空気清浄機を選ぶポイントはどこか。風量は、空気清浄機の性能の一部を示す目安ではあるが、それだけでは実際の性能を知ることはできない。

エアコンの場合、10畳用だと2.8kW、14畳用だと4.0kWといったように、冷房能力が公開されている(もちろん暖房能力も公開されている)。消費電力やエネルギー消費高率(COP)も公開されているので、そのエアコンがどのくらいの能力を持っているのか、そして、その能力を発揮するのにどれだけ電力を必要とするのかを手軽に知ることができる。

エアコンの場合、ダイレクトな情報表示で分かりやすい

一方、空気清浄機ではその能力、つまり集塵能力がダイレクトに公開されていることは少ない。公開されているのは「適用床面積」という値だ。適用床面積は、メーカーの独自基準の値ではない。日本電機工業会規格の「JEM1467」に基づいて測定された集塵能力から導き出されたものだ。

適用床面積から空気清浄機の能力を求める

JEM1467の付属書Cに規定されている集塵能力の測定方法は、簡単に書くと以下のようなものだ。

まず、測定ボックスの中でタバコ5本を燃焼させる。空気を攪拌し、粉塵の濃度を一定にする。測定ボックス内の粉塵の濃度が10分の1になるまで空気清浄機を運転する。運転終了時の粉塵濃度を運転開始時の粉塵濃度で割ったものの自然対数から、その間の自然減衰分の自然対数を引き、それを「測定ボックスの容積/かかった時間」で掛けたものに「-1」を掛ける。こうして導き出されたものが集塵能力となる。

言葉で説明しても、いまひとつイメージがつかみにくいと思うので、自然減衰分を無視して単純化した例をあげてみよう。

例えば、広さ8畳で高さ2.4mの部屋の体積は、1畳を1.65m2とした場合、31.68m3だ。濃度が10分の1になるまで空気清浄機を動かしているので、運転終了時の粉塵濃度を運転開始時の粉塵濃度で割ると「0.1」になる。0.1の自然対数は約「-2.3」だ。31.68m3を動作時間の20分で割ったものに「-2.3」を掛けて、さらに「-1」を掛けると、約「3.64」になる。これがこの空気清浄機の集塵能力になる。単位はm3/mだ。

適用床面積は、「7.7×集塵能力/1.65」とされており、この空気清浄機の場合、約17畳ということになる(実際には、集塵能力から自然減衰分を引く必要があるので、これよりも低い値となる)。

この逆の計算をすれば、適用床面積から、その空気清浄機の性能を知ることができる。適用床面積が約12畳の空気清浄機は、「12*1.65/7.7」で、約2.57m3/mの集塵能力を持つことになる。

適用床面積がポイント

家庭で使う場合は動作音が大きなポイント

適用床面積、つまり集塵能力が高ければ、その空気清浄機は高性能だといえる。しかし、適用床面積が大きい空気清浄機は風量も大きい。つまり、動作音も大きくなる。リビングルームでは、それほど気にならなくても、寝室などで使用する場合には、大きな音は困るという人も多いのではないだろうか。

しかし、これはあくまでもフルパワーで動かした場合の話だ。例えば、パナソニックの「F-VXJ90」は適用床面積40畳のモデルだ。ターボモードでの動作音は55dBだが、静音モードでの動作音は18dBでしかない。

一方、同じパナソニックがパーソナル向けに発売している「F-PDJ30」の場合、ターボモードでの動作音は44/45dBとF-VXJ90よりも小さいが、静音モードでの動作音は20dBで、むしろF-VXJ90よりも大きくなっている。

適用床面積が小さいパーソナル向けのモデルは、空気清浄機としては安価なモデルだ。逆に適用床面積の大きなモデルは、空気清浄機としてはハイグレードなモデルということになる。すべてのメーカーの製品がそうだとは断言できないが、ハイグレードなモデルのほうが、より騒音対策が行われている傾向が強い。

大型モデルの静音運転の場合の動作音は、パーソナル向けモデルよりも小さいことが多い

次回に続く