2024年2月11日、12日に高校生向けeスポーツ大会「NASEF JAPAN 全日本高校eスポーツ選手権(全高e)」のオフライン決勝大会が開催されました。

全高eは、2023年まで実施されていた「全国高校eスポーツ選手権」を継承した大会。そのため、全高eは初開催ですが、実質6回目といえます。

コロナ禍の「全国高校eスポーツ選手権」では、オフライン有観客の大会を開催できず、昨年はオフラインながら無観客だったので、今回は久々のオフライン有観客。会場は「LAFORET MUSEUM HARAJUKU」です。

出場する選手の同級生や学校関係者、親御さんなど多くの人たちが会場に足を運びました。応援の声が聞こえるなか対戦できるのは、選手にとってもうれしいことではないでしょうか。

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    NASEF JAPANとNTTe-Sportsが開催し、サードウェーブが特別協賛する『NASEF JAPAN 全日本高校 eスポーツ選手権』。「全国高校eスポーツ選手権」からリニューアル

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    大会応援リーダーの胡桃のあさんのパネルも展示。大会中はモニターから各選手を励ましていました。大会で使用されていたタイトルにも詳しく、応援リーダーとしての役目をしっかり果たしていました

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    ステッカーと映画『PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』のチラシ、応援用のペンライトが来場者に配布されました

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  • 応援ボードも用意。応援に駆けつけた仲間が選手に熱い気持ちを綴っています

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    手作りの団扇を用意した人たちも。試合に出る選手の後輩が応援に駆けつけました

今大会で採用されたのは『League of Legends(LoL)』『ロケットリーグ』『VALORANT』『Fortnite(フォートナイト)』の4タイトル。2023年11月から12月に予選・予選決勝が実施され、『LoL』と『VALORANT』は決勝戦進出の2チーム、『ロケットリーグ』は準決勝進出の4チームがオフライン大会へ進出します。『Fortnite』は1月27日、28日にオンラインにて決勝大会を開催しました。

それぞれの部門の優勝チームは以下の通りです。

【Fortnite部門】ルネサンス高等学校 池袋キャンパス「暗黒神ゴッドゼウス」
【League of Legends部門】ルネサンス大阪高等学校 なんばeスポーツキャンパス「かれはchillどれん」
【VALORANT部門】ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「イナザワジャパン」
【ロケットリーグ部門】N高等学校「N小町」

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    Fortnite部門の決勝大会出場チーム。ルネサンス高等学校 池袋キャンパス「暗黒神ゴッドゼウス」が優勝しました

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    League of Legends部門の決勝大会に進出した4チーム。ルネサンス大阪高等学校 なんばeスポーツキャンパス「かれはchillどれん」が優勝しました

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    VALORANT部門の決勝大会に進出した4チーム。ルネサンス大阪高等学校 梅田eスポーツキャンパス「イナザワジャパン」が優勝しました

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    ロケットリーグ部門の決勝大会に進出した4チーム。N高等学校「N小町」が優勝しました

結果を見ると、注目すべきはルネサンス高等学校の強さです。池袋キャンパス、なんばeスポーツキャンパス、梅田eスポーツキャンパスとさまざまな姉妹校から参加しており、どの部門でも好成績を残しました。これまで高校生eスポーツでは、N高校の強さが目立ちましたが、ルネサンス高等学校がN高校に取って代わる勢いを見せています。

ほかにも、大阪eゲームズ高等学院やクラーク記念国際高等学校など、eスポーツを強化している学校が増えており、今後はさまざまな高校が入り乱れる群雄割拠の時代への突入を感じさせられます。

通信制高校やeスポーツ課のある高校に目がいきがちですが、『VALORANT』部門でベスト4には仙台育英学園高等学校が進出しています。仙台育英学園と言えば、2023年の全国高校野球選手権、いわゆる甲子園で準優勝した野球名門校です。

しかし、野球部員の数よりもeスポーツ部員の数のほうが多く、PC環境も整っているため、eスポーツで名門校として名をはせるのも時間の問題と思われていましたが、その仙台育英学園がさっそく『VALORANT』で結果を残しました。

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    『League of Legends』部門の決勝戦はルネサンス高等学校同士の対決。全日本高校eスポーツ選手権は同じ高校から3チームまで出場できるので、同校対戦も起こります。複数チームが参加できるのもeスポーツのいいところです

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    『VALORANT』部門もルネサンス高等学校同士の対決でした

オフラインで行われた試合はどれも白熱し、高校生らしいフレッシュな戦いを見せてくれましたが、特に光っていたのは『ロケットリーグ』部門ではないでしょうか。

常勝軍団であったN高校が『Fortnite』『League of Legends』『VALORANT』で優勝を逃し、あとがなくなったなか、大本命といえる『ロケットリーグ』で圧倒的な優勝を果たしています。

さらに、N高校への挑戦権を賭けた準決勝では、以前N高校に大敗を喫し、リベンジに燃える飛龍高等学校と、映画『PLAY!~勝つとか負けるとかは、どーでもよくて~』の舞台、モデルとなった阿南工業高等専門学校が対決。注目度の高さもさることながら、内容も大接戦の好試合でした。

