シャープが、スマートオフィスサービス「COCORO OFFICE(ココロオフィス)」の提供を8月3日から開始すると発表した。その第1弾の対応機器として、デジタルフルカラー複合機「BP-30C25」と、NAS(ネットワーク接続ストレージ)「BP-X1ST08/BP-X1ST04」も発表した。

  • 「ココロオフィス」でオフィス機器ビジネスモデルの変革に挑戦するシャープ

    シャープがスマートオフィスサービス「COCORO OFFICE」を発表した。ニューノーマル時代に向け、複合機とITサービスを融合した新たなビジネスモデルの確立を目指す

シャープ 専務執行役員 8Kエコシステムグループ長兼ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏は、「これまでのビジネスのやり方は、ハードウェア単体を販売したり、サービスやアプリケーションを単体で販売するといったものであった。それに対して、COCORO OFFICEでは、IDを提供し、サービスを提供する新たなビジネスモデルになる。しかも、それを事務機販売店や通信系代理店といった販売パートナーが販売できる仕組みとして提供する。シャープがプラットフォームをお膳立てして、代理店がそれを活用し、粗利を取ってもらうビジネスに転換してもらう提案である。ITが苦手な事務機販売店でも取り扱えるようになる。中堅、中小企業を対象に提案したい」と述べた。

  • シャープ 専務執行役員 8Kエコシステムグループ長兼ビジネスソリューション事業本部長の中山藤一氏

すでに販売しているハードウェアやソフトウェアと、新たに対応したハードウェアやサービス、今後の発売されるハードウェア、ソフトウェアなどを組み合わせて提供するものになる。

シャープにとっては、これまでのハードウェアやソフトウェアの単体販売から脱却し、IDを利用して様々なサービスを活用できる新たなビジネスモデルへの挑戦となる。

テレワーク・効率化を支援する「サービス」を提供

COCORO OFFICEは、テレワークや業務効率化を支援する機器やサービスで構成。導入から運用までをワンストップで提供する企業向けサービスと位置づける。

COCORO OFFICE対応機器とサービスを同時契約することで、COCORO OFFICEを5年間利用できる企業IDを1個と、ユーザーIDを5個提供。そのライセンスに基づいて、各種ハードウェアやアプリケーション、サービス窓口などが利用できるようになる。また、機器やサービスはポータルアプリから一元管理ができる。ユーザーIDは追加で購入できる。IDの価格は現時点では検討中としている。

提供するサービスは、「コミュニケーション」、「業務効率化」、「セキュリティ」、「サポート」の4つで構成する。

コミュニケーションでは、シャープが開発したクラウド型ウェブ会議サービスの「TeleOffice」や、シャープ独自のビジネスチャット「LINC Biz」を提供。「TeleOfficeはオンライン会議で掲示された資料へのアクセスやダウンロードの権限も管理できるのが特徴であり、これは他にはないものである。また、LINC Bizは、軽量型のコミュニケーションが可能であり、この2つを組み合わせることで、ほとんどのコミュニケーションをカバーできる」とする。

  • Web会議サービス『TeleOffice』オフィスでの利用イメージ

  • Web会議サービス『TeleOffice』スマートフォンでの利用イメージ

業務効率化では、Dynabookが開発したクラウド勤怠システム「dynaCloud勤怠」のほか、コンビニプリントソリューション「ネットワークプリント」、業務決裁ソリューション「クラウド型ワークフローシステム」を提供する。

ここでは、COCORO OFFICE対応機器の第1弾として発表するデジタルフルカラー複合機「BP-30C25」と、NASの「BP-X1ST08/BP-X1ST04」も含むが、「これらは単体での販売は行わず、COCORO OFFICEサービスのパッケージのなかで販売することになる」という。

デジタルフルカラー複合機「BP-30C25」は、コピー、ファクス、プリント、スキャンの基本機能を標準搭載。よく使う機能を操作部に大きく表示する「シンプルモード」に対応しているのが特徴だ。「毎分25枚の複写速度であるが、上位機に搭載されているコネクテッド機能を採用している。それにより、リーズナブルな価格設定を実現している」という。

  • デジタルフルカラー複合機「BP-30C25」

NASは、ハードディスク容量が8TBの「BP-X1ST08」と4TBの「BP-X1ST04」を用意。高速イーサネットである10GbEへの対応と、2.1GHzクアッドコアCPUを搭載。オフィス内のスムーズな情報共有を可能とするファイルサーバーとして活用できる。

  • NAS(ネットワーク接続ストレージ)「BP-X1ST08」

さらにAIを用いた独自開発の高速全文ファイル検索機能の搭載により、キーワードを入力することで、膨大なデータの中から必要なファイルを高速で検索。バックアップ機能だけでは対処の難しかった誤削除や編集ミスからのファイル復元を可能とするスナップショット機能も搭載しているほか、複合機との連動による受信ファクスデータの自動仕分け、自宅や外出先からデータの検索や閲覧が可能な機能も搭載する。

価格はいずれもオープンだが、デジタルフルカラー複合機「BP-30C25」はサービスを含めて155万円前後を想定。NASは、サービスを含めて100万円からを想定しているという。

光触媒まで、シャープならでは包括的サービス

セキュリティでは、PC向けセキュリティの「F-Secure PSB」、ストレージデータ復旧サービスの「データ復旧サービス」、クラウド型メール誤送信対策「Active! Gate SS」などを提供する。「これらのセキュリティサービスは、これまで個別の製品として提供してきたものだが、今回は、これらをサービスモジュールと捉えて、COCORO OFFICEサービスに取り込む」という。

