バッテリー切れの心配から開放されたい

「iriver T60」

iPodにせよWalkmanにせよ、ポータブルオーディオで困ることは"バッテリー切れ"。充電をうっかり忘れた、予定以上に長い時間再生したなどの理由で、バッテリー切れに遭遇したことは誰しもあるはず。

手に負えないのが"バッテリーの寿命"。放充電を繰り返すうちにバッテリーはヘタりはじめ、最後には1時間と保たなくなる。バッテリーを交換するにしても、そもそもユーザの手によるバッテリーの交換は考慮されていないため、苦労すること必定。実際、バッテリーを交換すべくiPodの開腹手術に踏み切ったことがあるが、手先の不器用な筆者には責め苦以外のなにものでもなかった。

ならばいっそのこと電池式は……との思いつきで、音よし見栄えよしという電池式のポータブルオーディオを探してみたところ、「iriver T60」発売の知らせが。電力は単四電池1本でヘタりの心配は無用、価格も2GBモデルで12,800円(iriverオンラインストアの特別価格、以下同様)からと、まさにKOMONO価格。折良くメーカーから発売直前の2GBモデルを試用させてもらえることになったため、ここに紹介させていただく次第。

スクリーンセーバ代わりに表示されるトラボルタ風アニメーション。思わずSRSをONにしてしまいそう

0.8インチのCSTN液晶は意外に明るい

かなりのお買い得モデルと見つけたり

T60の特徴は、なんといっても単四電池1本で駆動するシンプルさ。予備の電池を1~2本カバンの中に入れておいてもかさ張るわけではなし、それがイヤならコンビニで買えばよし。"音楽を聴きたいときにかぎってバッテリ切れ"というマーフィーの法則が通用しない、つい充電を忘れてしまう横着者にピッタリの仕様だ。

T60には、4月に発売されたデザイン共通の姉妹機「T50」がある。容量1GBのフラッシュメモリ搭載で9,980円、というiPod shuffleを意識したプライシングのもと4月に発売開始されたT50は、電源に単三電池を採用。そのぶんサイズも一回り大きく、T60の幅27.5×高さ65.3×奥行き22.0mm / 約24gに対し幅30.9×高さ73.1×奥行き27.3mm / 約32g。T60の最長駆動時間は約19時間だが、単三電池を採用するT50は約52時間。その他のポータブルオーディオとしての基本機能はT60と共通しているため、電池の保ちを最重視するならばT50も選択肢に入るはず。

ライバル(?)のiPod shuffleと並べてみたところ

だが、しかし。2GBモデルが12,800円、4GBモデルが17,800円というT60のプライシングはやはり魅力的。単四電池ゆえに駆動時間は約19時間とT50(約52時間)の半分以下だが、T50にプラス2,820円で容量倍増(2GBモデルの場合)と考えたときのコストパフォーマンスは悪くない。

単四電池1本で動くことが何よりありがたい

ポータブルオーディオとしてのT60の基本機能だが、対応するコーデックはMP3 / WMA / OGG / ASFの4種。2種類用意されたファームウェアのうちMTPを有効にすれば、音楽配信サービスで購入したWindows Media DRM 10の楽曲も再生できる。さらには海外でも使用できるタイマー予約録音対応ワールドバンドFMチューナー、内蔵マイクを利用したボイスレコーディング機能、再生速度調整やA-B区間リピートといった語学習得に役立ちそうなものまで、小さいながら機能は豊富。12,800円という価格を考えれば、機能てんこ盛り、と言ってもいいすぎではないだろう。

ボイスレコーディング機能も装備されている

付属のジュークボックスソフト「iriver plus3」は、可もなく不可もなくといったところ。オンラインストアと連動しているわけではなく、追加された動画変換機能もT60には無関係。音にこだわるのならば、LAMEなど高品質なエンコーダを用意したほうがいいかもしれない。

付属のジュークボックスソフト「iriver plus3」はWindows専用

Macには非対応だが、Finderからファイル操作できるので使えないこともない(実際使えました)

SRSがイイ感じ

T60でイチ押しの機能が、米SRSが開発した立体音響技術「SRS WOW」。OFFの状態でもなかなかの音質で聴かせてくれるT60だが、個人的にはSRSの重低音と広がりある音空間のほうが耳に心地いい。試聴に使った曲もプログレではなく、EW&FのLet's Grooveとか、Billy Squierの「Christmas is the time to say I love you」とか(一番カッコいいクリスマスソングですな)、80年代前半のリアル中坊時代に聴いていた"ドンシャリ"の似合う曲ばかり。9種類のプリセットEQと5種類のカスタムEQを組み合わせれば、かなり自由な再生環境のカスタマイズができるはず。

SRSを有効にすれば、迫力の重低音が楽しめる

難を挙げるとすれば、ジョイスティック風ボタンの操作が面倒なこと。上下左右へ動かすのはいいとして、ボタンを短く押す / 長く押すときにカクッとしがちなため、思わぬ結果を招いてしまう。最初は自分が不慣れなためかと思ったが、数日経ってもときどき失敗することが。筆者の不器用さだけが原因ではなさそうだ。

このジョイスティック風ボタンの操作性がもう少しよければ……

それさえ除けば、単四電池1本で動く機動力とコストパフォーマンスのよさが光るT60は、かなりお買い得な一品。サウンドファイルは手動コピーしなければならないが、その気になればFinderから操作できるので、個人的にはオルタナ気質のMacユーザに強く勧めたいと思う。

○iriver japan「iriver T60」
機能 ★★★★
価格 ★★★★
楽しさ ★★
怪しさ ★★★
衝動買い ★★★★
TOTAL ★★★★