当コラムは事前に担当から、ネタ候補が数点送られてくるのだが、その中に「実写化 映画の是非」というテーマが入っていた。

これは、合法的に「映画デビルマン」の話をするビッグチャンスである。終身雇用オワコン、年金終了のお知らせ、など、世間がもっと関心を寄せているニュースがあることは百も承知だが、それどころではない。

というわけで今回は実写化映画についてだ。

繰り返される原作ファンの失望

まず実写化とは、漫画やゲームアニメ等、二次元の原作を元にそれを三次元の役者が演じることである。二次元を三次元化することに関しては、常に一定数「否定派」が存在する。

先日、人気漫画「かぐや様は告らせたい」の実写化が発表されたが、原作ファンから、かなり否定の声が挙がっているという。実写化が批判される要因はまず「原作とかけ離れている」という点が挙げられる。

そもそも二次元の物を三次元にする時点で、ある程度無理が生じるものだ。本当に原作に忠実にしようと思ったら、人間の奥行をなくすことから始めなくてはいけない。この時点で役者は死んでしまう。

絵柄が、目が顔の半分以上ある、頭髪が自然界にない色をいているなど「二次元の良さ」を生かしたものであればあるほど、原作と実写の乖離が激しくなる。さらに「似せる努力すら感じられない」ものになると、ますます原作ファンは拒否反応を示してしまうのだ。

同じ実写化でもドラマ版「きのう何食べた」は、私の知る限りではかなり評判が良いように思える。評判が良い理由はやはり「原作に忠実」という点が大きいようだ。

またビジュアルだけではなく、実写化となるとストーリーも変えられている場合が多い。

実写化映画には、原作が50巻以上出ているもの、まだ未完のものなども珍しくない。それを二時間の映画にしようと思ったら、ストーリー改変は不可避であり、中には原作にはない「映画版完全オリジナルストーリー」で公開されるものもある。

また原作には存在しない「実写版オリジナルキャラ」が登場することもある。さらに、このオリジナルキャラと、原作には全くなかった「恋愛要素」が追加されることすらある。

この時点で、原作ファンは怒り過ぎて逆に解脱してしまう。

つまり、実写化に対して、否定派のほとんどが「原作が好きな人」なのである。原作が好きであればあるほど、そのイメージが壊されてしまう可能性がある実写化に「二次元のままで良いじゃないか」「X軸を追加する必要性がどこにあるのか」と感じてしまうのである。

実写化されるには理由がある

このように、漫画などの実写化が発表されると、大なり小なり「やめてくれ」の声が挙がる。しかし、実写化は加山雄三がブラックジャックをやっていた時代から、なくならないし、むしろ増加傾向にある。

何故かというと、何だかんだ言って、完全オリジナルの映画より、漫画原作の映画化は良くも悪くも「話題性」があり、客を呼びやすいそうだ。確かに、否定派ももっと否定するために見に行く可能性は大いにある。また原作者に払う著作権使用料が、意外なほど安いという理由もあるそうだ。

実写化というのは必ず原作者がOKを出しているものである。中には、実写化の話は山ほど来ているが、原作者がOKを出さないから、実写化されないものもあるのだ。前述の「きのう何食べた」が人気漫画でありながら、今まで実写化されなかったのは企画段階で「料理部分をカット」など、原作者的に納得できない話が多かったから、という話もある。

もちろん、気軽にOKしたら思いもよらないものが出来上がってしまった、という事は多いにあるだろうが、どんな原作からかけ離れたものでも一応「原作者承知の上」なのは確かなのである。

原作者が己の作品の実写化に対しどう考えているか、というと、当然作家にもよるだろうがかぐや様の作者は「映画から原作に興味を持ってくれる人もいるはずだ」と実写化に対しポジティブな意見を表明している。確かに私もその昔、原作の方を知らないまま「映画ピンポン」を見て、そのまま原作漫画を全巻揃えた。実写化が原作に利益をもたらす可能性は十分にあるのだ。

実写化はデーモンになっちまいかねない「賭け」だ

だが逆に、原作ファンが増えると期待してOKを出して完成したものが、「伝説のクソ映画」として歴史に名を刻んでしまう、というリスクはもちろんある。

それが冒頭に言った「映画デビルマン」だ。

実写化に対しファンが否定意見を出すのは「デビルマンの再来」を恐れているから、という理由は大いにあり得る。それは恐れて当たり前だ。過去あまたの実写化クソ映画の存在が、今日の実写化に対する根強い不信感につながっている可能性はある。

映画と漫画は別物と言っても、自分の好きな漫画が原作の映画が、ことあるごとに「クソ映画代表」として名前が挙がるのは、原作ファンとしては辛い物があるだろう。

このように、メリットもあればデメリットもある、まさに「賭け」とも言えるのが「実写化」なのである。

あと、映画デビルマンは個人的に一周回って「成功作品」だと私は思っているので、ぜひ見てほしい。