訓練というと、学校、会社で定期的に実施する防災訓練、避難訓練を思い浮かべるだろう。正直なところ、緊張感に欠けた行動をとってしまった経験をお持ちのかたも少なくないかもしれない。

そのような課題を解決すべく、いまではVRゴーグルを装着して火災、地震、洪水などをリアルに表現した訓練サービスを提供する企業も存在する。

その防災訓練、避難訓練の紹介は別の機会にするとして、今回は、レスキューや救助などの緊迫した状況を再現するために最新テクノロジーを取り入れたサービスを提供しているBluedropについて紹介したいと思う。

進化したレスキューの訓練とは?

Bluedropはカナダの企業で、レスキューの訓練シミュレータを提供する。中でも今回は、救助用のヘリコプターからロープを垂らしたホイスト救助用のシミュレータにフォーカスしたいと思う。

まず、ホイストについて説明したい。ホイストとは、救助用のヘリコプターから隊員や救助用のカゴなどを吊り下げて、水上、地上に降ろして要救助者を吊り上げてヘリコプター内に収容する装置のことだ。

この一連の訓練を実施してくれるシミュレータが、「Hoist Mission Training System (HMTS)」。下の写真が訓練シミュレータの外観だ。赤いヘルメットを装着した人物が確認できるだろうか。彼は訓練者で、VRゴーグルとグローブをつけた状態で訓練を受ける。また、訓練状況を管理したり、的確な訓練が実施できているかなどの確認など、統括している人物も確認できる。

  • BluedropのHMTS(出典:Bluedrop)

    BluedropのHMTS(出典:Bluedrop)

では、実際にどのように訓練するのだろうか。訓練者は、下の写真のように、空中にホバリングしているヘリコプターの内部で、身を乗り出してケーブルを握りながら、ホイスト救助をシミュレートしている。この握ったケーブルが動く。この動きは、実際にヘリコプターの動きや風などによる揺れを模擬していて、訓練者に対してリアリティーのある張力や触覚を生み出しているという。

  • HMTSでの訓練風景(出典:Bluedrop)

    HMTSでの訓練風景(出典:Bluedrop)

VRには、水上または地上から救助カゴの様子が映っている。VRを覗き、握ったケーブルの位置を的確にしながら、救助カゴを引き揚げるなどする。

救助カゴの種類も変更でき、また、雨、雪、風などの天候や昼や夜といった状況も選択することが可能だ。つまりさまざまな状況下での訓練が可能なのだ。

HMTSは、Bluedropに設置されているため、訓練者はBluedropに赴いて訓練を受けることになるのだが、この点の課題に対してもBluedropは「Portable HMTS」という可搬型のシミュレータを開発し、遠方へと趣き訓練サービスを提供しているという。なお、このHMTSは、オランダのVRに強みを持つスタートアップであるManusと連携しているようだ。

  • HMTSでVRに映っている映像の様子(出典:Bluedrop)

    HMTSでVRに映っている映像の様子(出典:Bluedrop)

実際にVRで映し出されるような救助シーンの機会は限られるだろう。つまり熟練した救助隊員でもなんども経験した状況ではないと考える。これはこれで事故がないということでよいことだが、このように多くの経験がなくても、数が少ない機会であっても、確実に命を救わなければならない大変な任務。このHMTSを活用すれば、緊張感と臨場感を持って的確な訓練を受けることができる、多くの訓練機会を得られ従来と比べて訓練のコストパフォーマンスは良くなる、などの多大なメリットがあるのは確かだろう。

いかがだっただろうか。今回はBluedropのホイスト救助訓練シミュレータについて紹介した。

他にも訓練において環境を再現するのが困難で、コスト高になるようなケースはたくさんあるだろう。このようなケースには、VRを活用したシミュレータは主流となっていく印象がある。

また、皆さんの日々の仕事、生活、プライベートにおいて何度も何度もイメージトレーニングしている、そのようなシーンがVRを活用したリアリティーのある“訓練”になるサービスも未来ではあると感じる。