物理的なサイズが比較的大きい製品が大半のUSB-MIDIコントローラの中にあって、パソコンのキーボードよりもコンパクトなコルグ「nanoシリーズ」。前回は25鍵のMIDIキーボード「nanoKEY」を紹介したが、今回は残りの2製品を取り上げよう。

本格的なトリガーパッドを備えるnanoPAD

「nanoPAD」は12個のトリガーパッドを搭載するMIDIパッドコントローラ(図1参照)。外観からも想像しやすいと思うが、ドラム音源の演奏などに使いやすいMIDIコントローラとなっている。

図1

12個のトリガーパッドとX-Yパッドを備えるMIDIパッドコントローラ「nanoPAD」

トリガーパッドはサイズが25mm×25mmと、コンパクトなnanoシリーズでありながら、このサイズは一般的といえる(図2参照)。もちろんベロシティにも対応しており、打ち込みだけでなく、リアルタイム演奏でも十分に使える。強いていえばパッドの並び方が2×6というところが少し変わっているが、すぐに慣れるはずだ。nanoPADにはX-Yパッド、そしてHOLD、FLAM、ROLLボタンも搭載(図3参照)。FLAMとROOLを押した状態でX-Yパッドを触りながらトリガーパッドをたたくとフラムおよびロールプレイができるという仕組みだ。HOLDボタンを点灯させてフラム/ロールプレイを行えば、X-Yパッドから手を離してトリガーパッドをたたいてもフラム/ロールプレイが可能となっている。

図2 図3

トリガーパッドは比較的固めのゴムのような素材で、サイズも含め一般的といえる仕様。トリガーに合わせて光るといった機能は備えていない

FLAMやROLLボタンを押してX-Yパッドを擦りながらトリガーパッドをたたけばフラム奏法、ロール奏法が可能。左端のSCENEボタンで4パターンのパッド割り当てを切り替えることもできる

またトリガーパッドとX-Yパッドはコントロールチェンジにも利用できる。SCENEボタンを使えばSCENE1~4を切り替え、各パッドの機能を切り替えることができるので、音色に合わせて割り当てを変えたり、トラックのミュートやエフェクトのバイパスなどに活用してもいいだろう。なおnanoPADにはToontrackのドラム音源「EzDrummer Lite」のライセンスが付属している(図4参照)。

図4

Toontrackのドラム音源「EzDrummer Lite」のライセンスが付属、コルグのWebサイトからダウンロードして使える

コンパクトでも使い勝手のよいnanoKONTROL

nanoKONTROLは9個のノブとフェーダ、18個のボタンを搭載したフィジカルコントローラ(図5参照)。再生/録音/停止や早送り/巻き戻し、そしてループのオン/オフとトランスポートコントロール系のボタンも6個搭載されている(図6参照)。

図5 図6

nanoシリーズ共通のコンパクトサイズのフィジカルコントローラ「nanoKONTROL」

左側にはトランスポートコントロール系のボタンを6個搭載。nanoPAD同様にSCENE切り替え機能も装備する

本体は小さいが、ノブやフェーダ、ボタンはそれなりのサイズが確保されており、操作しにくいということもない(図7参照)。モータフェーダを搭載したような高価なフィジカルコントローラはともかく、フェーダやノブも搭載している普及価格帯のMIDIキーボードとなら、比べてもなんら遜色はないといえる。

図7

フェーダ、ノブ、ボタンはサイズも小さすぎず使いやすい。ノブとフェーダはセンタークリックのないタイプ。ボタンはトランスポートコントロールも含め、押すごとに赤く光る

nanoKONTROLには特にソフトシンセのライセンスは付属していないが、nanoシリーズ3製品ともAbletonのDAW「Live」シリーズのディスカウントクーポンコードが入っている。 また各ボタンやノブにコントロールチェンジを割り当てるためのツール「KORG KONTROL Editor」をダウンロードして使うことが可能だ。これはnanoシリーズ3製品とも共通となっている(図8参照)。そして最近、わざわざひとつひとつのノブやボタンに対して手動設定しなくても、各種DAWの基本設定を割り当てたテンプレートが公開された。たとえばnanoKONTROLではSteinberg「Cubase」シリーズ 、インターネット「SingerSongWriter」シリーズ、Apple「Logic Pro」などのテンプレートが用意されており、KORG KONTROL Editorから転送すればすぐに使うことができる(図9参照)。まだすべてのDAWを網羅しているわけではないが、今後の充実も期待できるだろう。

図8 図9

nanoシリーズ各製品のコントロールチェンジ割り当て。nanoKEYとnanoPADではベロシティカーブの切り替えも可能なツール「KORG KONTROL Editor」

nanoKONTROLのCubase用テンプレートは、まずKORG KONTROL EditorでnanoKONTROLにデータを転送し、次に付属のxmlファイルをCubase側で読み込むだけで設定完了

nanoシリーズは本体がコンパクトなことはもちろんだが、キーボード、パッドコントローラ、フィジカルコントローラと機能によって3種類に分かれているのでなかなか使いやすい。人にもよるだろうが、この3機能を同時に使うことは意外と少ないのではないだろうか? たとえばスタジオに持ち込んでミキシングだけに使いたいとき、オールインワンタイプのMIDIコントローラを持っていくのは邪魔だろう。割り切れるなら、コンパクトなnanoKONTROLだけを持っていくというのもありのはず。その意味では設置スペースに困っている人に限らず、既にMIDIコントローラを所有している人にも魅力的な製品だ。またnanoシリーズは価格もかなり安価に設定されており、量販店ではnanoKEYが5,000円前後、nanoPADとnanoKONTROLが6,000円前後で販売されている。これなら必要なものだけ買ってもよいし、3つとも購入し状況に合わせて使い分けてもよいだろう。数量限定でnanoシリーズ3製品に専用バッグ、4ポートUSBハブを組み合わせたnanoSETというものも用意されており、単品購入よりお買い得な価格設定となっている。こちらも見逃せない。