KDDIは米モトローラ・モビリティの「motorola razr 60 ultra」を2025年12月12日にメインブランドの「au」から発売すると発表した。モトローラブランドのスマートフォンを同社が扱うのはおよそ13年ぶりのこととなるが、なぜKDDIは現在のタイミングで、モトローラ・モビリティのスマートフォンを扱うに至ったのだろうか。

最上位の「motorola razr 60 ultra」がauから発売

長らく携帯大手からのスマートフォン販売がなかった、中国レノボ・グループ傘下のモトローラ・モビリティだが、折り畳みスマートフォンの「razr」シリーズを中心として、国内携帯大手からの販路を相次いで回復している。実際、2021年に「motorola razr 5G」でソフトバンクからの販路を約9年ぶりに回復したのを皮切りとして、2024年には「motorola razr 50d」で約18年ぶりに、NTTドコモの販路を回復している。

そしてモトローラ・モビリティは、2025年9月30日に「motorola razr 60」シリーズの日本投入を発表した際、上位モデルの「motorola razr 60 ultra」を、オープン市場向けのSIMフリー版に加え、KDDIのメインブランド「au」からも販売されることを明らかにしていた。そして2025年11月26日には、KDDIからも正式にmotorola razr 60 ultraを2025年12月12日に発売することを発表しており、最後の1社となるKDDIからの販路も正式に回復させたこととなる。

  • モトローラ・モビリティの折り畳みスマートフォン最上位モデル「motorola razr 60 ultra」は、SIMフリーに加えKDDIの「au」ブランドからも販売される

    モトローラ・モビリティの折り畳みスマートフォン最上位モデル「motorola razr 60 ultra」は、SIMフリーに加えKDDIの「au」ブランドからも販売される

KDDIがモトローラブランドのスマートフォンを販売したのは、これまで2012年の「MOTOROLA RAZR IS12M」が最後だった。それゆえmotorola razr 60 ultraの販売によって、KDDIはモトローラブランドのスマートフォンをおよそ13年ぶりに販売することとなる。

  • KDDIがモトローラブランドのスマートフォンを販売するのは、「MOTOROLA RAZR IS12M」以来約13年ぶりのこととなる

    KDDIがモトローラブランドのスマートフォンを販売するのは、「MOTOROLA RAZR IS12M」以来約13年ぶりのこととなる

それだけにmotorola razr 60 ultraは、KDDIの意向を積極的に組み入れている様子がうかがえる。実際motorola razr 60 ultraは、背面ディスプレイであらゆるアプリを動作させられることを生かし、スマートフォン決済の「au PAY」を電源キーの2回押し、あるいは長押しで呼び出すことを可能にしている。

  • 背面ディスプレイでさまざまなアプリを動作させられることから、KDDIが力を入れる「au PAY」を呼び出しやすくする仕組みも用意されている

    背面ディスプレイでさまざまなアプリを動作させられることから、KDDIが力を入れる「au PAY」を呼び出しやすくする仕組みも用意されている

より踏み込んだ対応をしているのが、衛星通信を用いて圏外の場所からでも通信ができる「au Starlink Direct」への対応だ。au Starlink Directを利用できるようにするには機種毎に対応が必要で、KDDIが販売するモデルはKDDIの声掛けで対応が進んでいるのだが、同じ機種であっても他社向けやSIMフリー版として販売されているモデルは、メーカー側に対応が任せられているため、が進まずばらつきが生じていた。

だがmotorola razr 60 ultraは、SIMフリー版もau版も同じモデルを採用しており、auのSIMを挿入した時だけ独自のアプリや機能を導入する仕組みとなっている。それゆえau版だけでなく、SIMフリー版も当初からau Starlink Directに対応しているとのことだ。

au Starlink DirectはKDDIが展開にとても力を入れているサービスだけに、モトローラ・モビリティ側もその意向をくんで、最初から販路を問わず全てのモデルで対応するに至ったのではないかと考えられる。

