本連載では、DX(Digital Transformation/デジタルトランスフォーメーション)実現に向けた基礎的な知識や具体例を紹介していく。第2回は、企業法務に特化したデータ共有などを行うAOS LegalDXを紹介したい。
繰り返しになるが、DXへ至るには、次の3つのステップがある。
- Step 1:デジタル化(デジタイゼーション)
- Step 2:デジタライゼーション
- Step 3:DX(デジタルトランスフォーメーション)
Step 1では、紙ベースのデータをデジタル化することから始まる。スタートラインでありながら、敷居が高いのも事実である。そのあたりを含め紹介したい。
企業法務から求められるもの
AOS LegalDXの紹介の前に、テレワークDataShareについて確認したい(詳しくは、こちらの記事を参照)。テレワークなどで安全にデータ共有を行うための仕組みである。今後も各産業向けのDXソリューションを紹介するが、単純な図式で表すと、
産業DXソリューション=テレワークDataShare+産業別に求められる仕様
となる。したがって、基本的な機能は、上述の記事を参照してほしい。
では、企業法務で求められる要素は何か。いくつか上げると、以下のようになる。
- データが会社にしかない
- チームでデータを共有したい
- ナレッジを蓄積・共有したい
- データのバックアップをとりたい
- ログを管理したい
- 社外の人と安全に共有したい
- データを検索したい
- 業務内容を見える化したい
- 外部監査に対応したい
特に、社外の人とのデータ共有は重要だろう。企業機密のようなデータであっても、社外の弁護士などと共有することはよくある。また、マイナンバーを社労士と共有することも多いだろう。そこには、高い安全性が求められる。そして、法務では契約書をはじめとする膨大な紙ベースのデータが存在する。これが、DX推進の妨げになっていることは自明である。まさに、これらのデジタル化が求められている。
実装された企業法務向けの機能
AOS LegalDXを起動すると、図2のようになる。
個人ドライブ、チームドライブ、コールドドライブの3つがある。このあたりは、テレワークDataShareと同じである。上述のニーズから、AOS LegalDXでは、以下の機能が実装された。
- 判例検索機能
- 知財・特許検索機能
- 契約書詳細検索
ちょっとその機能を見てみよう。図2の上にある[法律検索]をクリックし、検索ワードを入力する。
すると、関連する法令や判例が表示される。
法令・判例データをXML形式にすることで、複数の検索ワードでも高速な検索結果を得ることができる。また、知財・特許検索機能では、知的財産に関する登録情報の検索が行える。
また、検索クエリを活用することで、新たなマーケティング戦略にも活用できるであろう。
契約書詳細検索? 実はデジタル化
AOS LegalDXの特徴的な機能の1つが、契約書詳細検索であろう。まず、アップロードした契約書などに詳細情報を入力する。
この基本情報であるが、取引年月日、締結日、取引金額などである。これは、2022年に改正される電子帳簿保存法に定められている項目となる。
こうして、契約書などを蓄積することで、さまざまな検索が可能となる。
また、この機能には別のメリットも存在する。改正電子帳簿保存法では、さらに、紙ベースであった帳簿や書類がデジタルデータして保存されるよう求めている。その保存・管理、そして共有などでもAOS LegalDXは、効果的といえるだろう。
従来の紙ベースの契約書などは、スキャンなどでPDF化していくことになるであろう。当然、最初は検索するほどのデータ量はないかもしれない。しかし、継続することで、活用価値の高いデータベースと成熟していくだろう。もちろん余裕があれば、過去の紙ベースの契約者や書類も読み込んでいくとよいだろう。
当面は、業務効率化や経費削減が主な効用だろう。しかし、デジタルデータの蓄積と共有が行われることで、新たな知見が見い出される可能性もある。
DXに向けて
多くの企業であれば、営業の業績などは、売上ベースで集計されていることが多いだろう。そして、評価にも使われている。しかし、契約書がデジタル化され、データベース化されれば、営業成績とは、異なる特性を持ったデータ分析が導き出される可能性もある(デジタライゼーションのステップとなる)。
また、電子帳簿保存法の改正についてふれたが、電子印鑑、電子契約、電子署名といった技術も現実のものとなりつつある。これまで、紙ベースであったもののデジタル化が進むであろう。当然のことながら、働き方も大きく変化する。これがDXのゴールではないが、働き方が大きく変化すれば、新たな可能性も十分考えらえる。まずは、その一歩としたい。