ケルヒャージャパンの代表取締役社長に、2026年2月1日付で就任した挽野元氏が、神奈川県横浜市の同社本社で初めて記者会見を行い、今後の方針について言及するとともに、業務用製品に関する2026年の事業戦略について説明した。
ケルヒャージャパンの挽野社長は、「私は、アルフレッド・ケルヒャーと、イレーネ・ケルヒャーの2人の創業者の言葉に共感して、ケルヒャージャパンへの入社を決意した。ケルヒャーは、人材を大切にし、社員一人ひとりが自律的に行動し、挑戦する文化を作ることを目指している。これは私が経営者として大事にしてきたこと、考えてきたことと一致している」と切り出した。
アルフレッド・ケルヒャー氏は、「我々の成功を可能にするのは人材である」とし、イレーネ・ケルヒャー氏は、「技術とは別に、企業は第一に人間としての目標に着目した独自の文化を育てなければならない」と述べ、これが同社の企業理念になっているという。
挽野社長は、「ケルヒャーは、トータルクリーニングソリューションカンパニーを目指し、社会価値を創出し、持続させ、進化させることに取り組んでいる。私たちは力をあわせて、クリーンな世界に向けて、大きなインパクトを生み出す活動を続けていく」と述べた。
挽野社長は、1967年神奈川県横浜市生まれ。1992年に日本ヒューレット・パッカード(現・日本HP)に入社。フランス法人出向などを経て、2006年に執行役員、2011年に取締役に就任。2013年には、ボーズの代表取締役社長に就任し、同社製品の市場シェアトップ獲得を先導。2017年には、アイロボットジャパンの代表執行役員社長に就任し、日本におけるルンバの世帯普及率を10%にまで倍増させた。2025年11月1日付で同社社長を退任し、2026年1月31日までシニアエグゼクティブアドバイザーを務め、2026年2月1日付で、ケルヒャージャパンの代表取締役社長に就任した。現在、経済同友会幹事、東京都市大学客員教授なども務める。
「約10年間に渡り、ロボティクスの仕事をしてきた。ここでの経験を、ケルヒャーのBtoC事業、BtoB事業での技術、製品、サービスと掛け合わせて、メーカーという立場から、社会価値の創出を目指す『トータルクリーニングソリューションカンパニー』に転換させたい。2026年はそれに向けて踏み出す1年目になる」とした。2026年度は、同社の新たな中期戦略「Strategy 2030」の初年度でもあるとしたほか、ケルヒャージャパンでは、ブランドメッセージとして、「清掃に、WOW!を」を掲げ、汚れをきれいにするだけではなく、清掃を通じて、くらし、モノ、街に驚きとワクワクを提供することを目指しているとした。
また、挽野社長は、2025年度の日本における取り組みを総括。「お客様の課題解決を起点にした活動を行ってきた。2025年9月に発売した家庭向けの『ハンディエア』は当初計画の8倍を達成する大ヒット商品になり、高圧洗浄機市場を活性化した。また、2025年9月にサービスを開始した業務用清掃機器の管理を行う『ケルヒャーコネクト』は、現場の管理工数を大幅に削減する革新的なソリューションとして提供を開始している」と述べた。
2026年度の業務用製品の重点分野としてあげたのが、「農業」と「産業」である。
「農業」では、鳥インフルエンザの蔓延や、地球温暖化に伴う害虫被害の増加など、飼育や栽培における衛生管理が重視されていること、それにも関わらず、コスト増大などを背景にした資源の制約があることに加えて、地政学リスクによって、国内における食の基盤を支えることが重要になっていることを指摘。「ここにケルヒャーとしてどんな貢献ができるのかを考えた。『衛生×省力化』をキーワードに清掃ソリューションを提供する。高圧洗浄によって、化学薬品に頼らない洗浄を実現することに注力する」と述べた。
ケルヒャーの製品は、温水高圧洗浄が可能であり、「温水にすることで、洗浄効果は50%向上し、作業時間と水の使用量を35%削減できる。また、ケルヒャーのボイラーは低燃費で、すぐに温まって無駄がないというメリットがある」とアピールした。
ケルヒャージャパンは、国内の農業清掃機器市場において、2025年には17%のシェアを持つが、これを 2030年には30%に拡大する計画を明らかにした。
農業分野を対象にした営業およびマーケティング体制を強化や、パートナーとの連携強化なども進めるという。
もうひとつの「産業」では、物流および産業分野において、「運ぶ」領域での労働力不足が課題となっていることに着目。産業用ロボットの活用では世界2番目に大きな市場となっている日本においては、清掃の領域にもロボティクスを活用する需要があるとし、「清掃品質を保ちつつ、現場の省人化や自動化に貢献できる領域に貢献したい」と述べた。
