スマートフォン、PC、タブレットとインターネット対応端末が増え、これらに対応するための開発者の作業は増加している。ドイツの研究機関はこれに対応すべく、「Webinos」というプロジェクトを発足させた。先週、欧州連合(EU)が1,000万ユーロの投資を発表、「あらゆる端末で動く単一のサービス」実現に向け一歩を踏み出した。

先に調査会社の米IDCがスマートフォンOSの動向予想を発表した。現在、「Symbian」「iOS」「Android」「Windows Mobile」とさまざまなOSが乱立しているが、IDCでは2014年も、シェアの順位は多少入れ替わってもこれらOSは存在すると予想している。IDCの予想が当たっていれば、モバイルアプリを開発する開発者やコンテンツプロバイダは2014年もiPhone向け、Android向け、Symbian向け……とアプリを開発しなければならないことになる。

一方、モバイルOSについては、マーケティング理論「キャズム」のGeoffrey Moore氏によるスピーチ(2009年秋の「Symbian Exchange」の基調講演)も面白い内容だった。Moore氏は(モバイルは専門外としながら)、モバイルOSもPCの世界と同じ道を歩むと考えており、最終的には「Windows」のように圧倒的シェアを持つ存在がでてくると見ている。現在の流れを見ると、"モバイルのWindows"に一番近いのは、GoogleのAndroidに見える。

Moore氏の予想が正しいか、IDCの予想が当たるのかはわからない。Windowsが独占的立場を固めていった時代と比べ、現在はWebが持つ比重がかなり大きい。それを考えると、Webが標準の鍵を握るという業界団体Open Mobile Terminal Platform(OMTP)の「BONDI」の動きも気になる。

このように、スマートフォンだけを見てもさまざまな分析や予想が可能だが、すでにタブレットがブームの兆しを見せている。今後も、ゲーム機、TV、車載システムと端末の種類は広がるはずだ。

Webinos(Secure WebOS Application Delivery Environment)は、ドイツの研究機関Fraunhofer Instituteのプロジェクトだ。さまざまな端末向けのWebアプリ開発プラットフォームを構築し、ユニバーサルなアプリケーションプラットフォームを目指すという。プロジェクトには、英Oxford大学、独Deutsche Telekom、Samsung UK、英Sony Ericsson、独BMW Forschung und Technikなど22の企業や組織が参加している。World Wide Web Consortium(W3C)の支持も得ているという。

Webinosの目標は、Webアプリケーションやサービスを一貫性と安全性のある形で利用できるようにすること。たとえば、あるアプリケーションをスマートフォンで利用し、いったん停止、その後でTVなど他の端末で続きを利用できるといったことを実現していく。端末側の機能を活用し、クラウド、ソーシャルサービス、ユーザーの端末上にある非公開/公開データに安全にアクセスできるようにするとのことだ。

技術面ではフェデレーションされたWebランタイムを持ち、共通のAPIセットにより端末、サービス、ユーザーをまたぐ機能を提供するユニバーサル性を実現する。開発側では、単一の仮想デバイスを提供し、一度アプリを開発すればどこにでも実装できるようにする。仕様をオープンにし、リファレンス実装をオープンソースにすることで、端末メーカーやネットワークオペレーターなど業界の受け入れを促進する。「業界がWebベースのサービスに移行する動きを促進する」とプロジェクトのWebサイトに記している。

WebinosプロジェクトはEUの第7次研究枠組み計画(FP7)の1つであり、2010年9月から2013年8月まで3年間展開される。

技術が登場していないうちに判断すべきではないが、このWebinos、構想としては素晴らしい。だが、どの程度受け入れられるかというとちょっと疑問も湧いてくる。当面の大きなフォーカスであるはずのモバイルで、AppleやGoogleなどの企業が参加していないからだ。今後の動向次第だが、標準化の必要性をどのぐらい感じているのか、少なくともスマートフォンではメーカー、OSベンダ、オペレーター、開発者らの間で少なからず温度差がありそうだ。

なお、同じような(標準化)取り組みは欧州のオペレータ集団が「Wholesale Applications Community」として展開しているが、起爆には至っていない。