ナンバーポータビリティ制度の導入前から激しい戦いを繰り広げているケータイ各社だが、その結果として、数々のサービス、コンテンツが生み出されている。そのスピードがあまりにも早いため、新サービスが始まったことすら気付いていない人も少なくないはずだ。そこで本連載では、魅力的なケータイのサービスをピックアップ。サービス内容や開発意図などを、各社の担当者に詳しく聞いていく。記念すべき第1回は、auが展開する「EZ GREE」についてお届けする。
auとタッグを組みケータイの世界で急成長するGREE
ケータイだけでサービスを展開しているにも関わらず、1年半で600万人のユーザーを集めたモバゲータウンの例を見ても分かるように、ケータイとSNSは非常に相性のいいサービスだ。最近では、1,000万人のユーザーを抱える最大手SNSのmixiも、ケータイへの対応を強化。モバゲータウン同様、アバターを導入する可能性を示唆するなど、ケータイのユーザーを取り込もうとしている様子が伺える。
そのような状況の中、mixiよりも古くからPCの世界でSNSを展開していたGREEも、モバイル機能にターゲットをシフトすることで急激にユーザー数を伸ばし、先行するSNSを追い上げている。8月にはPC版、ケータイ版を合計した会員数が200万人を突破。SNSの3大勢力の一翼を担う規模になりつつある。
GREEがケータイに注力するきっかけとなったのが、auと共に始めた「EZ GREE」だ。2006年の11月にオープンしたEZ GREEは、開始1週間で10万人の会員を獲得するなど、GREEが躍進する大きな契機となった。その後、GREEは2月にドコモの、8月にはソフトバンクの公式サイトとなり、さらに規模を拡大している。KDDIでは、auオークションやauショッピングモールのように、auとしてコンテンツを提供するという取り組みを、以前から積極的に行っている。
KDDIでEZ GREEを担当するコンテンツ・メディア本部 ポータルビジネス部の江幡智広氏は「PCで盛り上がっているサービスをauでやるとどうなるのか、という試みは、検索エンジンの導入やブログでも行っていました。SNSもその流れのなかにあります」と話す。
今回の話を伺った、(左から)KDDI コンテンツ・メディア本部ポータルビジネス部 開発グループリーダーの江幡智広氏、同グループの上江洲雅人氏、同グループの芝純一郎氏 |
ケータイに特化した大幅なテイスト変更が当たる
江幡氏によると、EZ GREEでは「当初からPC版にある機能はほとんど使えるようにしていました」という。日記への動画のアップロードなど、いまだにmixiモバイル上では対応していないような機能ですら、EZ GREEはオープン当初から対応していた。
auのブランドである「EZ」を冠するからには、中途半端なサービスは投入できない。ケータイ向けのEZ GREEをオープンする際も「サイトのデザインだけでなく、招待制から登録制に切り替えるなど、サービスを大幅に変えています」(江幡氏)という。実際、PC版のGREEに登録したユーザーが、ケータイで初めてGREEにアクセスすると、驚くほどテイストの違うサービスであることに気が付くはずだ。
PC版のGREEとは大幅にテイストが異なる楽しげな雰囲気。着せ替えすることで、トップページの雰囲気を自分好みのものに変えることも可能だ |
ケータイ版のGREEにはアバターも用意されており、自分の姿を購入したパーツでカスタマイズできる。ペットも飼うことができるなど、リアルの世界に近いPC版のGREEに対し、ケータイ版はバーチャルな要素が非常に強い。
江幡氏が「GREEのなかでぐるぐる回れる」というように、EZ GREEのサービスは実に多彩。人気ゲームの「釣り★スタ」などの他にも、地域情報の掲示板「グリ街」、Q&Aコーナーの「グリキュー」、GREE上で飼う仮想ペットの「クリノッペ」、デコレーションメールの素材をダウンロードできる「グリデコ」、占いを楽しめる「グリ占い」、Wikipediaの情報を検索できる「グリ辞書」など、多数のコンテンツを取り揃えている。
また、それらが有機的に連携しているのも特徴だ。例えば、グリ占いの結果は日記に転載できるし、「グリ辞書」ではヒットした情報と一緒に関連するコミュニティが表示される。
GREE上に「クリノッペ」というペットを飼うことができたり(左)、占いを楽しんだりと、GREEの楽しみ方の幅も広い |
「100万人を超えたところで、GREEは村的なコミュニティから街へと変わっていきました。釣りに興じる人がいてもいいですし、アバターに興味がある人がいてもいい。自分に合った使い方をしてほしいですね」(KDDIコンテンツ・メディア本部 ポータルビジネス部 上江洲雅人氏)というように、GREEは、日記やコミュニティといった、単機能的なSNSを超えた使い方を許容しているのだ。
では、EZ GREEでオススメのコンテンツはどのようなものか? 次回はEZ GREEのヒットコンテンツである「釣り★スタ」やauならではの機能を紹介していく。