最近、月面探査に関する話題が多い。これも大々的には出てこないが、日本も参画するアルテミス計画に端を発していると感じる。

トヨタ自動車の月面与圧ローバー「Lunar Cruiser」の話題や、そのタイヤを開発するブリヂストン、そのデータを取得するタカラトミーらの”変形”月面ロボ、そして民間として世界初の月探査を目指すDymonの月面探査車「YAOKI」。この中に加わる、GITAIの月面ロボットローバーについて今回は紹介したい。

GITAIとは?

GITAIは、宇宙作業ロボットの研究開発・製造を行っている日本を代表する宇宙ベンチャー企業だ。CEOの中ノ瀬翔氏は、GITAIを設立する前に日本IBMで活躍し、インドで起業経験もあるビジネスセンスに満ちた人物だ。

そして、CRO(チーフ・ロボティクス・オフィサー)に中西雄飛氏が参画している。中西氏は東京大学情報システム工学研究室助教を退任後、二足歩行ロボットベンチャーのSCHAFTを設立。そして、SCHAFTを2013年にGoogleに売却した経験のあるすごい人物だ。

またメンバーにはPh.D.ホルダーが多いという。もうお分かりだろう。とてもロボティクスに強く、またビジネスセンスに長けたベンチャーなのだ。それは、彼らのVISIONを見てもわかる。

「GITAIは2040年には世界的な宇宙ロケット開発企業と対等なパートナーとして、月や火星に都市を建設したり、宇宙コロニーを建設したりする、安価で安全な労働力を提供しています。彼らが輸送手段を提供し、我々が作業手段を提供します。彼らが輸送コストを下げ、我々が作業コストを下げます。」

宇宙の最重要課題の1つであるコストについて言及している点が素晴らしい。

また、GITAIは、宇宙ステーション船内外や月面基地開発における汎用的な作業を行う半自律・半遠隔の双腕ヒューマノイドロボット「G1」や特定の作業を行う半自律・半遠隔のロボット「S1」、宇宙で作業するロボットを地上から遠隔操作する操縦システム「H1」というプロダクトも展開している。

  • 宇宙用汎用型作業ロボット G1(出典:GITAI)

筆者はこれらのプロダクトの詳細も紹介したいが、紙面にも限りがあるので、気持ちをグッと抑えて今回は月面作業用ロボットローバーにフォーカスさせていただく。

月面作業用ロボットローバーのプロトタイプ1号機が公開!

2021年7月26日、GITAIから興味深いプレスリリースがあった。タイトルは「GITAI、月面作業用ロボットローバーの開発に着手、プロトタイプ1号機を公開」というものだ。

GITAIも月面へ参入するのだ。この月面作業用ロボットローバーは、月面で探査、採掘、点検、保守運用、宇宙組み立てなどの汎用的な作業が可能。安価で安全なロボットを開発するという。そして、2025年中の月面実証を目指しているという。

今回は、プロトタイプ1号機が公開されている。4つの車輪と1本のロボットアーム、車体の前方には、センサ、カメラらしきものが確認できる。

  • ロボットローバー

    GITAIの月面作業用ロボットローバー プロトタイプ1号機(出典:GITAI)

ぜひ、以下の動画をご覧いただきたい。

月面作業用ロボットローバー プロトタイプ1号機の動画(出典:GITAI)

3Dマップの生成の様子、ロボットアームのスクリューでマイニングする様子、ロボットアームのツールを変更する様子、サンプルを採取する様子などが映像に写されている。また、ローバーの安定した走行性能、アジリティーの高さ、強固なロバスト性も確認できる。

いかがだっただろうか。この月面作業用ロボットローバーの開発の話題以外にも、GITAIは2021年7月30日、経済産業省から宇宙船外汎用作業ロボットアーム・ハンド技術開発を受託している。

このニュースは別の機会に話題にさせていただくとして、GITAIが技術面でもビジネス面でも安定感のある無類の宇宙ベンチャー企業だということがお分かりいただけたら幸いだ。