先日別の記事で「STAP細胞」について書いた。

今でも騒動自体は覚えてはいるのだが、STAP細胞が何なのかは全く覚えてないし、多分当時も理解していなかった。

何に使うか不明だが何故か冷蔵庫にずっと存在した調味料が突然なくなっても料理に支障がないように、今思えば何なのかわからん細胞の有無などそこまで気にする必要はなかったような気もする。

だが当時我々はその謎細胞があるのかないのかに異常な関心を持ち、もっと言うならその研究の中心人物とされた女性研究員が嘘をついているかどうかばかり気にしていた。

もし捏造であったならそれ自体は悪いことである。

しかし、その分野では珍しい比較的若いリケジョを異様に持て囃し、いざ研究が怪しいとなったら、彼女1人で仕組んだことのように手の平を返す様は、たった10年前のことと思えぬほど恥ずかしいムーブだったようにも思える。

故に、何かやったかどうかは置いておいて、あの騒がれ方に関してはかわいそうだと思っていたのだが、それをぶち壊してくれたのがいつもの「編集者」という存在である。

彼女はその後自叙伝のようなものを出版しており、それが私と取引のある出版社から出て来たため、何故か担当編集が「良ければどうぞ」とその本を送ってきたのである。

それまで私が「あの細胞とこの研究者に興味がある」などと言ったことは一度もない。

だが何故か突然送ってきて「すごく売れていてすでに10万部突破です」とだけ教えてくれた。

編集者にこの細胞と研究者に興味があると言ったことはないが「売れてる本とその作家が嫌い」という話だけは何度もしてきたはずである。

それを踏まえて「良ければ」送って来たというならあまりにも悪すぎる。

部数を聞いた時点で読む気をなくしたので、内容は未だに知らない、もし例の事件に関する釈明が書かれていたなら、彼女が汚名を返上する機会すら奪っている、誰にとっても良くないことが起こっている。

ちなみにその本は最終的に26万部突破したそうで、言うまでもなく私が出したどの本よりも売れているし、むしろ私が今まで出した本を累計しても勝てるかどうか怪しい。

そんな経緯があるためイマイチ同情しづらい存在になってしまったが、こうやってよく知らない奴から敵意を向けられたストレスを考えれば本ぐらい売れないとやっていられないだろう。

足らぬ足らぬはシンプルにお金が足りぬ、研究費不足の解消遠く

  • まさに「あの日」を思い出す出来事ですね…

    まさに「あの日」を思い出す出来事ですね…

何でそんなことを思い出したのかというと、今年「制御性T細胞」研究の功績を認められ、大阪大学の教授がノーベル医学生理学賞を受賞したというニュースを聞いたからだ。

この「制御性T細胞」は受賞前から人気漫画「はたらく細胞」に擬人化した姿で登場していたようで、受賞に際したお祝いのイラストがSNSでバズり、より注目されていた。

はたらく細胞は26万部どころではなく売れている作品であり、制御性T細胞と聞けばSTAP細胞を思い出し、同時に自分より売れている本たちのことを思い出すという、まさに細胞が細胞を呼ぶ感じの実写デビルマン効果で嫌な気分になっていくのだが、細胞に関する書籍が好景気なのと対照的に、肝心の細胞の研究は常に不景気とも聞く。

ノーベル賞を受賞した細胞と言えば「iPS細胞」も記憶に新しいが、受賞者である山中教授も研究費不足を再三訴えている。

ノーベル賞をとっても金が集まらないとなれば、もはや何をすれば金が集まるのか皆目見当もつかなくなってくる。

だがイマイチ興味も金も集まらない分野に注目を集める方法として古くから用いられてきたのが、それこそ漫画などのコンテンツだ。

正直、研究内容を説明されても、難しすぎて結局それが何になるのか一般人にはわかりづらいところがある。それを魅力的なキャラとして擬人化し漫画でわかりやすくすることで、多くの人間が興味を持つきっかけとなり、集金も捗るようになったというパターンも多い。

そういう意味ではたらく細胞に「制御性T細胞」が先んじて登場していたのは良い効果だったと言える。

もしかしたらSTAP細胞も、まずは研究に関心を持ってもらうための戦略だったのかもしれない。多分違うだろうが、そうだったとしてもそれに生身の人間を使うのは危険でしかない。

何かをPRするのに女性キャラクターを使ったことにより炎上してしまうことも多いが、本物の女性をマスコットにするよりはマシということをSTAP細胞は教えてくれた。