先日、「海上自衛隊が輸送任務に使用しているYS-11の後継機として、中古のC-130を調達・配備する方針が固まった」との報道が流れた。その後、この話は「米海軍中古のC-130Rから空中給油機能を外したものを購入する」との公式な発表になっている。このニュースを聞いて「えっ、中古品!?」とビックリした方がいらっしゃるかもしれない。

ということで、中古品にまつわる話を何回かにわたり取り上げてみようと思う。

軍用輸送機のベストセラー、C-130ハーキュリーズ。すでに航空自衛隊では使っていて、イラクに派遣したこともある (Photo : USAF)

武器取引にも中古市場がある

自動車、PC、カメラなど、さまざまな分野で中古品が取引されている。筆者自身も、クルマを下取りに出したり、古くなったパソコンやカメラを売りに出したり、逆に中古品を買ったりした経験がある。だから、この手の民生品で中古品の市場というものが存在するのは理解しやすい。

ところが、それが一般的な民生品に限った話ではなく、武器取引の世界にも存在するのである。たまたま日本では中古品を調達する事例が少なかったが、世界的に見ると新品を気前よく購入できる国ばかりではないから、中古品の需要が存在するのは当然の話だ。

民生品と同様、まずどこかの国が手持ちの装備品を放出しなければ、中古品を買いたい国があっても、取引が成立しない。これは民生品の中古市場と同じで、「出物」があって初めて「市場」や「取引」が成立する。しかし、個人が趣味で購入するものと違うから、軍の装備品は「飽きたから放出する」というわけにはいかない。

中古品が出回る背景

では、どんな場面で中古品が出回るのだろうか。その大きな理由としては、「代替」と「軍縮」が挙げられる。

「代替」はわかりやすい。「性能が見劣りするようになった」、「古くなって維持に手間や費用がかかるようになった」といった理由で新しい装備に代替すると、それまで使用していた古い装備は当然ながら余剰になる。そこで、「古くてもいいから欲しい」という国に売りに出すわけだ。

この「古くてもいいから欲しい」は、さらに複数のパターンに分類できる。まず、わかりやすいのは「安価に手に入れたい」というケース。おカネがない国では新品を買えないので、安い中古品で我慢するという構図である。

もう1つは「既存の装備を買い増したいのだが、新品が手に入らない」というケース。すでにメーカーが新造を止めてしまっていれば、当然ながら新品は手に入らないから、戦力増強のために同じものを買い増したい、あるいは部品取りにするために同じものが欲しいといった場面で中古品の需要が生じる。

いずれにしても、「代替」によって中古市場に出回る装備品は当然ながら旧式モデルのことが多いから、そういう意味でも需要と供給がマッチする理屈である。

この「代替」に加えて、特に1990年代以降に急増したのが「軍縮」による中古品の流通である。冷戦構造の崩壊によって「平和の配当」を求める声が高まり、欧米諸国が大規模な軍縮を行った。軍縮すれば、削減対象になった部隊が使用していた装備は余る。それをそのまま倉庫に寝かせていたのではもったいないので、中古品として売りに出せば、維持・保管にかかる場所や費用は不要になるし、何らかの売上も発生するので一石二鳥だ。

人気があれば中古も払底する

ここで、冒頭で取り上げた「海上自衛隊に中古C-130を」の話につながる。

御存じない方のために簡単に説明すると、C-130ハーキュリーズ(ギリシア神話の英雄ヘラクレスのことである)はロッキード社(現ロッキード・マーティン社)が開発した軍用輸送機で、試作機のYC-130が初飛行したのはなんと、1954年の話である(!)。それがいまだに、改良に改良を重ねて新造が続いているのだから、すごい話だ。

そうなったのは、「手頃な機体規模で使いやすく、どちらかというと小規模な飛行場や施設が整っていない飛行場でも運用できること」、「欧米諸国の軍用輸送機業界で事実上の標準になっていて、相互運用性の観点から見て都合がいいこと」という理由による。

だから、NATOに新規加盟した東欧諸国、近年では新生イラク空軍などで、米空軍の中古C-130を買っている。新品の方も、欧米諸国だけでなく、インド空軍向けに納入が進んでいるところだ。

つまり、C-130は人気がある機体なので、中古品が出回っても、たちまち買い手がついてしまうのである。海自はうまい具合に米海軍の中古品を獲得することになったが、都合のいい「出物」があるかどうかは、中古品につきまとう最大の問題である。いくら買いたくても、モノが出てこなければ買えないのが中古の辛いところだ。