2024年2月17日から26日まで、対戦格闘ゲーム『ストリートファイター6(スト6)』の世界大会「CAPCOM CUP X(CCX)」が北米ハリウッドにて開催されました。
「CAPCOM CUP」は、「CAPCOM Pro Tour」と呼ばれる地域大会を勝ち抜いたプレイヤーによる頂上決戦。すべての人が参加対象の「オフラインプレミア」、主催する国に在住する選手を対象とするオンライントーナメント戦「オンラインプレミア」、5つのトーナメントの順位によるポイントを競い、ポイント上位者によってオフライントーナメントを争う「World Warrior(WW)」の3種類の大会が世界各地で実施され、それぞれの優勝者と現地での最終枠予選「LCQ(Last Chance Qualifier)」勝者の計48名が「CCX」に出場します。
日本からは、「オンラインプレミア日本大会」で優勝したカワノ選手、「WW日本大会」を制したふ~ど選手、「オフラインプレミアシンガポール大会」で勝利したガチくん選手の3人が出場します。
ちなみに、ほかに日本人選手が「CCX」への出場権を獲得できたチャンスは「オフラインプレミアフランス大会」「EVO」に加え、CCXで行われる「LCQ」の3大会。最大6人です。
「CCX」では、17日から19日までの3日間で「CCX」最後の1枠をかけた「LCQ」を行い、22日から24日に参加者48名を1グループ6名の8グループに分けた総当たり戦のグループリーグを行い、25日に「ストリートファイターリーグ: ワールドチャンピオンシップ 2023(SFLWC)」が開催されます。そして、最後の26日にグループリーグを突破した16名による決勝トーナメント「CCX」本戦が開催されます。2日間の休みを挟みますが、約10日間ずっと『スト6』関連のイベント漬けになる、まさに『スト6』ウィークです。
まず、「LCQ」でベスト8まで残れた日本人選手は、ウイナーズサイドでときど選手、ルーザーズサイドで竹内ジョン選手、翔選手、ひびき選手の4選手でした。
アメリカの無冠の帝王であるPunk選手の調子が良く、いよいよ戴冠への一歩を踏み出すかと思われた矢先、一度倒した相手であるProblem-X選手にグランドファイナルでリセットを許すとそのまま、逆転でProblem-X選手が勝利しました。
この時点で、かなり濃いトーナメントとなりましたが、「LCQ」優勝では「CCX」への出場権を得たに過ぎず、出場48枠の1つが埋まっただけ。そう考えると、「CCX」への出場がいかに難しいかわかります。
すべての枠が決定したことで、グループリーグの振り分けも確定しました。どのグループも安泰と言えるところはありませんでしたが、とりわけ厳しいグループとなったのは「グループF」。昨年の「CC」覇者のMenaRD選手、EVO優勝のAngryBird選手、新進気鋭のEndingWalker選手、春麗世界一のLeshar選手、屈指のガイル使いCaba選手、ペルーが誇る強豪NeroTheBoxer選手と、ほかのグループに入っていれば、全員グループ抜けができそうな面々です。その“死のグループ”をウイナーズサイドで抜けたのはLeshar選手、ルーザーズサイドで抜けたのはMenaRD選手でした。
日本人選手は全員別のグループに振り分け。カワノ選手はPhenom選手に負けるもルーザーズで抜けを決め、ガチくん選手はValmasterキンバリーにまさかの敗北を屈するも、最後は勝敗、セット数差が同じながら直接対決でNL選手に勝っていることでウイナーズサイドでの抜けを決めています。ふ~ど選手は、3人のディージェイ使いがひしめき合うグループ。Xian選手が全勝でウイナーズ抜け、ふ~ど選手はルーザーズで通過しました。
「LCQ」で勝ち上がったProblem-X選手は、「グループH」で4位という結果に。あれだけ猛威を振るっていながらグループ抜けができないことを鑑みても、「CCX」本戦に出場しているメンバーが化物ぞろいであることがわかります。
グループ予選が終了した翌日は、「CCX」本戦としては休み。プロリーグを勝ち抜いたチーム戦の世界大会「SFLWC」が開催されました。「SFL」が開催されている3地域の優勝チーム、北米のPro-US「BANDITS」、日本のPro-JP「FAV gaming」、欧州のPro-EU「00Nation」が出場します。
まずは、3チームによる三つ巴戦を行い、本戦出場をかけて対戦します。結果、2勝の「BANDITS」がホーム側で勝ち抜け、「FAV gaming」が1勝1敗でアウェイ側勝ち抜け、2敗の「00Nation」が敗退となりました。
決勝は、日本の「SFL」のプレイオフやグランドファイナルと同様のルールで、先鋒・中堅・大将の星取り戦を行います。先鋒・中堅で勝利したチームは10ポイントずつ、大将で勝利したチームは20ポイント獲得でき、先に70ポイント取得したチームが優勝です。
アウェイ側は先に3人のオーダーを提出し、ホーム側は対戦前に誰が出るかを発表。大将戦が終わるとホームとアウェイが入れ替わります。相手のオーダーにかぶせられるホーム側が有利といえ、その時点でBANDITSが有利な状況と言えます。
