前回、使用するパーツを紹介するところまでは終わったので、早速それらパーツをケースに組み込んでいこう。今回は比較的オーソドックスな手順で組み立てて行く。途中、注意が必要な箇所はクローズアップして説明する。

さて、オーソドックスな手順……とは言っても、実際のところ自作PCにはあまり厳密に決まった手順というのは無かったりする。ケースにマザーボードを入れる際にも、例えば内部の広いケースであれば、先にマザーボードを入れ、次にCPUを取り付けることができるし、逆にケース内が狭いのであればCPUを取り付けてからマザーボードを入れた方が楽ということもある。こうした順序の決定は、経験を重ねることでなんとなく読めてくるものだ。ただ、最初はとまどうことも多いだろうから、本連載などを参考に、まずは基本部分をしっかり身に付けておくとよいだろう。

最初はPCケース外装を外す作業。左右の側板を外し、そして可能であれば天板、手間でなければドライブベイなども外し、内部に手を入れやすい状態にしておこう。この状態でまずは電源を組み込む。一般的なケースであればケース上部、今回用意したケースのAntec「NINE HUNDRED AB」であればケース下部に電源ユニット搭載用のスペースがある。電源を固定するのは背面の4カ所のネジだ。電源は「向き」が決まっているので、これに合わせて装着しよう。今回はわかりやすい大きめの手回しネジで止めてみた。4つのネジのうちひとつだけ4隅から外れてたところにあるのが確認できるだろう。なお、電源は主にこの4つのネジのみで固定するため、ネジはゆるみ無く堅く締めるのがベスト。仮組みとしてまずは緩めに、動作を確認できた時点でネジをしっかり締めても良い。

電源ユニットは背面4カ所のネジで固定する

電源のファンが内部を向けば大丈夫

次はマザーボードを装着する前準備に入ろう。まずはバックパネルの装着。一般的なケースにはあらかじめ標準的なバックパネルが装着されているが、多くの場合マザーボードにはそのレイアウトに合わせたバックパネルが同梱されているので、ここで交換しておこう。バックパネルを装着し終えたら次はマザーボード固定ネジ用のスペーサーの装着。マザーボードにはATXサイズであれば9個の固定ネジ用の穴が空いている。マザーボード側の穴の位置を確認しながらケース側のマザーボードベースにあるネジ穴にスペーサーをはめ込み、全部を装着し終えたらマザーボードを乗せ、それぞれネジで固定していく。

マザーボード付属のバックパネルに交換。手前はケース付属のバックパネル。バックパネルははめ込み式だ

マザーボード側の固定ネジ用の穴を、ケース側のスペーサーの位置に合わせる

続いてCPUの装着だが、ここでひとつ注意点。CPU装着作業直前まで、LGA775ソケット用のプラスチックカバーは外さないでおこう。LGA775では、ピンがソケット側にあり、またかなり高密度で配置されている。そのため誤って何かを落下させてしまった時などに簡単にピンが曲がってしまうのだ。CPUの装着は、自作PCにおいて最も注意を要する作業とも言える。さて、LGA775ソケットを見ると、以下に掲載の写真の方向で見て、上下にあたる辺の縁が出っ張っている。この出っ張りをCPU側の切り欠けとあわせることで、安全にCPUを装着できるので覚えておこう。切り欠けで向きをあわせたら、静かにソケット上にCPUを乗せ、金具とレバーを戻しCPUを固定する。

装着作業においてソケットのピンを破損しないためにも、CPU装着の直前までソケットカバーは付けたまま作業しよう

ソケットのピンはかなりの高密度。この写真で、上面下面に出っ張りがあるので確認しておこう

CPUの向きを合わせ、ソケットの出っ張りとCPUの切り欠けを合わせて指でつまみ、慎重にCPUをソケットの上に乗せる

CPU装着に続き、CPUクーラーを装着していこう。CPUをリテールパッケージ版で購入した場合、多くの製品では熱伝導シートが貼られたCPUクーラーが付属するため、別途グリスなどは不要で、そのままCPUクーラーを装着すれば良い。リテール付属のクーラーはプッシュピンタイプなので、クーラー固定用の穴にピンを差し込み、上から押し込むだけで固定が完了する。一方で、CPUクーラーが付属しない場合や、買い足したCPUクーラーに熱伝導シートが貼られていない……といったシチュエーションも自作では良くあることなので、念のため、グリスを塗る際のポイントも紹介しておこう。グリス塗りの基本は「薄く均一に」。少量のグリスをCPU上に押しだし、へらでスキマなく均一にのばしていくのが良いとされる。