  • motorola razr 60 ultraはKDDIが力を入れている「au Starlink Direct」に対応するが、対応するのはau版だけでなく、SIMフリー版も同時に対応するとのこと

    motorola razr 60 ultraはKDDIが力を入れている「au Starlink Direct」に対応するが、対応するのはau版だけでなく、SIMフリー版も同時に対応するとのこと

採用の決め手は「Moto AI」

モトローラ・モビリティが、KDDIをはじめとした日本の携帯大手の販路回復に注力しているのは、親会社であるレノボ・グループがスマートフォンの日本市場開拓強化に舵を切っているためだ。実際レノボ・グループは2024年、前年に経営破綻した国内メーカーのFCNTを傘下に収めているし、モトローラ・モビリティに関しても2020年以降、日本法人の社長に日本人を起用するなどしてローカル戦略を急速に強化している。

ではKDDI側が、モトローラ・モビリティのスマートフォンを再び扱ったのはなぜか。KDDIの関係者に話を聞いたところ、そこには「AI」の存在があるという。

昨今大きな注目を集めるAIの波はスマートフォンにも訪れており、KDDIもAI関連事業に非常に力を入れてそのアピールを強めている。そして最近ではサムスン電子の「Galaxy AI」のように、メーカーが自社独自のAI機能をアピールするケースが増えている。

モトローラ・モビリティも、独自のAI機能「Moto AI」を展開しているのだがこれまで写真や画像関連以外の多くの機能が、日本語に対応していなかった。しかしながらモトローラ・モビリティは、motorola razr 60シリーズ国内発売に合わせてMoto AIの日本語対応を急速に進めたことから、KDDIもそこに着目してMoto AIをラインアップに取り入れるべく、motorola razr 60 ultraの販売を決めたようだ。

  • motorola razr 60シリーズではモトローラ・モビリティ独自のAI「Moto AI」の日本語対応が進んでおり、それが採用に至る決め手となったようだ

    motorola razr 60シリーズではモトローラ・モビリティ独自のAI「Moto AI」の日本語対応が進んでおり、それが採用に至る決め手となったようだ

なのであればNTTドコモやソフトバンクと同様、より価格が安くユーザーが手にしやすい「motorola razr 60」の販売を選ぶ手もあったはずだ。だがKDDIではmotorola razr 60の位置付けが、既に販売しているサムスン電子の「Galaxy Z Flip7」に比較的近いと見ており、その分ターゲットが被ると判断して採用を見送ったようだ。

一方でmotorola razr 60 ultraは、チップセットに米クアルコム製のハイエンド向けとなる「Snapdragon 8 Elite」を搭載するなど性能が非常に高く、それでいて背面にも車の内装などに用いられるアルカンターラ素材を用いるなど、高級感のあるデザインを取り入れている。そうしたことからより高い機能・性能を求める人に向けた縦折りタイプのスマートフォンとして、motorola razr 60 ultraを採用するに至ったのではないだろうか。

  • motorola razr 60 ultraは上位モデルだけあって性能が高いだけでなく、背面にアルカンターラ素材を採用するなど、デザイン面でも高級感が打ち出されている

    motorola razr 60 ultraは上位モデルだけあって性能が高いだけでなく、背面にアルカンターラ素材を採用するなど、デザイン面でも高級感が打ち出されている

ただmotorola razr 60 ultraは全国のauショップで展示し、在庫を置いて販売する訳ではなく、在庫を常時置いているのはオンラインショップや、一部の直営店に限られるとのことだ。一括価格で18万9800円と非常に高額であることに加え、KDDIでは久しぶりの販売ということもありブランドがまだ多くの人に浸透していないこともあってか、販売には慎重な様子だ。

それだけに、今後KDDIがモトローラ・モビリティ製品を扱うかどうかは、motorola razr 60 ultraの販売数と、その評価が大きく影響してくると考えられる。携帯3社からの販路を復活させたモトローラ・モビリティだが、その定着にはまだ時間を要することになりそうだ。