しかし、試合が始まると、有利なホーム側でありながら「30-10」と「FAV gaming」がリードします。2巡目では、先鋒・中堅を「FAV gaming」がとり、大将戦で「BANDITS」が取り返して「50-30」。あと20ポイント獲得すれば「FAV gaming」が世界一です。
3巡目は、「FAV gaming」が再びアウェイに。先鋒・中堅をお互いに取り合った大将戦で、ボンちゃん選手とMenaRD選手が対戦します。この組み合わせは予選から4戦行われた組み合わせで、勝敗はMenaRD選手の3勝1敗でした。
大一番で巻き返したいボンちゃん選手でしたが、5戦目も「3-0」のストレートで敗北してしまい、ポイントは「60-60」の同点。4巡目に突入します。「FAV gaming」がホームとなりますが、MenaRD選手が出てくることは火を見るより明らかで、ここでボンちゃん選手が6度目の対戦にいくかに注目が集まります。
最後の話し合いの結果、登場したのはりゅうせい選手。しかし、MenaRD選手の勢いは止められず、「BANDITS」が優勝となりました。
最終日は、いよいよ「CCX」の本戦です。グループ予選の結果、日本勢はガチくん選手がウイナーズでDCQ選手と、カワノ選手がルーザーズでNephew選手と、ふ~ど選手もルーザーズでMenaRD選手と1回戦を戦います。
すると、ガチくん選手がいきなり敗北し、日本勢全員がルーザーズに移ります。カワノ選手は、Nephew選手、KUSANAGI選手と撃破していきますが、ルークミラーとなったNL戦で敗退し、7位タイで終了。ふ~ど選手は、「SFLWC」優勝の立役者であるMenaRD選手との対戦でしたが、これに勝利します。MenaRD選手に圧倒されたボンちゃん選手に「SFL」のグランドファイナルで負け越したふ~ど選手でしたが、やはり対戦相性や時期などが勝敗を分けるほど、実力は拮抗しているのでしょう。
ルーザーズ2回戦では、ふ~ど選手とガチくん選手の日本人対決が勃発します。結果はガチくん選手の勝利。数少ない日本人選手が潰しあう形になってしまいましたが、ふ~ど選手を下したガチくん選手がここから勢いに乗ります。
次のSayff選手を破ると、“死のグループF”を勝ち抜いた優勝候補の筆頭Leshar戦も勝利。さらにカワノ選手を破ったNL選手も倒し、いよいよルーザーズファイナルへコマを進めます。
しかし、快進撃もここまで。ウイナーズファイナルでUMA選手に負けてルーザーズに落ちてきてChris Wong選手に敗北してしまいました。奇しくも、Crisis Wong選手もガチくん選手もオフラインプレミアで優勝して「CCX」への切符を手にしており、シンガポール大会では決勝戦がこの2人の組み合わせでした。Chris Wong選手にしてみれば、シンガポールでのリベンジを果たせたわけです。
グランドファイナルは、UMA選手対Chris Wong選手の対決。UMA選手はジュリ、Chris Wong選手はルークを使用しています。
ルークは“強キャラ”として誰もが認めるところですが、ジュリは強い部類に入るものの、トップグループから見ると決め手に欠けると言われています。それだけに、ジュリがグランドファイナルに登場することは、ほとんどの人が予測できなかったでしょう。
グランドファイナルでは、Chris Wong選手が3-0のストレートで圧倒的な強さを見せてリセットを達成。このままの勢いでChris Wong選手が優勝をもぎ取るかと思われましたが、リセット後は逆にUMA選手が3-0ストレートで勝利し、優勝を果たしました。これにより『スト6』での最初の「CC」はUMA選手が制し、優勝賞金100万ドル(約1億5000万円)を手にしました。
今回の「CC」は『スト6』がリリースされてから約8カ月での大会ながら、すでに熟練の技術を駆使したようなハイレベルの大会となりました。しかし、それでもまだまだ研究する余地があり、トッププレイヤーたちでもつかみ切れていない部分があったと思います。
その結果として、ノンプロであるUMA選手の優勝、兼業プレイヤーであるChris Wong選手の準優勝があったのではないでしょうか。
「SFLWC」で無双していたMenaRD選手がグループ予選ではルーザーズ抜けであったり、ふ~ど選手に敗れてしまったり、強豪ひしめき合う「グループF」で1位抜けしたLeshar選手が本戦では1勝2敗で敗退したり、強さが安定しきらないのも、新しいタイトルだからと言えるかもしれません。そういう意味では、今回の「CCX」はまさに初年度の混沌として状況を表した大会だったわけです。
最後に辻本社長が登場し、来年の「CC」の開催と、優勝賞金100万ドルの継続を発表。100万ドルの優勝賞金は『スト6』リリース年記念大会としての特別措置だったので、継続の発表に会場も盛り上がりました。「CC」は、賞金以上に『ストリートファイター』プレイヤー憧れの舞台でもあるため、賞金だけが大会出場の目的にはならないと思いますが、プレイヤーのモチベーションアップにつながるかもしれません。
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