2026年度以降、産業現場に対応したロボット掃除機のラインアップを拡充し、フロアケア事業におけるロボットの比率を、現在の5%から25%に拡大する方針を発表した。
挽野社長は、「ケルヒャーの特徴は、豊富な製品ラインアップを持っている点である。清掃の能力ではどこにも負けない」とし、「今後は、自動化や生産性向上が、事業拡大において、重要な鍵になる。そこにはロボットの活用が求められる。高圧洗浄機だけでなく、清掃をロボットに任せたり、遠隔から複数のロボットを管理したりといったことが差別化になる。私のこれまでの経験が生かせる部分でもある」とした。
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手押し式床洗浄機「BR 45/22 C Bp Li」。ローラーブラシを搭載し、凸凹床でも高い洗浄力を発揮する
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業務用ロボット掃除機の「KIRA CV50」。20メートル以上検知が可能な高性能LiDARを搭載している
農業分野および産業分野におけるシェア目標は、同社が、業務用製品に関して、2026年度からグローバルで取り組んでいる「GO!FURTHER(ゴーファーザー)」キャンペーンにおいて設定された目標値となっている。
ケルヒャージャパン マーケティング&プロダクト本部の加藤統子本部長は、「ケルヒャーソリューションの特徴は、作業時間と水使用量を35%削減する節水、温水とスチームにより洗浄剤の利用を削減するノンケミカル、清掃の無人化や高齢者なども使いやすい商品設計、屋外作業の時短による熱中症対策が可能になる省力化/自動化である」とし、「日本では、SSBJ基準によって、環境に関する情報開示義務化が企業に求められたり、2030年には約640万人の労働人口不足が懸念されたりする一方、サステナビリティへの取り組みは、企業価値を高める手段としてだけでなく、社会における存在価値を高め、事業継続の可能性を高めるものになるとして注目されている。サステナビリティの視点からみれば、清掃は『コスト』ではなく、企業価値を高める『投資』へと変化する流れがある」と指摘。その上で、「ケルヒャーでは、廃棄ゼロ設計の採用や、スペアパーツの長期供給体制の確立などにより、循環型経済を実現に取り組んでいる。また、2030年までにScope1および2において、カーボンフットプリントを42% 削減する環境目標を設定している。GO!FURTHERは、企業の未来に向けた投資を継続する視点で捉えたものになる」と位置づけた。
ケルヒャーの高圧洗浄機では、少ない水量で強力な高圧洗浄を実現し、水の使用量は20~30%を削減、水洗い不要の洗浄剤を採用することで、作業時間も大幅に短縮できるという。また、温水高圧洗浄機を使用することで、70℃以上の温水により、雑草のたんぱく質を破壊し、薬剤不要の温水除草を実現するほか、温水洗浄による家畜の感染予防や、バクテリアやウイルスを99.999%除去できるという。
「温水除草では、高速道路の路肩の雑草除去、ダムや貯水池などの水資源の近くの雑草除去などが可能になる。また、家畜の衛生維持、食品工場などでの清掃など、薬剤が使えない場所でも利用できる」とした。
さらに、自動化や省力化についてもメリットがあることを強調。「粉塵や落ち葉などの掃き掃除に対応したスイーパーにより、6時間の作業が1時間で済むようになる」と述べた。
ここでは、「改正された労働安全衛生法では、31℃以上の環境では連続して1時間以上の作業、1日4時間を超える作業については、熱中症対策が必要になっている。従来と同じ衛生環境を保つには、効率化が必要になる。こうした動きにも対応できる」と述べた。
また、洗浄剤についても説明。ノンリンスECO「RM764 N」では、天然由来成分を99%使用した洗浄剤で、日本で初めてエコマークを取得したという。「独自のアイカプセルテクノロジーにより、汚れをカプセル上に閉じ込め、これを乾燥させ、結晶化し、掃除機で吸引することができる。すすぎの作業が不要であり、水の使用量も削減でき、洗浄時間も短縮できる」という。
洗浄剤には、ケルヒュー独自の特許技術であり、自然に優しい「ASF」を採用。洗浄後の排水から原油を分離しやすくした洗浄剤であり、排水処理設備オイルセパレーターでの油水分離を容易にし、汚水浄化を効率的に行えるという。
なお、ケルヒャーでは、45年以上に渡り、全世界において、クリーニングプロジェクトを実施し、200以上の歴史的モニュメントや建造物、文化遺産などを対象に、高圧洗浄機などを利用した清掃活動を進めていることも紹介した。

















