トータルで見るととても無事とは言えないが、競技中に爆破事件などが起こらなかった、という意味で無事東京オリンピックは閉幕し、現在はパラリンピックが開催されている。

昔であれば、障がい者スポーツは障害に負けずスポーツに取り組む姿勢に意義があるとされ、ニュースもスポーツ欄ではなく社会欄に掲載されるということも多かったようだが、それも今は昔である。

現在では、義足の選手の方がオリンピックよりも良い記録を出すという逆転現象が起こっており、むしろ義足の選手がオリンピックに出られないのはおかしいのではないかという議論も起こっているらしい。

だが、義足選手の記録には本人の実力に加え、義足の技術力もプラスされていると思われ、似たような状況はオリ・パラを分けている現在でも起こっている。

スポーツにおいて「弘法筆を選ばず」というのはもはや平安の発想であり、どこのメーカーのシューズやウェアを使うかで結果が大きく変わるようになってしまった。

その結果、記録を取るかスポンサーへの義理を取るかで監督の顔色が自然界にない色になる、という事態がたびたび起こるようにもなった。

スポンサーも、記録より自社製品の使用を優先させたらケツの穴の拡張が足りない企業だとバッシングされるし、記録を優先させると「多額のスポンサー料を払って他社製品を大々的に宣伝する」というただの慈善団体になってしまう。

過去には「これはチートすぎる」ということで使用を禁止された水着があるなど、技術の向上と多様化により「スポーツマンシップに則り正々堂々とは何か」という「進化しすぎて原点に逆戻り現象」が起きており、このままいけば「公平を期すために選手は全員全裸」という、古代アテネオリンピック式が採用されるのではないだろうか。

なかなかスポーツ扱いが進まない「eスポーツ」

ともかく、すでに障がい者スポーツは完全にスポーツであり、選手はアスリートとして見られている。

その一方で、未だに我が国ではスポーツと見なされていないスポーツもある。

それが「eスポーツ」だ。

「eスポーツ」とは簡単に言えばテレビゲームのことであり、最近ではスポーツの一種として世界的な大会も開かれている。ただ、日本では法律の問題もあり、高額賞金を出す大規模な大会を開きづらいため、ゲームをスポーツと見なしている人はまだ少ない。

確かに、高い技術と戦略が必要という点はスポーツと同じなのだが、どうしてもスポーツと言ったら肉体を使い、肉体が鍛えられるものとのイメージがある。

その点テレビゲームは、指先をメチャクチャ動かすためボケ防止には良いのだが、基本的には座りっぱなしであり、目を悪くする恐れもある。 よって肉体を鍛えるどころか健康を害すおそれがあるものをスポーツと見なすことで、成長期の子どもがゲームばかりやるようになったら大変だという意見もわからないでもない。

しかし、テレビゲーム=運動不足というイメージはある意味正しいがある意味間違っている。何故なら最近は「体を動かすテレビゲーム」も多いからだ。

近年売れたものだと、ニンテンドースイッチの「リングフィットアドベンチャー」、同じくスイッチのソフトの「フィットボクシング」あたりが有名であり、こちらは私が3回で投げ出したことにも定評がある。

そしてゲームである以上は「極める」者も現れる。

「リングフィットRTA」、もはやアスリートの動き

  • eスポーツとスポーツの垣根が完全に壊れた感のある肉体美でした

    eスポーツとスポーツの垣根が完全に壊れた感のある肉体美でした

そんなわけで先日行われたオンラインイベント「RTA in Japan」の最終種目として、この「リングフィットアドベンチャー」のRTAが披露され、大きな話題となったようだ。

まず「RTA」とは何かというと「Real Time Attack」の略であり、簡単に言えばゲームのクリアタイムを競う物であり、ゲームだけではなく何かのタイムを競うことを「○○RTA」と呼ぶようにもなってきている。

最近では映画版100日後に死ぬワニがあまりにも巻きでワニを死なせようとしたので「ワニ殺しRTA」と呼ばれていたのが記憶に新しい。

「RTA in Japan」は様々なゲームのRTAを競うチャリティイベントで、今でもそのアーカイブが閲覧可能ということなので早速見に行ってみた。

まず映し出された選手の様子がおかしい。一言でいうと「マッチョ」である、座りっぱなしでゲームばかりしてきた人間の体ではない。

そして元アナウンサーの解説実況によると選手のプロフィールは「体脂肪率最高3%、ベンチプレスは120kg、腕立て伏せは3分間で120回、逆立ちで50m走れる」で、それに対するコメントは「ここまでの数値はゲーマーとしては一般的ですね」である。

私の知っているゲーマーやオタクのプロフィールと言えば「身長:157センチ 体重:ご想像にお任せします 性別:遺伝子上は女(笑)」が一般的だと思っていたのだが、どうやらそれも平安の発想だったようである。

選手はやおら上着を脱ぎ捨てタンクトップ姿になるのだが、注目すべきはその肉体よりタンクトップが白という点である。

オタクもタンクトップは着るが、何故かあまり白は選ばない。大体黒であり、白を着るとしたらそれはタンクトップではなく「ランニング」である。

選手はゲームが始まるや否や、ゲームを知らない人間には「すごい」ということ以外は何もわからない動きを始めるのだが、肉体的も技術的にもすごいことだけはわかる。

このように、本当にスポーツ選手のような体になってしまうゲーマーもいるため、ゲーム=不健康というイメージは必ずしも正しいものではない。

だが一方で、私のようにひたすら頭も体も使わずソシャゲの脳死周回をして、ガチャに大金を投じる、不健康な上に金もないゲーマーがいるのも事実である。

子どもがプロゲーマーになりたいと言い出したら、頭ごなしに否定してはいけない。まず「どの種類のゲーマーか」を確認し、脳死周回タイプだったら頭ごなしに否定しよう。