを指定すれば再生可能だ。いわんやYouTubeをや。地デジなど著作権保護されたコンテンツは除外されるが、このストリーミング再生機能を生かさない手はないだろう。

ただし、Macに対応したGUIの操作ツールは存在しない。Android OS向けにはOmxplayerに対応したコントロールアプリが存在するため、Mac版/iOS版はないものかとMac App StoreとApp Storeを探してみたが、見当たらなかった。Macから利用するとなると、(SSHで)リモートログインしてCUIで実行することになる。

ところで、OmxplayerでYouTubeムービーを再生するときには、動画そのもののURLを指定しなければならない。WEBページに貼り付けるURL(共有欄に表示される「https://youtu.be/...」という形式のもの)では再生できないため、Raspberry Pi(Raspbian)では「youtube-dl」というCUIベースのツールを利用することになる。

そこで考えた。youtube-dlと同等の機能を持つツールは、WEBブラウザのアドオンとしてもいくつか存在する。だからURLの抽出はふだん利用しているMacで済ませられるし、できればそうしたいところ。抽出したURLだけラズパイに伝えれば……

そう、Omxplayerに伝えるURLはTerminalへコピー&ペーストすればいい。あらかじめラズパイにSSHでリモートログインしておき、シェルに「omxplayer "」と入力、MacのWEBブラウザで(ダウンロードアドオンを利用して)コピーしたYouTube動画のURLをCommand-Vでペーストし、「"」で囲み実行すればいいのだ。名付けて「人力AirPlay」、うまく行くかどうか……

結果はOK! 著作権保護された動画は再生できなかったが、それ以外の動画は支障なく再生できた。フォーマットはMP4やWEBMなど各種を選択できるが(ダウンロードアドオンにより異なる)、MP4を試したかぎりではWEBブラウザで視聴するときと変わりなく、MP4/720pのムービーも滞りなく再生できた。ひとたび再生を開始すれば、ラズパイの殺風景なコンソール画面は鮮やかな動画に一変、テレビの大画面を生かして堪能できる。

ラズパイにかかる負荷だが、X Window Systemを必要としないことも手伝ってか、MP4/720pムービー再生時のCPU使用率は4~11%程度(ストリーミング開始直後の負荷は高いが逓減する)とわずか。予想を超えて実用的なので、ラズパイに手を出したならば是非試していただきたい。

YouTubeのURLを割り出すツールには、Firefoxアドオン「1-Click YouTube Video Downloader」を利用した

ムービーのURLは、アドオンを追加すると現れるDownloadボタンをクリックするとコピーできる

コピーしたURLは、このようにTerminalウインドウに貼り付ければOK。呼び名は「人力AirPlay」でも「人力キャスト」でも構わないが、URLさえ分かれば気軽に再生できる点がうれしい