ユニークな取り組みの数々で、「働きがいのある会社」国内第一位に選ばれたAcroquest Technology。前編に引き続き、副社長の新免玲子氏と、組織価値経営部マネージャの鈴木達夫氏にお話を伺った。
成果を生み出す万能ノート
――お二人が使ってらっしゃるノートは少し変わったつくりになっていますが、市販のものなのでしょうか?
新免:これは全社員が使っている当社のオリジナルノートです。これも面白いんですよ。予定と実績を書く欄があって、「今日は何をするの?」「この予定は1時間だったのに、なぜ実際は3時間もかかったの?」と、ノートを見ながら上司と話すんです。
――業務報告をより密にできるわけですね。
鈴木:特に新人の頃は、いろいろな理由で仕事が遅れがちになりますが、本人はなぜ遅れたのか気付くことがなかなかできません。上司に確認してもらうことで、「ああ、こういう風に仕事をしていくんだ」と、分かってもらうためのツールです。
新免:他には、メールの返信など、本人がおろそかにしがちなタスクを毎日チェックする欄があります。単純に「頑張りました」と言われるよりも、これをさっと出して「きちんとやっています」と言われた方が私たちも分かりやすいですし、本人も、ちょっとした成功体験が積み重なっていることを実感できると思います。
――この「AcroNote」はどうやってできたんですか?
新免:もともとA4の紙で新人の進捗管理をしていたんです。東大卒の社員が毎年入ってきてくれたんですが、頭が良いのに仕事が遅い。なぜだろうと思って、紙に予定と実績を必ず書くようにさせていました。それが続いていくうちに、原因分析が良くでき対策もとれるようになりました。また、毎日印刷するのは無駄だよね、と一カ月をまとめたノートをつくることになりました。ノートも改良を重ねていて、今は第三版を使っています。
――システム開発会社である御社が、パソコンやスマホではなく手書きのノートを使っていることが面白いと感じました。
鈴木:Googleカレンダーで良いじゃないかという意見もあったんですが、それだとコミュニケーションが取れないんです。膝を突き合わせてやる方が、お互いのために良いという考えで、わざとノートにしています。
新免:自分は部下のハンドリングが下手だなと思う人には、ぜひ使っていただきたいノートです。部下につけてもらって、「どれどれ、持ってきてごらん」と毎朝毎夕やると、その人のことが分かってきます。例えば「企画系は弱いけど、行動は早いんだな」など、その人の癖を理解することで、指摘しやすく、褒めてあげやすくなります。
また、毎日必死で仕事をやっていると、意外と自分が何をやってきたのか覚えていないものです。これを見返せば、自分が何をしたのか全て記録されています。このノートの厚みが、自分の財産になるわけです。経験を積んできたことが実感できるノートだと思います。
人生を充足させる職場づくりへ
――誕生日に花を贈る「花一輪」や、全社員参加の「MA」、そして上司と部下の業務確認を円滑にする「AcroNote」など、お話を伺っていると、コミュニケーションを取るための”場”が随所に仕掛けられていることを感じます。
新免:確かにその通りですね。大事なことは、コミュニケーションを怖れてはいけないということです。新人が暗い顔をしていて、「あなたの人生、それで楽しいの?」と言ったことがあるんですよ。その新人はずっとその言葉を覚えていて、忘年会のときに「そう言われて、自分は考え方が前向きに変わりました」と、「ここしみ賞(心にしみた一言で賞)」を贈ってくれました。
自分の子どもが暗い顔をして働いていたら嫌じゃないですか。感謝の念とともに、親が子どもに言うようなことを言っていると思います。
――「働きがいのある会社」でランキング1位を獲得した御社ですが、今後はどういった展望を考えてらっしゃるのですか?
新免:昔は「元気が出る職場」を目指していましたが、今はそれを通り越して「精神的な充足に満ちた会社」を試行錯誤しています。家より会社にいる時間の方が長いわけですから、会社で働いているということは、その人の人生がここにあるということです。だからこそ会社としても、こころの充足や癒やし、落ち着きに満ちたものを提供したい、それが今からのステージです。