「ミッキーマウスの著作権が切れたらしい」

この情報は私のXのTLでも散見された。

しかし待ってたぜェ!! この”瞬間”(とき)をよォ!!と、体を斜め45度に傾けたミッキーがツルハシで道路を削りながら爆走する作品などはついぞ見かけていない。

どうせ劇物に手を出すなら俺は戦犯ちゃんで行くぜと思っている人間の方が多いのかもしれないが、おそらくみんな「慎重」になっているのではないかと思う。

日本は著作権に対する感覚がまた未発達な方だが、それでも「ミッキーやディズニーには手を出すな」という感覚だけは叩きこまれており、ディズニーランドに関しては「夢の国」や「ネズミーランド」、ミッキーは「あのネズミ」などの隠語で語られてきたほど恐れられている。

その後ピカチューという新たな世界的ネズミが生まれたことでややこしくなってしまったが、こちらは「光るネズミ」ということで事なきを得ている。「ゲーミングミッキー」とかが登場しなくて本当に良かった。

実在の施設名や人名をそのまま出してディス含めたネタにしまくる「翔んで埼玉2」でさえ、ディズニーランドだけは名前を伏せており、あらためてアンタッチャブルな存在であると印象付けていた。

多くの人が大切に育ててきたミッキーマウスの重み

そんな厳しいディズニーのミッキーを、Xごときに流れる「ミッキー著作権切れたってよ」という情報を鵜呑みにしてすぐネタにする、というのはいくら迂闊なX民でもやらないということなのかもしれない。

しかし、これが著作物に対する正しい対応であり、日本が緩すぎると言われればそれまでだ。

だが、ディズニーがミッキーマウスというキャラクターに対して意識が非常に高いことは事実である。

  • 丸を3個描いたら、それはもうミッキーマウスっぽいなにか

    丸を3個描いたら、それはもうミッキーマウスっぽいなにか

今から約5年前、ミッキーマウスの90周年を記念し、118名の漫画家がミッキーマウスを描くという画集が発売され、実は私も1枚イラストを寄稿させてもらった。

私に声がかかっている時点で人選に全く力が入っていないと思われそうだが、ちゃんと誰もが知っている作家も多数参加しているので安心してほしい。

いわゆる公式公認の二次創作であり、お怒りと訴訟を受けずに堂々とミッキーを描ける機会など二度とないだろうと思い快諾し、いつも通り(‘ω`)顔のミッキーマウスのラフを描いて提出した。

すると先方から、意訳すると「これはミッキーマウスではないからダメ」というリテイクがきた。

先に言っておくが、私はこの仕事に何の不満もない。原稿料も良かったし、シーのチケットももらったし、原稿料も良かった。そして原稿料も良かった。

世の中には「この原稿料でそこまで注文をつけるか」という仕事がいくらでもある。

つまり、ミッキーマウスの造形を崩さない原作に忠実なミッキーを描く、もしくはミッキーそのものを描かずに、自分のキャラクターにミッキーを匂わせるアイテムを持たせるかの二択ということだ。

その結果、約半数の作家が、自身のキャラクターにミッキーの耳を装着させるという、ディズニーランドに来て必要以上に浮かれる自キャラのイラストを寄稿していたが、逆に言えば半分はミッキーを崩さずに自分のカラーを出すことに挑戦しており、ちゃんとそれに成功しているのだ。

かといってミッキー耳勢に見どころがないわけではなく、全て非常に力の入った一枚絵であり、絶対お前はディズニーランドに行って耳をつけないだろうというキャラのミッキーコスが見られる。

個人的には、島耕作&大町久美子のミッキー&ミニーがベストカップリング賞だ。

例え二次創作は許可しても、ミッキーというキャラクターの造形とイメージを著しく崩すことは許さんという強い意志を感じ、ミッキーマウスがいかに大切にされているかがよくわかった。

よって私も著作権が切れたと聞いてすぐに(‘ω`)顔のミッキーを描こうとは思えないのである。

ミッキーを御する力量があるなら、オリジナルでも勝負できそうな

ちなみに、厳密に言えば著作権が切れたのは「蒸気船ウィリー」であり、おのずとそれに出演していたオリジナル版のミッキー&ミニーの著作が切れたということである。

だがミッキー&ミニーには「後期バージョン」というのがあり、そちらの権利はまだ生きているため、不用意にミッキーを使うと「これはどう見ても後期Verミッキー」と判断され訴訟に突入する恐れもある。

このようにまだ安易に手を出すとⅢ度以上の熱傷は避けられないイメージがあるため、いくら蒸気船ウィリーのミッキーはパブリックドメインになったと言われても慎重にならざるをえない。

そもそも、ミッキー自体が未だに公式上で現役で活躍しているため、現時点でそれを二次使用したコンテンツがウケるのかも不明である。

ただ、ローカル会報誌にミッキーと思しきキャラを描くなど、小規模な部分での使用はしやすくなった、と言えるかもしれない。

また先んじて著作が切れたプー氏は、切れるや否やホラー映画が作成されるなど、今までのイメージを粉砕する展開がされているので、ミッキーも今後そういった使われ方をする可能性もある。

しかし、ミッキーについてはすでに「名前を口にしてはならないあの方」であり、「恐ろしいもの」としてのイメージがついてしまっているため、ホラー起用に意外性がない、本物以上に怖いミッキーなど作れない、という問題がある。

使っていいよと言われたところで、そもそもミッキーを使いこなすこと自体が難しいのである。