火星の話題は尽きない。例えば、イーロンマスクは、2026年までに人類を火星へ送り込む、そんな計画も報じられている。
しかし、火星へ到着したとしても片道切符。地球へと帰るための燃料がない、そんな話もある。
そこで解決策を提案するのがジョージア工科大学。今回は、そんなジョージア工科大学の火星でのロケット燃料の話題について紹介したいと思う。
ジョージア工科大学の火星ロケット燃料の構想とは?
繰り返しになるが、火星へと人類が送り込まれる計画は期待もあるが、地球への帰還はどうなるのか、人類は火星でどのように生命を維持するのかなど正直課題もあるだろう。
今回は生命維持活動ではなく、火星からの輸送機についてフォーカスしたい。現在、火星から打ち上げられるロケットの燃料は、メタンと液体酸素を燃料とすることが検討されているという。
このメタンと液体酸素を地球から輸送するとすれば、両方の燃料で30t運ぶ必要があるといい、約80億ドルのコストがかかるというのだ。
この解決策の1つとして、アメリカ航空宇宙局(NASA)は火星の大気の大部分を占めるCO2から化学触媒作用を使うことで、液体酸素を製造する提案をしている。
しかし、メタンは、火星では製造できず、地球から輸送する必要があるというのだ。
このメタン製造の代替策として、ジョージア工科大学は、次のような提案をしている。
それは、バイオテクノロジーを活用した「bio-ISRU(biotechnology based in situ resource utilization)」という方法で、「2,3-ブタンジオール」を生成する方法。「2,3-ブタンジオール」は炭素数4の2価アルコールでロケット燃料として活用できるという。
まずシアノバクテリアを、光合成によりリアクター内で成長させる。別のリアクター内で酵素がシアノバクテリアを糖に分解。それを大腸菌に供することで、「2,3-ブタンジオール」が生成されるというもの。
実際の火星でのbio-ISRUを活用したバイオリアクターのイメージした図は以下のようだ。
このリアクターの大きさは、サッカー場4面もある巨大なもの。ジョージア工科大学はさらにこの「2,3-ブタンジオール」を生成するための生物学的および材料学的な視点で最適化を図っているという。
もしシアノバクテリアの成長スピードを加速できれば、このサッカー場4面もの面積は不要となり、地球からのバイオリアクターを整備するための物資輸送は大幅にコスト削減になる。
また、シアノバクテリアは、紫外線に弱いため、火星での太陽光スペクトルについて詳細は不明だが、このあたりの研究も必要とのことだ。
いかがだっただろうか。先日、第49回の近未来テクノロジー見聞録「CO2と水からお酒を作るAir Company! この技術で目指すのは火星!?」にてAir companyが、CO2からお酒(アルコール)を作る技術を応用して、火星の大気の主成分であるCO2から燃料や砂糖を作ることを計画していることを紹介した。
今回のジョージア工科大学の話題も類似性がある。地球ではカーボンニュートラルに関連したCO2をさまざまなプロダクトに変える取り組みもあり、この背景もあってか、火星でのCO2に関する構想が続々と発表されている。もちろん、イーロンマスクという超強力なインフルエンサーの影響もあるだろう。