また巨星が堕ちた。

森永製菓が「チョコフレーク」の販売終了を発表したのである。チョコフレークとは、その名の通りコーンフレークにチョコがコーティングされた菓子で、1967年から販売されているという。私よりも遥かにパイセンである。

チョコフレークが私にとってどんなポジションの菓子だったかというと、子供の時は「家にあったら嬉しい菓子」だったし、大人になってからも「まんざらでもない」と言ったところだ。

ちなみに「家にあっても大して嬉しくない菓子」は「かりんとう」だった。母親が好きで良く買っていたのだ。一瞬チョコに見えなくもないのがまた憎い。

ロングセラー菓子の「終了」、最大の原因は

チョコフレークのみならず、その前にはカールなど「昭和の子どものテンションを上げていた菓子」が次々と販売終了している。(編集注:カールは関東で販売終了したが、関西では今も販売されている)。そういう時、もはや風物詩と言っていいのが、「オークションサイトなどで、販売終了になった菓子が高値で出品される現象」だ。

我々はそこまでバカで良いのかと思う現象だが、毎回起こるということは毎回買う奴がいるのだろう。確かに、チョコフレークやカールなどがなくなるのは、それらが血肉(主に下腹)になっている昭和の人間としては寂しいものがある。

しかし何故なくなるかというと、「それがないと禁断症状で死ぬ人間がそれほどいなくなった」からだ。わずかに残った禁断症状で死ぬ人間のためにチョコフレークを作るのではもう採算がとれなくなったので、その数人には申し訳ないが死んでいただこうという話である。利益を追求する企業としては当然だ。

そして、その数人以外は、なくなって寂しいとは思っても、実際なくなって何か困るかというと大して困らない。つまり、「なくてもどうとでもなる物」になったから、なくなるだけである。

そもそも、なくなる最大の原因は「俺たちが買わなかった」からだ。よって、「なんでなくなるんだ!」と騒いでいいのは、恒常的にチョコフレークを買い、ソバガラの代わりに枕にチョコフレークを詰めていた人間だけだ。

私も10年近く作家をやってきて「買う人間がいないから終わる」という現象は身をもって何度も体験してきているので、チョコフレークに同情している場合ではない。むしろチョコフレークぐらいのレベルになると、「騒がれた結果ワンチャン(復活)ある」ので、ますます同情できない。

ともかく何かが終わると言うと「なんで」と脊髄反射で言ってしまう我々だが、何かの陰謀ということはなく、ほぼまちがいなく「金にならなくなったから」である。

〇〇離れした若者が張り付いているモノ

しかし、何故チョコフレークは売れなくなったのだろうか。味に関しては、今の子どもが喜ばない、などということはないはずだし、昔の子どもだってまだ喜んで食っている。

その原因は「スマホ」では、という分析がある。最近の若者は小腹が空いた時、菓子など食わずにスマホを舐めているというわけではない。チョコフレークは手の体温でチョコが溶けるので、スマホを操作しながら食うとスマホ画面が汚れるために敬遠されはじめた、というのだ。

そう言われれば、私のスマホ画面は常に汚い。何故こんなにいつも汚いのだろう、と家人に問うたところ「あなたの手がいつも汚いからだ」と言われたことがある。そして私の手がいつも汚いのは、いつも手でなんか食っているからである。

すべてのパズルのピースがそろった、という感じでその時はいたく感動したのだが、原因がわかった後も私のスマホ画面は24時間汚い。「スマホの画面が汚れる」程度のことで、手が汚れる菓子を食うのを止めなかったからだ。

つまり、チョコフレーク販売終了の要因はスマホの普及ではなく、「スマホの画面が汚れるという些末な理由で手が汚れる菓子を食うのをやめる軟弱な精神を持つ者が増えた」ことにある。

スマホが原因とされているのはチョコフレークだけではない。同じく販売終了が決まったガムの「キスミント」に関しても、「レジで並んでいる間スマホを見るようになったため、レジ前のガムを見なくなったから」売れなくなったのだとも言われている、魔王かよというぐらいなんでもスマホのせいだ。

ちなみに、キスミント販売終了の報に、「若者のガム離れ」という見出しを使ったところもあったそうだ。もはや、世の中には「若者の○○離れ」という言葉を聞くと絶頂する人間が一定数いるとしか思えない。

このようにありとあらゆるものから離れているらしい若者が逆に何に張り付いているかというと、やはり「スマホ」がその一つであることは否めない。しかし、スマホが汚れる菓子はチョコフレークだけではない。ポテトチップスなどその典型だが、こちらはまだなくなる様子はない。おそらく手や画面が汚れようと、それが嫌なら箸を使ってでも、ポテチを食いたいと思う人間の方が多いのだろう。

「スマホ画面が汚れてでも食いたい」

それが、今後菓子が生き残る条件なのかもしれない。