なお、全高eのオフライン大会では、チーム内で話をしているボイスチャットを配信に乗せており、試合中のやりとりをキャスターの判断で聞くことができました。飛龍高等学校「HEST:Majide」は唯一の女性プレイヤーであるHaru選手が誰よりも声出しをしており、すばらしいチームワークを見せます。1戦目は残り1分から同点に追いつき、延長戦を阿南工業専門学校「Kamase Dogs」が勝利する劇的な展開でしたが、そこから「HEST:Majide」が3本取り返し、逆転勝利で試合を決めるのも劇的でした。

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    試合時間残り10秒で同点に追いついた阿南工業高等専門学校「Kamase Dogs」。1試合目から延長戦にもつれ込む好ゲームを展開します

決勝戦は、プロゲーマーとして活躍する「N小町」Lunatic選手、furlashh選手、そしてその2人をフォローするRarara選手が圧倒的な力を見せつけます。「HEST:Majide」は3ゲームで1点取ることが精一杯でしたが、それでも明るく、声を出して前向きに戦っていた姿は多くの人たちに元気を与えていました。

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    1試合目は8-0、2試合目は6-0と2試合連続で大差の無得点で敗北した「HEST:Majide」。3試合目で1点をもぎ取り一矢報います

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    優勝したN高等学校「N小町」。『ロケットリーグ』の伝統である優勝トロフィーの底面を見せるパフォーマンスもしっかりやっていました

試合終了後には、準優勝と優勝のチームにインタビューできたので、3年生に進路と今大会に出場したことにより進路や将来にプラスになったかを聞いてきました。

『League of Legends』部門で優勝した「かれはchillどれん」のメンバーのほとんどがプロ志向があり、しばらくはプロゲーマーとなるべく、活動を続けていくとのこと。今大会の優勝はプロになるための「いいステップアップになった」と語っています。

『VALORANT』部門で優勝した「イナザワジャパン」のメンバーのほとんどは1年生でしたが、すでにプロ志向の選手もおり、大会での優勝を成長のステージと感じているようでした。また、プロを目指すため、eスポーツの部活をするために、高校を選んだと言います。

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    『League of Legends』部門で優勝した「かれはchillどれん」

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    『VALORANT』部門で優勝した「イナザワジャパン」

『ロケットリーグ』部門で優勝した「N小町」のメンバーには、すでにプロゲーマーとして活動しているLunatic選手とfurlashh選手がおり、彼らは引き続きプロ活動を続けていきます。

Rarara選手はデザイン系の会社に入ることが決まっており、競技シーンとは離れるとのことでしたが、スケジュールを自分自身で決めるN高校では、勉強や課題などのスケジュール管理をしながら、『ロケットリーグ』の練習時間の確保していたこともあり、この経験は仕事をするうえでも役立つのではないかと語っていました。

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    『ロケットリーグ』部門で優勝した「N小町」

『ロケットリーグ』部門で準優勝だった「HEST:Majide」のメンバーは競技シーンから引退するとのこと。Haru122012_155cm選手は経営の勉強をする予定で、将来はeスポーツの大会を開きたいという夢を持っていました。

skyblue_No.6選手とRuby_185cm選手は、大会に出たことで試合中の仲間との意思疎通のための声出しが仕事でも生かせると考えています。itochannTT_175cm選手は好きなことに没頭できた経験が今後好きなことにチャレンジできる力になると語っていました。

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    『ロケットリーグ』部門でBEST FAIR PLAY賞に選ばれたHEST:Majideのharu122012_155cm選手

全日本高校eスポーツ選手権は全国高校eスポーツ選手権から数え、6大会目となることもあり、その多くの選手が中学生時代から高校でeスポーツをしたいと考えていました。先述した通り、なかにはeスポーツ部の存在で高校を決めた生徒もいます。中学で高校eスポーツを目指し、その経験を将来に活かしていくエコシステムがすでに組まれていることを、生徒の話を聞いてより実感しました。

大会の最後には、MCを務めたOooDaさんと大会応援リーダーの胡桃のあさんから、次回開催の発表が行われました。先述したとおり、すでに中学生の夢の1つであり、高校生活の一環となった高校eスポーツ大会なので、継続するのはもはや義務のようなものかもしれません。

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    全日本高校eスポーツ選手権の第2回の開催も発表されました。第2回は2024年12月に開催する予定です

最後に、NASEF Japanの理事長を務める松原昭博氏に今大会を終えた感想と今後の展開について聞いてきました。

――全国高校eスポーツ選手権から引き継いだ形の全日本高校eスポーツ選手権ですが、引き継いだ部分と新しくした部分はどんなところでしょうか。

松原昭博理事長(以下、松原):引き継ぎから時間がなかったので、新しいことはほとんどできませんでした。我々は教育団体なので、高校の教職員の方々とつながりがあります。なので、さまざまな意見を伺い、できるかぎり反映させていただきました。次回はその意見をより反映できるようにしていきたいですね。

たとえば開催時期。学校行事であったり、試験であったり、そういった高校生活に支障をきたさないように考えていきたいと思っています。

――次回以降の目標ややりたいことなどのビジョンはあるのでしょうか。

松原:そうですね。いろんなことを考えています。新しいタイトルの採用も考えています。継続しつつも固定化しないような、みんなが参加してよかったと思える大会にしたいです。

あとは、まだまだ先になるかもしれませんが、将来的には海外交流をしていきたいですね。オンラインでやるのが手っ取り早いですが、遠い地域だと回線のラグもありますので、そこらへんも考えていかないと。eスポーツの交換留学もできればと思います。