グリスは少量。あまり厚く塗ると熱伝導の効果が下がってしまう

へらを使って薄く均一に全面にのばしていく

次はメモリの装着だ。メモリの装着で気をつけたいのは、グラフィックスカードとメモリソケットのツメとの物理的干渉である。まずメモリソケットのツメを倒し、グラフィックスカードをPCIe x16拡張スロットに乗せてみて、ツメとの干渉がないかを確認しておこう。今回用いたギガバイトのマザーボード「GA-EP45-UD3R」では、7本の拡張ソケットの3番目にPCIe x16スロットがレイアウトされているため、メモリソケットのツメとの干渉は無い。そのためグラフィックスカードを装着した後からメモリを装着するといった順番でも問題ない。これが干渉するマザーボードだった場合、装着の順序はメモリ→グラフィックスカードの順とする必要がある。

グラフィックスカードを挿してみた状態で、メモリソケットのツメを倒すことができるか確認しよう

今回用いたギガバイトのグラフィックスカード「GV-R485MC-1GH」は、2スロット分のスペースを占有するタイプ。2段目のフィンがケース外に飛び出すことで冷却効率を高めている

なおメモリに関しては、現在主流のものにDDR2とDDR3という2つの規格がある。メモリモジュールの端子側には切り欠けがあり、DDR2とDDR3では切り欠けの位置が違うため、違う規格のメモリは物理的に装着できない。切り欠けの位置にあわせてモジュールをソケットに乗せ、両端を持って押し込めばツメが立ち上がって"カチッ"と固定される。

メモリの端子側には切り欠けがあり、メモリ規格、メモリモジュールの向きが正しくないと装着することはできない

メモリを押し込んだら、ツメが起き上がってロックされたことを確認

電源、マザーボード、CPU、メモリ、グラフィックスカードを装着した時点で、ここまでの段階で接続できる電源ケーブルや、スイッチやUSB、オーディオなどのフロントインタフェース用ケーブルなどを接続しておこう。フロントインタフェースのピンヘッダの配列は、マザーボード付属のマニュアルを参考にする。また、マザーボードによっては基板側に何のピンヘッダかを示すシルク印刷があるので、これを参考にしても良い。なお、LEDに関しては極性があるので注意。また、ドライブ類を搭載する前にケーブルの取り回しを考えておくのもオススメ・ケースによってはケーブルをまとめるためのタイを用意しているものもある。おおよそどのあたりでタイラップするのか、この段階で目安を付けて仮止め、動作確認後に本締めをするといった流れが良いだろう。

ドライブを除いた全てを装着した状態。これだけ内部スペースが広いと、細かなところにも手が入れやすく、組み立て作業もスムーズだ。自作PCでは基本的に小さなケースほど組み立てには苦労する

ドライブを装着すると内部が密になるので、取り回しの容易なこの段階でケーブル配線を済ませておくのも手だ

CPU用の8ピン12Vコネクタも装着。このコネクタは隅にあるので、大きめなCPUクーラーを選択した際にはクーラー装着前にあらかじめ配線しておいた方がよいかもしれない

「GV-R485MC-1GH」グラフィックスカードは6ピンPCI Express補助電源を必要とする

フロントアクセスインタフェース用のピンヘッダは多くの場合マザーボードの下側にまとまっている。シルク印刷もあり、ピンヘッダの配列もほぼ共通化されてきたので最近はそこまで難しいことは無い

最後はHDDと光学ドライブの装着。NINE HUNDRED ABはフリーレイアウトのベイ構造であるため、ユーザーそれぞれの状況に応じて使い勝手の良い段に装着できる。ここまで装着できた後は、余ったケーブルを、エアフローを妨げない場所にまとめ、ケース側板などを閉じていけば完成なのだが、その前に動作チェック、そしてOSのインストールなども行っておけば、万が一ハードウェアトラブルがあった場合にも開け閉めを繰り返す手間を減らすことができる。さて、次回は組み上がったこの自作PCにOSをインストールし、ソフトウェア面なども紹介したい。

最後にドライブ類を搭載。これに関しては特に説明することもないだろう。ケースによっては直付けせずにガイドレールを用いるものもある

これで基本的なパーツの組み込みが完了。この状態で動作チェックを行い、問題があれば修正したうえで、側板を閉じるのは最後の最後で構わないだろう

(機材協力 : リンクスインターナショナル)