ソニーは、東京・品川の本社ショールーム「Sony Square」において、2020年10月1日からリモートツアーを開始している。Microsoft Teamsを使用して実施するもので、アテンダントがカメラを通して、Sony Squareに展示されている同社の製品、サービス、コンテンツなどを紹介。音声による質疑応答や、チャット機能を使った双方向のコミュニケーションなど、ライブ配信の特徴を活用し、インタラクティブに体験できる内容となっている。
ソニー ブランド戦略部3課 統括課長の梶尾桂三氏は、「新型コロナウイルスの感染が拡大するなか、ニューノーマル時代の新たな展示、紹介手法として用意したのが、新たに開始するリモートツアーである。ソニーが伝えたい価値を余すことなく伝えるためにはどうしたらいいのかということを考えてきた。Sony Squareに来場できなくても、より多くの人に体感してもらうことを目指した。なるべく多くの人に体験を伝えたい」と語る。
Sony Squareは、本社4階フロアにあり、予約制で公開しているショールームだ。主に、ビジネスパートナーや法人ユーザーなどに公開しており、ソニーの祖業であるエレクトロニクス事業への最新の取り組みや、映画、音楽、ゲームをはじめとするエンタテインメントのほか、フィナンシャルサービスやメディカルソリューションなど、ソニーグループの多種多様な事業を紹介。「『クリエイティビティとテクノロジーの力で、世界を感動で満たす』というソニーグループのパーパス(存在意義)を体現できる世界で唯一のショールームである」(同)と位置づけている。
実際にSony Squareのリモートツアーを体験してみる
Sony Squareは、「グランドコア」、「エンタテインメント」、「コンシューマエレクトロニクス」、「フィナンシャルサービス」、「ビジネスソリューション」、「4Kシアター」の6つのゾーンで構成されており、のリアルツアーでは、アテンダントと回りながら、ソニーグループが手がける事業を幅広く体験することができる。
約1時間で主要ゾーンを回り、多様な製品や事業領域を総合的に紹介する「標準ツアー」のほか、リクエストに応じて見学内容や時間をアレンジできる「カスタムツアー」も用意。日本語、英語、中国での対応が可能だ。現在は、標準ツアーのみを実施しているという。
こうしたリアルツアーの体験を、オンラインで提供するのが、新たに開始する「リモートツアー」となる。
実際に、Sony Squareのリモートツアーに参加してみた。その様子を紹介しよう。
ソニーから送られてきたMicrosoft TeamsのURLをクリックして参加すると、Sony Squareのアテンダントが出迎えてくれ、Teamsの画面表示の設定や注意事項の説明が行われる。テレワークで会議をしたり、ウェビナーに参加するように、気軽な気持ちで参加できるのが特徴だ。
ちなみに、配信されるSony Squareの映像は、VLOGCAM ZV-1をはじめとする同社のデジタルカメラで撮影されているという。
プロジェクションマッピングによって演出された「Welcome」という文字が消えると扉が開き、アテンダントとともに、Sony Square内に入ることができる。いよいよツアーのスタートだ。
最初のエリアは、グランドコアと呼ばれる場所で、そこにはソニーのCrystal LEDディスプレイシステムが展示されている。横9.7メートル、縦2.7メートルで、路線バスの長さと高さがあるというが、画面を通じてもその迫力が伝わってくる。解像度は8K×2Kで、144台のLEDディスプレイユニットを組み合わせているという。また、ビデオ映像を使って、資生堂の最先端研究施設「資生堂グローバルイノベーションセンター(S/PARK)」に導入されている576枚のLEDディスプレイユニットを組み合わせたCrystal LEDディスプレイシステムも紹介。Sony Squareに比べて4倍規模を実現しているという。
続いて訪れたエンタテインメントゾーンでは、鬼滅の刃や、ソードアート・オンラインなどのアニメ作品のほか、音楽、映画といった事業を紹介。ここには1994年に発売された初代プレイステーションをはじめとする歴代のプレイステーションやPSPシリーズ、メン・イン・ブラックやスパイダーマンをはじめとする映画のなかで使用された衣装や小道具、カメラなどの撮影機材などが展示されている。
