手頃な価格でありながらアンプシミュレータソフトとフットコントローラ機能を備えたオーディオインタフェースがセットになったZOOMのギタリスト向けパッケージ「ZFX CONTROL PACKAGE」。今回はソフトウェアである「ZFX PLUG-IN」をチェックしていく。

マウス操作で多彩な機材を組み合わせる

「ZFX CONTROL PACKAGE」に含まれるアンプシミュレータソフトが「ZFX PLUG-IN」である。起動してみるとウィンドウがいくつかのエリアに分かれ、ギターアンプにキャビネットとマイク、そしてエフェクタらしきものがいくつか読み込まれていることがわかる。それぞれのエリアについてチェックしてみよう。

実機を再現したアンプやキャビネット、エフェクトが各エリアに表示される「ZFX PLUG-IN」

まずは右上のアンプエリア。ここには現在セットされているギター/ベースアンプとキャビネット、マイクが表示される。アンプは画面上に表示されているノブやスイッチをマウスで操作し、トーンコントロールなどの音作りができる。マイクは左右、そして前後に自由に動かすことができ、多彩なマイキングが可能だ。

アンプエリアの上に表示されているのが現在セットしているアンプ。選ぶアンプにより用意されているパラメータは異なるが、マウス操作で音作りが可能だ

アンプエリアの下側に表示されているのは現在セットしているキャビネット&マイク、「+」「-」ボタンをクリックしてマイク位置の前後、マイクを左右にドラッグして左右移動ができる

次に左上に表示されているバインダーを模したエリア。これはツールエリアといい、さまざまなアンプやキャビネット、エフェクタなどを一覧表示してセットする機材を選んだり、ZFX PLUG-INに用意されているチューナを開いてチューニングを行うエリアだ。機材のセットは簡単で、アンプやキャビネットならアンプエリア、エフェクタならば後述するエフェクタエリアにドラッグ&ドロップしてやればよい。

ツールエリアは上のボタンで表示が切り替わる。「CATALOG」ボタンをクリックして開くカタログは機材がギターアンプやベースアンプ、キャビネットなどカテゴリ別に表示され、使いたい機材をそれぞれのエリアにドラッグ&ドロップしてセットする

それぞれの機材をダブルクリックすると、詳しい説明も用意されており、見るだけでも結構面白い。ただし表示は英語。ZFX PLUG-INはこのカタログに限らずメニューなどもすべて英語となっているが操作そのものは簡単で、添付のPDFマニュアルを読めばすぐにわかるはずだ

また、ZFX PLUG-INではどんな機材を組み合わせて、それぞれの機材をどのようにセッティングしたかというデータを「パッチ」として管理している。このパッチはあらかじめファクトリープリセットとしてたくさん用意され、自分オリジナルのパッチを作成することもできる。そのパッチの読み込みなどもこのツールエリアで行う。

上部の「PATCH」ボタンをクリックするとツールエリアの表示がパッチ管理画面に切り替わる。ファクトリープリセットパッチはジャンル別にバンクで分類され、各バンク内に複数のパッチが用意されている。それぞれのパッチをクリックすると、各エリアにセットされる機材も変わるのがわかる

そして下側に用意されている複数のエフェクタが並んでいるところが、エフェクタをセットするためのエフェクタエリアだ。表示を拡大してみるとノブやスイッチが用意されており、アンプと同様にマウスで操作できる。もちろん複数のエフェクタを同時にセットすることが可能で、信号は基本的に左から右の機材へと流れ、接続順番を変えたいときもドラッグ&ドロップで入れ替えるだけだ。

多彩なエフェクタを自由自在に接続できるエフェクタエリア。表示を拡大してみると実機のエフェクタと同様に多くのノブやスイッチが用意され、マウスでクリックやドラッグすることでパラメータを変更できる

また、各エフェクタを接続している画面上に表示されているシールドケーブルは、各エフェクタのINPUTジャック(左側)とOUTPUTジャック(右側)にマウスポインタを合わせることで表示が変わり、そのままドラッグ&ドロップすることでルーティングを変更できる。たとえば特定のエフェクタを一時的に接続しない、といったことも可能で、もちろん不要なエフェクタは削除してしまってもよいのだが、ケーブル接続も画面上で再現している遊び心が面白い。