このなかには、7月に発表したUTM(統合脅威管理)や、プラズマクラスターイオン空気清浄機も加えることになる。「プラズマクラスターイオン空気清浄機は、空気環境というオフィスの物理的なセキュリティを高める上で有効なものになる。商品の取り扱いという点でみれば、事業部門が異なるが、BtoB向け製品も用意しており、事務機販売店にも取り扱ってもらえるようにする」と述べた。

ここでは、複合機で培った光触媒技術を活用した光触媒スプレーなども提供する予定であり、「室内光でも反応するシャープならではの特徴を生かし、オフィスの脱臭、抗菌、抗アレルギーなどの効果がある。その延長線上で、光触媒施工サービスも提供したい」と述べた。

サポートとしては、新たに開設するCOCORO OFFICE専用コールセンターを活用した「オフィスITサポートサービス」、保守員の出張による顧客サポート「オンサイト保守」のほか、今年秋から提供するチャットボットによる「ヘルプデスク」、業務効率の見える化を行う「利用状況レポート」を提供する。

「問い合わせ窓口を一本化しており、機器の使い方がわからないときや、トラブルの発生時にはすぐに利用できる。また、オンサイト保守は365日、全国どこにでも出張する。これまでは複合機やPOSのサポートとして活用していたものを、オフィスのITインフラやセキュリティのオンサイト保守にも活用できるようにする。また、利用状況レポートは管理者向けに提供するものであり、テレワークが拡大するなかで、機材の管理の負担軽減を図ることができる」という。

機器やサービスの管理は、COCORO OFFICE「ポータルアプリ」で一元的に行い、PCやスマホで見ることができる。PCでは、各種ブラウザから利用できるようにしている。

  • ポータルアプリ トップ画面(イメージ)パソコン版

  • ポータルアプリ トップ画面(イメージ)スマートフォン版

利用者が、COCORO OFFICEのユーザーIDでログインすると、連携する機器やサービスを一覧表示。各機器の状況の確認や操作が可能であり、デジタルフルカラー複合機のエラーや用紙切れ、トナー残量などの情報も確認できるほか、NASに保存したデータをPCやスマホで検索したり、閲覧したりする際にもポータルアプリから行うことができる。また、ポータルアプリを通じて、サポート窓口への連絡もできる。

今年秋以降、COCORO OFFICE対応機器として、電子黒板「BIG PAD」、ノートPC「dynabook」、タブレット端末、スマートフォン、モバイルルーター、ネックスピーカー「AQUOSサウンドパートナー」などの追加を予定しており、これらを含めた形でのCOCORO OFFICEサービスの料金設定も用意する。

「機器やサービスの提供だけでなく、プランニング、コンサルティング、設置工事、セットアップ、運用支援、保守サービスまでをカバーし、本体ごとに必要なサービスを付帯して提供することになる。月々の請求や支払いは、機器やサービスごとに個別に行うのではなく、COCORO OFFICEサービスとして一括で行うワンビリングの仕組みとしている。利用する企業は支払業務の負荷も軽減できる」としている。

  • COCORO OFFICEが提供するサービスの全体イメージ

また、これらの請求業務は販売パートナーが行う仕組みとなっている。

「代理店がきっちりと扱ってもらえるようなビジネスモデルに仕上げているのが、今回のCOCORO OFFICEサービスの特徴になる。販売網を活用した商材の提案であることが、他社とは異なる最大の差別化になる。シャープは、事務機や通信機器で、きっちりとした販売網を持っており、これを活用したい」とした。

同社では、COCORO OFFICEのプラットフォームを開放することで、他社との連携も推進する考えも示している。

激変するオフィスの在り方、企業ニーズにいち早く対応へ

COCORO OFFICEを発表した会見のなかで中山専務執行役員は、「シャープは8つの事業領域にフォーカスしているが、今回のCOCORO OFFICEサービスは、そのなかで、スマートオフィスおよびセキュリティの領域を対象にしたものになる」とし、「少子高齢化が進み、企業は、今後、さらに生産性を高める必要がある。働き方が多様化し、業務の効率化が求められ、そこにITが活用されているが、見えない脅威に対するセキュリティ対策、IT部門を持たない中小企業では、運用サポートといった課題が生まれている。さらに、新型コロナウイルスの感染拡大により、コミュニケーションの変化、ワークフローのデジタル化といった課題も生まれ、オフィスを中心とした環境から、在宅勤務やサテライトオフィスに働く場所が広がっている。COCORO OFFICEは、こうした企業ニーズに対応したものであり、いつでも、どこでも、安心、安全で、仕事に集中できる環境を実現するものになる。オフィス機器を、単なる道具から、働き方や効率を見える化するビジネスパートナーにしたい」とした。

  • COCORO OFFICEサービスは、シャープがフォーカスする8つの事業領域のうち、スマートオフィスおよびセキュリティの領域を対象にしている

また、「現在、複写機の国内事業におけるITサービスの構成比は約15%。COCORO OFFICEサービスを開始することにより、これを30%にまで引きあげたい」と述べた。

複合機とITサービスを融合した新たなビジネスモデルが、オフィスの在り方や働き方が変化するニューノーマル時代に浸透するのかが注目される。

  • 新型コロナ以降の大きな変化、そこで生じる新たな課題に挑むことになる