「昨年、発売25周年を迎えたプレイステーションシリーズは、史上最も売れた家庭用ビデオゲームコンソールブランドとしてギネス世界記録に認定されている。とくに、プレイステーション4は1億600万台を出荷している」と説明。いまのところ2020年11月12日に発売されるプレイステーション5の現物の展示はなかったが、静止画を使って概要を紹介していた。
また、映画の撮影に使用されるカメラも展示。ジェームス・キャメロン監督が絶賛し、AVATARの次回作で、ソニーのカメラを使用することを決めたというエピソードも紹介した。さらに、スマホであるXperiaシリーズのカメラ機能が進化したことで、映像撮影に使用されるケースが増えていることも紹介。ショートフィルム「TASTE」のメイキング映像を放映しながら、少人数のスタッフでしか撮影できないような環境で、Xperiaシリーズが活躍していることを紹介した。
ここでは、突然、クイズが出される一幕もあった。映画に使用された小道具が、どの作品のものかを当てるというものだ。見学者あてに、チャットを使って、4つの候補を提示。そのなかから選んでチャットで回答する仕組みとしており、見学者とコミュニケーションを図りながら見学を進める演出のひとつにもなっていた。そのほか、チャット欄には、エピソードのひとつとして紹介したジェームス・キャメロン監督のインタビュー映像のURLなども送信。各ゾーンで紹介した製品や技術、サービスに関連する情報を随時提供することで、見学後にもこれらの情報を見られるようにしていた。
コンシューマエレクトロニクスゾーンでは、5GスマホのXperia 1 II、立体音響の360REALITY AUDIO、エンタテインメントロボットのaiboなどを紹介。aiboのデモストレーションでは、aiboに「遊ぼう」というと、ハイタッチをするというプログラミングを行うとともに、見学者がこのタイミングだけ、Teamsのマイクをオンにして、aiboに向かって「遊ぼう」と声を掛け、その声を聞いたaiboが、実際にハイタッチの動作を行うといった様子をみせた。
一方、フィナンシャルサービスゾーンでは、ソニーフィナンシャルグループによる生命保険、損害保険、銀行、介護といった各分野でのサービスを紹介。ソニー損保が提供する自動車保険の「GOOD DRIVE」では、保障やサービス提供のみならず、ソニーのAI技術を活用して事故リスクをスコア化し、事故が起きにくい運転をアドバイスしたり、事故リスクが低い契約者には、最大30%をキャッシュバックするといった契約内容になっていることも示した。
ビジネスソリューションゾーンでは、ソニーが、カメラや放送機器の開発で長年培ってきた映像処理テクノロジーをベースに、AIを搭載することでグリーンバックなしでCGの合成映像を制作できる「Edge Analytics Appliance」をデモストレーション。1980年代から展開している医療分野向けのメディカルソリューションでは、3D映像の表示が可能な医療用55型4Kモニターや4Kカメラ、4Kレコーダーなどを紹介。「4Kならではの解像度によって、手術で使用する細い糸や針なども確認できる」とした。ここでは、国内外で新型コロナウイルスに対する医療従事者のために、ソニーグループが医療用フェイスシールドを生産し、8万セットを無償提供していることも紹介した。
さらに、イメージセンサーについても説明。この技術がスマホやカメラに搭載されているほか、防犯や医療用などの業務用カメラにも搭載されていること、多くの自動車にも採用が進んでいることを紹介しながら、2020年1月のCES 2020で初公開されて話題を集めたVISION-Sには33個のセンサーが搭載されていることにも触れ、「安全、快適を追求し、モビリティの進化に貢献していく」との姿勢を示した。
なお、4Kによる大画面を体験できる「4Kシアター」は、今回のリモートツアーでは見学の対象外となった。
もともとは予約制であり、限定した形で公開されていたSony Squareであるが、リモートツアーによって、ソニーの最新技術や製品を、より身近に体験することができるようになったともいえる。新たな時代におけるショールームの活用事例のひとつとしても注目される。