2019年も終わりを迎えようとしているが、携帯電話業界で今年、各社から終了が打ち出されたのが「3G」だ。なぜ3Gを終了させる必要があるのか、そして終了する3Gのサービス利用者に対し、携帯電話会社はどのような策を取っているのだろうか。
各社が相次いで3G終了を発表、電波は4Gや5Gで活用
2019年は次世代モバイル通信規格の「5G」が世界中でスタートし、日本でもプレサービスとして各社が5Gに関する様々な取り組みを実施。2020年には日本でも商用サービスが提供される予定だ。
だが一方で、終わりを迎えようとしているのが第3世代のモバイル通信規格「3G」である。既にKDDIは2018年11月に、3Gによる通信サービス「CDMA 1X WIN」を2022年3月末に終了させることを発表しているが、2019年10月にはNTTドコモが3G通信サービス「FOMA」と、FOMA向けに提供されている「iモード」を、2026年3月末で終了させることを発表。さらにソフトバンクも2019年12月6日に、3Gの通信サービスを2024年1月下旬に終了させることを発表しているのだ。
FOMAは2001年、CDMA 1X WINは2003年、そしてソフトバンクの3Gサービスは、前身のボーダフォン日本法人が「ボーダフォングローバルスタンダード」として2002年にスタートしたもの。既に10年以上にわたって提供されており、5Gの2世代前の規格を使っていることもあって、最新のインターネットサービスを利用するには通信速度が遅く効率も悪い。
しかも多くの人は既に4Gの契約に移行しているため、利用者が少なくなった3Gのネットワークをいつまでも稼働させておくのはコスト的にも無駄が多い。割り当てられた周波数帯をより有効活用するためにも、新しい通信規格への移行を進める必要がある訳だ。
こうした通信規格の世代交代は1G、2Gでも実施されているだけに、携帯電話会社にとっては必要不可欠な措置といえるだろう。古いサービスが終了し、空いた周波数帯域はより新しい通信規格、現在であれば4Gや5G向けに転用されることとなる。
3Gから4Gへの「巻き取り」で新たな競争も
そして各社が3Gのサービスを終了させる上で重要になってくるのが「巻き取り」である。これは要するに、古いサービスを契約している顧客に対し、新しい通信規格のサービスへと移行してもらうことだ。
そのためには単に契約を変えるだけでなく、新しい通信規格に対応した端末に買い替えてもらう必要もある。だが長年同じサービスと端末を使い続けてきた顧客からすれば、携帯電話会社の都合にもかかわらず、お金を払って端末を買い直すというのは納得がいかないというのが本音でもあろう。
そうしたことから巻き取りを進める場合、携帯電話会社が新しい規格に対応した端末を安く販売する、あるいは無料で提供することが多い。2019年10月に改正された電気通信事業法でも、通信方式や周波数帯の移行に対応するため購入する端末は、例外的に「0円未満にならない範囲」で提供可能とされており、巻き取り時は端末の大幅値引きも可能なのだ。
だがある意味、既存の通信サービス終了は、消費者にとってみれば携帯電話サービスを見直す機会にもつながってくる。そうしたことから巻き取りの対象となる顧客を狙って、ライバル各社がより低価格なサービスを提供するなどして奪おうという動きが出てくることから、通信方式の移行は携帯電話会社間の競争が激しくなるタイミングでもあるのだ。
実際先行して3Gのサービス終了を発表したKDDIは、2019年度に入って以降減益の決算が続いているが、その大きな要因の1つとして、3Gの顧客を他社に奪われないよう巻き取りを強化したことを挙げている。だがKDDI以外の2社も3Gの終了を発表したことから、今後は3Gの顧客を巡る各社の争奪戦が加速し、それが各社の業績に影響を与える可能性も高いだろう。
とはいえ現在まで3Gを使い続けているのはシニアが多く、その多くがほぼ通話とメールしか利用しないフィーチャーフォン利用者であることから、単に3Gの顧客を4Gに移行するだけでは、携帯電話会社としてもうまみが少ないのもまた事実。巻き取りと同時に、より先の収益拡大につながるスマートフォンの利用へといかにつなげていくかということも、各社には今後大きな課題となってくるだろう。