スイッチ&ペダルへの割り当ても簡単、DAWとしてCubase LE 4まで付属

ZFX CONTROL PACKAGEは、同梱されるペダルコントローラ型オーディオインタフェース「C5.1t」のスイッチやペダル操作でZFX PLUG-INをリモートコントロールすることができる。これにより演奏中にスイッチを踏んで特定のエフェクタをオン/オフしたり、ペダル操作でエフェクタのパラメータを変化させられる。

試しに適当なパッチを読み込み、演奏しながらスイッチやペダルを操作してみると、それぞれのパッチはあらかじめスイッチやペダルが何らかのパラメータ操作に割り当てられていることがわかる。このときエフェクタエリアを拡大してよく見てみると、エフェクタのオン/オフに割り当てられたスイッチを踏めばインジケータが点灯/消灯するのは当然として、ボリュームペダルに割り当てられたペダルを操作すればそれに応じて画面上のペダルもアニメーションするなど、芸が細かい。

もちろん各スイッチやペダルを好きなパラメータに割り当てることも可能。1つのスイッチを同時に2つのエフェクタのオン/オフに割り当て、スイッチを踏むごとに2つのエフェクタを交互に切り替えたり、スイッチで特定のパッチを呼び出すようにしたりと、柔軟な設定が可能となっている。

スイッチとペダルの割り当てはツールエリアの「CONTROL」ボタンで行う。「EFX PRM ASSIGN」で設定したいスイッチ/ペダルを選び、右に表示されているASSIGNアイコンをコントロールしたいエフェクタのスイッチやノブにドラッグ&ドロップすればよい

なお、ZFX PLUG-INに収録されている機材はギターアンプ12種類、ベースアンプ5種類、キャビネット16種類、マイク4種類、エフェクタは41種類とバラエティ豊か。それぞれの機材については詳しく触れないが、フェンダーTwin Reverb '65を再現した「1965 Brigit Amp」、マーシャルJCM800をモデルとした「MS Crunch」、シュアーSM57を再現した「Dynamic 57」などが用意されている。

ソフトウェアのZFX PLUG-INとハードウェアのS5.1tのセット。価格を考えればもう上出来といった感じだが、以前紹介した「Guitar Rig 3 Kontrol Edition」に比べると、少し見劣りする点があるかもしれない。S5.1tはサンプリングビットレートが最高24bit/48kHzまでの対応、ZFX PLUG-INはチューナは内蔵されていてもメトロノームやバッキングトラックを流したり演奏をレコーディングするためのテープデッキ的なものが用意されていない、といった点だ。

ただし、ハードウェアの仕様であるサンプリングビットレートはともかく、メトロノームやレコーディングの問題はバンドルされている”あるソフト”を使うことで解決できる。それがパッケージに付属するSteinbergのDAWソフト「Cubase LE 4」だ。

ZFX Packageに付属するSteinbergのDAWソフト「Cubase LE 4」

「Cubase LE 4」は、製品版として市販されている高機能なDAW「Cubase 4」と同じインタフェースとオーディオエンジンを搭載したソフトだ。もちろん高価なCubase 4に比べれば同時に使用できるトラック数や同梱プラグインに差はあるが、音楽制作に十分使えるソフトで、メトロノームを鳴らしながら別トラックでバッキングを流し、ループレコーディングで複数テイクを録音する、といったことが可能だ。また、VSTプラグインにも対応している。実はZFX PLUG-INは、スタンドアロンでの動作だけでなくVSTプラグインとしても使えるので、Cubase LE 4にエフェクトとして読み込むことができるのだ。

ZFX PLUG-INはVSTプラグインとしても動作するため、バンドルされるCubase LE 4にエフェクトとして読み込むことができる。もちろん他のDAWソフトでも、VSTプラグインに対応していれば読み込み可能だ

アンプシミュレータソフトとペダルコントローラ型オーディオインタフェースに加え、DAWソフトまで付属するZFX CONTROL PACKAGE。これからギター&パソコンで音楽制作をしたいという人には、手頃な価格ですべてが揃ってしまうパッケージとして魅力的だ。なお、オーディオインタフェースとしてデスクトップ型の「S2t」が付属する「ZFX STACK PACKAGE」にもCubase LE 4は付属し、さらに安価な価格設定となっている。ギタリストに限らず、安くDAWソフト&オーディオインタフェースが欲しいという人には購入を検討する価値があるはずだ。