元旦の地震を皮切りに、日本は暗い出来事続きである、どこかに明るいニュースはないものだろうか。

そう言いながら立ち上げているのが「X」な時点で「探す気がない」と見なされても仕方がないか、Xにも明るいニュースがないわけではない。

ただXで明るいニュースを探すのは本屋で自著を探すに等しい。

探せばあることもあるが、見つける前に他の「アニメ化」や「100万部突破」など景気が良いことが書かれた本が100冊ぐらい視界に入って気分を害するのと同じように、Xで明るいニュースを一つ探す道中で5億個嫌なニュースを見ることになるので非効率なのだ。

唯一の希望が「猫ミーム」であったが、それですらTikTokなどは「家族や恋人との日常」などほのぼの系が多いのに対し、Xは「ブラック企業に入って適応障害になった話」など、暗いテーマで何の救いもない終わり方をするものが多いという。

例えおキャット様の姿であろうとも、人間が幸せな日常を送る様に興味などない、というX民たちの強い意志を感じるし、逆にその一員であることが誇りにさえ思えて来た。

ワイドショーが世界情勢より個人の不倫ニュースに尺を取るのも、そちらに視聴者のニーズがあるからだ。

Xが暗いニュースや誰でも6秒以内に怒れるアンガーマネージメントクラッシャーニュースに溢れているのも、中途半端な明るいニュースより、そちらの方が確実に「伸びる」からだろう。

しかし、ここまで暗いニュースばかりなのもあんまりだ、ということで、編集部から提示された最近の明るいニュース代表が「JAXAの小型無人探査機SLIMの月面着陸成功」である。

H3ロケットの成功も明るいニュースでした(宇宙感)

SLIMが月面着陸に成功したのは1月20日のことだ。

神に誓って私は今年に入ってから1日たりともXの前から退いたことはないのだが、私のTLそしておすすめ欄に「SLIM」の名前が挙がってきたことは皆無である。

ちなみに今現在の私のXおススメ欄は「脱税者に納税を促される怒り」を中心とした怒り全般が99%、残り1%が「刀剣乱舞のバレンタインに対する解釈への疑問」となっている。

私の関心を反映した結果だとは思うが、やはりXは明るいニュースを仕入れる場所として適していない、世の中嫌なことばかりだと感じている人は、一旦Xやネットを閉じて見た方がいい。そうすれば意外と目の前でSLIMが月面着陸していたりするものだ。

  • このネタをねじ込んできた担当編集者は、小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還でも涙を流していたとかなんとか

    このネタをねじ込んできた担当編集者は、小惑星探査機「はやぶさ」の地球帰還でも涙を流していたとかなんとか

だが正直、SLIMの月面着陸を明るいニュースと言われてピンとこなかったのも事実である。

私が、地球以前に部屋からも出たくないタイプなので、「宇宙」にあまり夢を持っていないせいもあるだろうが、「友作も月にいくレベル」の現代である。

月面着陸と聞いても今更と感じる人も多いだろうし、実際月面着陸に成功したのは世界で5番目であり、しかも無人である。

このぐらいの吉報では私のTLやおすすめ欄というドブ川を渡り切れそうにない。

今のX川を渡り切れる明るいニュースは成長して戻って来る鮭の稚魚より少ないのである。

そんなわけで、少なくとも私の目にはあまり触れなかったSLIMのニュースだが、改めて「SLIMのここがスゴイ」という解説記事が発表され、ようやく私のTLにもようやくその話題がやってきた。

…などということはなく、相変わらず私のおすすめ欄には何かに激怒している人しかいないので、自らググって記事を見つけた。

SLIMの月面着陸の何がスゴイのかというとまずその「精度」であり、予定地からたった「55メートル」の誤差で着陸したようだ。

他の乗り物で言えばかなりの誤差であり、もし私が車の駐車を55メートル誤ったら隣家を貫通してしまっている。

しかし、時速100キロ程度の車に対し、着陸船は6400キロものスピードが出ているためその分コントロールが難しく、東京を着陸予定地としつつも、関東平野のどこかに着陸すれば成功ぐらいの大きな誤差は当たり前だったという。

それに比べればSLIMの55メートルは「ピンポイントで着地」と言っても過言ではない精度らしい。

確かにハチ公前で待ち合わせしていた相手から待ち合わせ時刻に「今茨城に入った」とLINEが来たら、その瞬間に帰宅を決定するだろう。

しかし「あと55メートルで着く」と言われたら、そのぐらいは誤差と思って待つだろう、つまり「話が変わって来る」レベルの快挙ということだ。

なぜSLIMの着地制度が高いかというと、「月面マップ」との照合で位置を測ったからだそうで、これには月周回衛星「かぐや」による月面データが役にたったそうだ。

またSLIMは着地方法自体も特殊で、他の着陸船が三脚のような脚を出して着陸するのに対し、SLIMは5つの半球状のクッションで着地したらしい。

わかりやすい出来事が暗い話ばかりだし、納税は国民の義務だ

全く知らない競技の選手に「5メートル地点から28点とったし3人退場させた」と言われても、それがすごいのかどうかわからないように、SLIMのすごさも日頃から宇宙業界に精通していないと、そのすごさを実感できないが、とにかくすごいことらしい。

暗いニュースや腹立だしい話題ばかり目につくのは、そういう出来事が多いというのもあるが「そういう話題しか理解できない」というのもあるかもしれない。

宇宙知識がなかったことにより、SLIMのニュースをキャッチできなかったように、物事に関する知識と関心がなさすぎて、明るいニュースを明るいと認識することすらできず、唯一理解ができるのが芸能人が家庭外性交したという話題のみになっているのかもしれない。

「何故日本人は政治などの巨悪に怒らず毒マフィンとかに1日中怒っているんだ」と訝しんでいる人がいたが、政治に怒るにしても、政治に対する知識や関心が必要であり、それよりもわかりやすいマフィンに怒りが向いてしまう場合もあるのだ。

しかし、今回の裏金については割と万人が怒っている。世間が確定申告の真っ最中に脱税で開き直るというタイミングも絶妙だ。

情報が溢れる世の中で「興味がない層に届ける」というのは大変なことである。

マーケティングなら大成功であり、もしかしたらこれは燃えることで国民の政治への関心を高め投票率を高めようという、新しい炎上商法なのかもしれない。