前回は情報システム基盤におけるVDIのメリットならびに課題についてご説明しました。今回は一般のオフィス業務で使用されるVDIにおける仮想GPUの必要性についてご紹介したいと思います。

近年社内システム基盤にVDIを採用されている企業は増加傾向にあると思いますが、ネットワークへの負荷やグラフィックス性能などを懸念して導入を躊躇されている会社も少なくありません。そして、すでにVDIを導入されている企業ではなるべくネットワークやグラフィックスに負荷がかからないようにVM側のOSでグラフィックスリソースの使用を抑制しているケースが多く見受けられます。

ちなみにWindows7ではグラフィックスリソースの使用を抑制することが出来ましたが、Windows10からはそのような対応が出来なくなりました。また最近では事務系のアプリケーション(Office2016、PDF、動画再生など)やUnified Communication系のアプリ(Skypeなど)などがグラフィックスリソースを多く消費するため、Windows10によるVDIについてはこれらのケアが重要な鍵となります。

またWindows10の場合、GPUが存在しないとグラフィックスリソースとしてCPUを大幅に消費する動きとなりますので、従来、Windows7で実装していた1サーバあたりのVDI数を見直す(1サーバあたりのVDI数を削減してサーバ台数を増やす)必要もあります。

  • VM上で動作するWindows 10のGPU有無による性能比較

そこでNVIDIAの仮想GPU技術の出番となります。3Dグラフィックス用ではなく、オフィスVDI用途に設計されたTESLA M10を搭載したサーバ上でVDI環境を構築、そこにNVIDIA GRIDドライバ(vPCエディション)をインストールし、各VMへM10のGPUリソース(1VMあたり512MBもしくは1GBのGPUメモリ)を割り当てます。1GPUあたり32GBのGPUメモリを搭載していますので、512MBずつであれば64VM、1GBずつであれば32VMへの割り当てが可能です。

これらの対処によって、事務系のアプリケーションのスクロールが滑らかになったり、動画再生時のCPU使用率を抑制したり、Web会議の画像を鮮明に出力しCPU負荷を抑えるなどVDIの品質と性能向上に寄与することが出来ます。ぜひオフィスVDIにおいてもGPUあり/なしの体感性能をご体験頂きたいと思います。また、GPUを導入することによってコストが高くなることを懸念されるかと思いますが、是非サーバ台数の増加によるコスト増と比較して頂きたいと思います。

  • VM上でGPUを利用した場合と利用しなかった場合の動画再生時の比較

  • VM上でGPUを利用した場合と利用しなかった場合のSkypeのCPU負荷の変化

田上英昭役

著者プロフィール

田上英昭(たがみひであき)
エヌビディア合同会社
エンタプライズ事業部ビジュアライゼーション部 部長

略歴
1994年:都立科学技術大卒、研究テーマは「ニューラルネットワークによる音声の感性分析」。
1994~2010年:伊藤忠テクノソリューションズ 金融事業部にて銀行・証券・生損保向けデリバティブやリスク管理システムの開発(並列分散処理)プロジェクトに従事。
2010~2011年:日本マイクロソフトにてHPC製品の販売に従事。
2011~2016年:デルにてHPCならびにGPUソリューションのビジネス開発に従事。
2016年9月よりエヌビディアに勤務、仮想GPUソリューションをリード。