• 赤本の愛称でも知られる「電子情報産業の世界生産見通し」の2024年版が発行されている

    赤本の愛称でも知られる「電子情報産業の世界生産見通し」の2024年版が発行されている

一般社団法人電子情報技術産業協会(JEITA)は、2024年(2024年1月~12月)の国内パソコン出荷実績を発表。過去最低を記録した2023年の出荷台数実績から回復し、4年ぶりに前年実績を上回った。国内PC市場が成長路線に回帰していることが示された。

同調査によると、2024年の出荷台数は、前年比14.3%増の761万9000台、出荷金額は同16.0%増の8880億円と、いずれも2桁台の成長を遂げた。出荷金額は2年連続のプラスとなり、2007年に現在の調査方法に移行してから5番目に高い水準にまで回復している。

  • JEITA 2024年 国内PC出荷実績

    JEITA 2024年 国内PC出荷実績

法人向けPCが好調に推移したのが要因で、2025年10月のWindows 10のサポート終了を前にした企業での買い替え需要の顕在化が背景にある。とくに、サポート終了の1年前となった2024年10月は、前年同期比50.0%という高い伸びを記録。11月も47.5%増という高い水準を維持した。12月は12.4%増と成長率は鈍化したが、前年の10月、11月が前年割れであったのに対して、前年12月は前年比2桁増の成長を遂げており、比較対象となる分母が大きい中でもさらに伸長していたことになる。

なお、法人向けPCは、2024年7月以降、6カ月連続で、台数、金額ともに前年実績を上回っている。

だが、個人向けPCについては、暦年では前年実績を下回っている模様だ。11月は前年実績を上回るなど回復の兆しが一部で見られた一方で、12月は前年割れになるなど、需要は不安定だ。個人向けPCの場合は、Windows 10のサポート終了に伴う買い替えが増加するのは、サポート終了直前になる傾向があり、今後、個人向けPCの出荷が増加することになりそうだ。

一方、国内PC全体の出荷金額が2年連続でプラスになっている点では、部材価格の高騰や円安の影響によって本体単価が上昇していること、AI PCをはじめとした高機能モデルが貢献していることがあげられる。

2024年の国内PC出荷のなかでも、モバイルノートの成長が際立っている。

ノートPC全体では、出荷台数が前年比17.5%増の655万5000台となっているが、そのうち、モバイルノートは38.2%増の348万4000台となり、前年比で約1.4倍の成長を遂げている。ノート型・その他では、前年比0.5%増の307万1000台となり、横ばいの状態だ。

これにより、モバイルノートと、ノート型・その他の比率は、2023年の55%:45%だったものが、2024年は47%:53%と逆転した。

ハイブリッドワークの進展などにより、モバイルノートの出荷台数が増加したと見られる。

また、デスクトップPCは、前年比12.4%減の106万4000台となり、そのうち、オールインワンが25.9%減の13万6000台と、1年間で4分の3にまで出荷台数が減少。単体は2.3%増の92万8000台とプラスになった。オールインワンは、個人向けPC需要全体が落ち込んでいることに加えて、家庭で使用するPCとして、モバイルノートが普及していることが影響しているといえそうだ。

JEITAでは、2024年12月に、「電子情報産業の世界生産見通し」を発表。そのなかで、PCの生産金額についても発表している。

これによると、2024年(2024年1月~12月)のPCの世界生産額は前年並の1961億ドル(29兆5707億円)となった。このうち、日系企業の生産割合は、約5%となる前年比8%増の1兆3524億円、そのなかで国内生産は前年比6%増の5801億円となり、日系企業の国内生産比率は約43%となっている。

  • PCの世界生産額推移

  • PCにおける日系企業のシェア

  • PCにおける日系企業の生産額推移

2024年は、リモートワーク特需からの買い替えサイクルが追い風となったこと、2025年のWindows10のサポート終了に伴う買換需要の喚起がプラスに働いたという。

今後は、AI機能搭載PCの登場や、ITリモートをはじめとする仕事や教育プロセス強化のための急速なデジタル化の担い手として、スリムな外観や軽量化し、携帯性に優れたノートPCの需要が底堅いことから、2025年はプラス成長になると見通しており、2025年(2025年1月~12月)のPCの世界生産額は前年比4%増の2036億ドルと予測。このうち、日系企業の生産額は前年比5%増の1兆4167億円、そのなかで国内生産は前年比6%増の6132億円と見ている。

2025年の日系企業の動向については、ITリモートの定着によるノートPCの買い換え需要、GIGAスクール構想による教育用PCの買い換え需要、3Dグラフィックを搭載した高性能ゲーム用PCなどによる新たな需要が期待できるとしている。

2025年の国内PC市場は、プラス成長になることが想定されているが、この伸びがどれぐらいの勢いになるのかが注目されよう。