グーグルが2019年10月24日に発売する新しいスマートフォン「Pixel 4」は、ディスプレイに触れることなくさまざまな操作ができる新機能「モーションセンス」が最大の特徴となっている。だがこの機能は当面日本では利用ができず、2020年春の対応となっている。なぜ日本では目玉機能が利用できないまま販売されることになったのだろうか。

モーションセンスの対応は2020年春を予定

秋冬商戦に向けてスマートフォン新機種が次々投入される昨今。そうした中でも2019年10月15日にグーグルが日本での発売を発表した「Pixel 4」「Pixel 4 XL」は、注目を集める機種の1つとなっているようだ。

  • Googleの新型スマホ「Pixel 4」

    グーグルが2019年10月24日に発売する「Pixel 4」と「Pixel 4 XL」。新たに2つのカメラやeSIMを搭載するなどの進化がなされている

Pixel 4/4 XLは、それぞれ5.7インチ、6.3インチのディスプレイを搭載したスマートフォン。前機種となるPixel 3/3 XLと比べ大きく進化した機能の1つがカメラで、新たにデュアルカメラ機構を採用。前機種でも定評のあった夜景モードに加え、ソフトとハードの組み合わせによって画質をあまり落とすことなく8倍までのズームができるなど、新たに追加された望遠カメラを活用した機能強化がなされている。

またPixel 3/3 XLの日本向けモデルでは、FeliCaを搭載する代わりに省かれてしまったeSIMも、Pixel 4/4 XLはしっかり搭載してきている。もちろんFeliCaも継続して搭載されており、「Google Pay」や「おサイフケータイ」が利用できるなど、日本向けの機能カバーもしっかりなされているようだ。

こうしたさまざまな進化がなされたPixel 4/4 XLだが、実は最大の特徴として打ち出しているのは「モーションセンス」という機能である。これはスマートフォンの前に手をかざすことで、さまざまな操作ができるというもの。これによってスマートフォンに触れることなく音楽の再生や停止などができる、スマートフォンに手を近づけるだけでスリープから解除できるなど、さまざまな機能の実現が可能になるという。

  • スマートフォンの前に手をかざし、振ったりすることでさまざまな動作が実現できる「モーションセンス」は、Pixel 4/4 XLの最も大きな特徴となっている

だがこのモーションセンス機能、海外で販売されるPixel 4/4 XLでは販売開始直後から利用できるのだが、日本では当面利用できず、2020年春の対応予定となっている。なぜ日本だけモーションセンス機能を利用できないのかといえば、その理由は“電波”にある。

電波を使う技術には国の認可が必要

スマートフォンに手をかざしてさまざまな操作をするという機能自体は、これまでいくつかのスマートフォンに搭載されてきているものだ。一例を挙げると、日本未発売のモデルだがLGエレクトロニクスが2019年に海外で発売した「G8 ThinQ」は、深度測定用のToFカメラと赤外線センサーを用いて、スマートフォンに触れることなくさまざまな操作ができることを特徴の1つとしていた。

  • Pixel 4/4 XL等と同様、ディスプレイに触れることなくモーションによる操作が可能なスマートフォンは、LGエレクトロニクスの「G8 ThinQ」(日本未発売)などいくつか登場している

だがPixel 4/4 XLのモーションセンスに用いられている「Soli」という技術は、カメラや赤外線ではなく、60GHzという高い周波数の電波を使って手の動きを認識する仕組みなのだ。こうした技術は従来、航空管制や潜水艦などのレーダーに用いられていたもので、それを小型化してスマートフォンに実装したのが大きなポイントとなっているようだ。

だが当然のことながら、日本で電波を発する機器を販売するには技術基準適合証明、いわゆる「技適」を取得する必要がある。もちろんPixel 4/4 XLも、他にもモバイル通信やWi-Fi、Bluetoothなど多くの無線を用いることから技適を取得して販売されるのだが、そもそも日本では、60GHz帯の周波数帯をそうしたセンサーに用いることを想定しておらず、Soliに関しては技適の取得が認められなかったのだ。

しかしながらSoliと同様の技術は今後大きく広がる可能性があることから、電波行政を担う総務省がその利用ができるよう、技術基準の見直しを進めることとなったのである。この帯域は免許不要で利用できることから、現在のWi-Fiよりも高速な無線LAN規格として注目される「WiGig」や、障害物を検知する自動車のレーダーなどいくつかの用途に用いられているが、Soliはそれらとの共有が可能との検証結果が出されている。

  • 総務省「60GHz帯の周波数の電波を使用する無線設備の高度化に向けた技術的条件」一部答申概要より。Soliと同様の60GHz帯を用いたセンサーは今後増加が見込まれることから、技術基準見直しがなされることとなった

それゆえ今後さまざまな検討が進められた後、2020年春には技術基準の見直しがなされると見られている。グーグルがモーションセンスの対応を2020年春予定としているのには、そうした事情がある訳だ。

もっとも現在のところ、Pixel 4/4 XLが販売されるのは12の国や地域に限られている。モーションセンスが最初から使えない国はそのうち日本だけということであり、Soliのような60GHz帯の利用を想定していない、あるいは認めない国が他にも存在する可能性は十分あり得るだろう。実際、インドではSoliの60GHz帯の利用許可が政府から下りなかったため、Pixel 4/4 XLが販売されないことになったとの報道が一部ではなされている。

電波は国の重要な資産であり、それをどのように活用するかは国によって方針が違っていることが少なくない。それだけに何らかの形で電波を使う新しい技術が登場した時は、また日本では提供が遅れる、あるいは提供されないといった事象が起きる可能性が十分にあり得ることは、覚えておくべきだろう。