KDDIは2025年8月28日、衛星とスマートフォンとの直接通信サービス「au Starlink Direct」がデータ通信に対応、19のアプリでデータ通信が利用できると発表、それに合わせてau Starlink Directにも対応した、子供やシニアに向けた新しい料金プランの提供も発表している。au Starlink Directを軸にメインブランド「au」のサービス強化を図るKDDIだが、死角はないのだろうか。
年齢別プランもau Starlink Direct対応に
米Space Exploration Technologies(スペースX)との提携により、低軌道衛星の「Starlink」を活用したサービスを相次いで導入し、競争力を高めているKDDI。2025年4月には、Starlinkの衛星とスマートフォンとを直接接続して通信できる「au Starlink Direct」を競合他社に先駆けて提供開始。メインブランドの「au」ユーザーには追加料金なしで利用できる仕組みを用意するなど、Starlinkの優位性を生かしてサービス強化を推し進めている。
そのKDDIが2025年8月28日に、au Starlink Directに関する新たな発表を実施している。それは従来SMSの送受信しか利用できなかったau Starlink Directが、新たにデータ通信に対応したこと。データ通信への対応は、スマートフォン上でさまざまなアプリやサービスの利用が可能になり、au Starlink Directの利活用の幅が大きく広がることからサービス開始当初より実現が期待されていたものだ。
サービス開始当初は、地上の携帯電話ネットワークが整備されていない山や海での利用が多いとされるau Starlink Directの特性を重視し、地図や天気、アウトドア関連など、そうした場所での活用が多いと見られる19のアプリが対応するとのこと。ただKDDIでは今後アプリ開発者向けのサポートサイトを開設予定しており、より多くのアプリ開発者に対応を進めてもらいたい考えのようだ。
ただKDDIは、同日にもう1つ大きな発表を実施しており、それはauブランドに子供やシニアに向けた新料金プランを、2025年9月1日より提供開始することだ。具体的には12歳以下向けの「U12バリュープラン」と16歳以下向けの「U16バリュープラン」、そして60歳以上向けの「シニアバリュープラン」となる。
各プランはそれぞれの年齢層に応じて通信量とサービスの追加がなされているのが特徴。小学生の利用が主となるU12バリュープランの場合、データ通信は送受信最大を300kbpsに制限することで動画サービスなどの使い過ぎを防ぐのに加え、スマートフォンで起きる犯罪などから子供を守る「コドマモ」や、英語や仕事体験などの自主学習コンテンツが利用できる「auキッズラボ」が追加料金なしで利用できるようにしている。
U16バリュープランは、主に中学生が利用するサービスとなるため通信量が3GBから20GBの2段階制に増量。さらにオンラインサービスの利用が増える世代がターゲットなることから、「Netflix」「YouTube Premium」など外部サービスを同時に利用するとPontaポイントが還元される「サブスクぷらすポイント」にも対応するという。
そしてシニアバリュープランは、音声通話が多いシニアに合わせてて通信量は5GBに抑える一方、5分間の通話定額と、迷惑電話対策などのオプションサービスがセットになった「電話きほんパック(V)」を追加。また金融サービスへの関心も高いシニア層に合わせ、「auじぶん銀行」の「プレミアム金利優遇」が適用され普通預金金利が年0.55%になる仕組みも用意されているという。
いずれもターゲットが異なるため内容には大きな違いがあるのだが、共通しているのは、auブランドのサービスだけあってau Starlink Directが利用できること。こうした点からも、KDDIがau Starlink Directを重要な価値と位置付け、それを軸としたサービス設計により他社との差異化を図ろうとしている様子を見て取ることができる。
KDDIが優位性を維持できるのは1年未満
そこまでKDDIがau Starlink Directに力を入れているのには、もちろん国内で衛星とスマートフォンとの直接通信サービスを提供している企業が他にないからでもある。
日本では、既に大手3社が日本全国をくまなくカバーするネットワークを構築しており、楽天モバイルもKDDIのリソースを一部借りる形で広域をカバーしていることから、ネットワークで差異化できる要素が少ない。もちろん2023年にNTTドコモが引き起こした大幅な通信品質低下のように、“敵失”でネットワークの優位性が高まることもあるにはあるが、各社ともにネットワーク整備には力を入れており品質は常に変化していることから、決定的な差は付きにくくなっている。
それだけに、いち早く衛星とスマートフォンとの直接通信を実現しカバーエリアの概念を大きく変えたau Starlink Directが、KDDIにとって競合に対抗しネットワークでの優位性を打ち出す、強力な武器となっていることは間違いない。だからこそKDDIは、au Starlink Directをメインブランドであるauの価値を高める存在とし、au Starlink Directが利用できる料金プランの強化を図っているのだろう。
ただ、衛星通信に関してKDDIの優位性が長く続く訳ではない。実際、NTTドコモとソフトバンクは既に、2026年より衛星・スマートフォンによる直接通信サービスを提供するとしているし、楽天モバイルも2026年第4四半期に、米AST SpaceMobileの衛星を活用したスマートフォンとの直接通信サービスを提供予定だ。
少なくとも2026年には、衛星・スマートフォンの直接通信がKDDIだけのものではなくなることは間違いない。無論、各社がどのようなサービスを提供するのか現時点では分かっていないのだが、内容によってはau Starlink Directの優位性も薄れることになるだろう。
それだけにKDDIには、今後au Starlink Directをauだけの価値とするよりむしろ、auブランド以外のサービスでも利用しやすい環境を整え、利用拡大を図ることも求められる。もちろんKDDIは既に、「au Starlink Direct専用プラン」を提供しており、au以外のユーザーがau Starlink Directを利用すること自体は可能なのだが、いわゆる「SIMフリー」などKDDI以外が販売する端末の対応が進んでいない。
それに加えてKDDIは新たに、5G通信にも対応するようアップデートを加えた「au Starlink Direct専用プラン+」を2025年9月1日より提供する予定なのだが、既にau Starlink Direct専用プランを契約している人は一度解約し、新しいプランを契約し直す必要があるなどの不便が生じている。au以外のユーザーが利用しやすい環境整備にはまだ多くの課題があるといえ、競合が台頭する今後に向けては何らかの改善が求められる所だろう。





