「ふーん、で、君は歴史上の人物で誰が好きなの?」

そう問われたら瞬時に「土方歳三ですね」と答える。むしろ相手の「?」にかぶせるぐらいの勢いで言わなければいけない。「フォカヌポゥ」とか言っている間に、相手が危機を察して逃走し、取り逃がしたら大変である。

逆にまず、麻酔銃などで四肢の自由を奪ってから答えるという手もあるが、警察が機能している国ではおススメできない。

しかし、瞬時に推し歴史上の人物を答えられるクラスタを殺す質問というのがある。

それが「諭吉とどっちが好き?」である。

ちなみにこれは「死ぬのと呼吸をやめるのとどっちにする?」と聞いているようなものなので、人の心があるならばすべき質問ではない。

つまり究極の質問なのだが、ここで答えに窮するようなら、土方さんにも諭吉にも失礼である。

よって私は「結婚するなら諭吉かな?」と考え得る限りもっとも腹の立つ答えと顔で応戦するようにしている。そもそもこんな質問をしてくる輩に手加減はいらない。

ちなみに土方さんに対しては「来世は池田屋の壁のシミ」という感情である。

好きな歴史上の人物と言えば、表向きは、大体織田信長や伊達政宗などが1位を取っている。しかし、日本人の心のベスト10 第一位はダンスフロアーの華やかなハーモニーにそっと包まれている光こと福沢諭吉である。

とりあえずジャスラックさんはこのぐらい勘弁していただけるだろうか。

稀代のモテ男から、桃鉄のあの人へ

このように男女問わず、不動のモテ男であり、どんな恋愛百戦錬磨にすら「諭吉と別れるときが一番泣いた」と言わしめる、一万円札の顔こと「福沢諭吉」だが、ついに本当にお別れの時がやってきた。

正確には2024年ごろから本格的に入れ替えのようだが、すでに新札の製造は始まっており、デザインも公開されている。

そして新しく一万円の男となったのが「渋沢栄一」である。渋沢栄一が何をしたかと聞かれたら答えに窮するが、もはや「一万円札になった人」の一言で十分だろう。

ちなみに去年(2020年)発売されたニンテンドースイッチのボードゲーム「桃太郎電鉄」にも渋沢栄一が助っ人キャラとして登場する。

他の偉人キャラが相手の物件を奪ったり、線路上にクソを発射したりするのに対し、栄一はドストレートに「現ナマをくれる」ため、ごく一部の界隈で「お金配りおじさん」と呼ばれている。

ゲーム内でそういう役割になったのも、おそらく1万円札の顔に決まっていたからだと思われる。実際栄一は「資本主義の父」と呼ばれており、金とは切っても切れない関係だ。

ではこれから、諭吉に代わり栄一と数々の思い出を作りあげていくことになるのか、というと、正直諭吉ほど濃密な関係にはならないと思う。

何故なら日本も電子マネー化が急速に進められており、昔に比べれば紙幣を使うことが激減したからである。

さらに純粋に「万札に縁がない」という事実も加えれば、栄一に触れる機会は諭吉ほど訪れないと思われる。

あまりにも縁がなさ過ぎて「もはや口座が作れない」となれば、その日の賃金を栄一でいただくことになるかもしれないが、その場合は栄一ではなく、梅子、もしくは柴三郎数人にしか会えない可能性もある。

ユニバーサルデザインの新一万円札、感想は?

  • デザインが気に入らないからお札はいらない、という人は少数派と思われます

    デザインが気に入らないからお札はいらない、という人は少数派と思われます

しかし、日本は世界有数の紙フェチ国家である。いくら紙幣を使う機会が減ったからと言って、突然栄一の作画が適当になったりはしない。むしろ偽造を防ぐため、日本の印刷技術の粋を集めた存在が紙幣と言っても良い。

今回大きく変わったのは「壱萬円」が「10000」と表記されるようになった点である。

これは外国人でも読めるようにという「ユニバーサルデザイン」だ。今まで壱萬円になれていたため、最初は面食らうが、思えば今まで1万円を「壱萬円」の文字で判別したことなどない。

常に「諭吉か否か」で判断しており、改めて諭吉の存在感のでかさを思い知る。

ちなみに、紙幣のすみにあるホログラムの角度を変えると栄一が浮かびあがり、わずかに首が動くという、栄一推しに対する過剰なファンサも施されているそうだ。

この紙幣に対する世間の感想は「1億枚ほど欲しい」との意見が大半だったため、評判は上々といえる。ただしそれがデザインに対する感想かどうかは不明である。

日本も電子化が進み、紙を使用する機会は減ってきたが、おそらく日本から紙が消滅することはなく、今後は「コレクターズアイテム」になっていくのではないかと思う。

漫画も、電子が紙のシェアを上回った現在でも「この本は紙で欲しい」という人は多い。

ちなみに集めていた漫画が突然途中から「電子のみ」になるのは、合理化ではなく、紙で出せるほど売れてないからである。

もし紙で欲しいと思う作品があるなら、ぜひ栄一を惜しまず使ってやってほしい。