私の名前は粕田舞造(かすたまいぞう)。かつてパソコン雑誌「PCfan」で2003年(なんと16年前!)から2年あまり連載をしていたが覚えている人はいるだろうか? パソコンのハードにせよソフトにせよデフォルトで使うことを許さない男。よりよい設定やパーツの組み合わせを追求する男、それが私、粕田舞造なのである。
この連載では主に“自作パソコン”にフォーカスを当てたカスタマイズ方法を紹介していくが、OSやWebブラウザといったソフトウェアも取り上げていく。メーカー製のパソコンを使っている人も注目していただけると幸いだ。
復活第二回は2019年になって一気に低価格化が進み、注目を集めているM.2タイプのNVMe SSDにフォーカスを当てたい。NVMe SSDは、シーケンシャルリード(連続読み出し)では3,000MB/sを超える速度を出す製品も存在する超高速ストレージ。最近ではPCI Express 4.0に対応する製品も登場し、まだまだ速度アップは続きそうだ。
そのNVMe SSDだが、M.2タイプはコンパクトな上に、マザーボードのM.2スロットに挿すだけで使えるという手軽さがある一方で、そのデータ転送速度の速さゆえに発熱が大きいことが知られている。そのため数多くのM.2 SSD向けヒートシンクが発売されており、最近のマザーボードではM.2スロットにそもそもヒートシンクを備えている場合もある。SSD自体にヒートシンクを搭載している製品も存在している。
なぜ、発熱が大きいことが問題なのか。NVMe SSDは発熱が大きくなると熱による破損を防ぐためにデータ転送速度を抑えて温度を下げる「サーマルスロットリング」という機能が備わっている。つまり、冷却が不足すると最大性能を発揮できない場合があるワケだ。
そこで今回は、M.2タイプのNVMe SSDを(1.)ヒートシンクなし、(2.)市販のヒートシンクを追加、(3.)マザーボードに搭載されているヒートシンクを利用の3パターンでデータ転送速度と温度にどのような違いがあるのかチェックしていきたい。
用意したのはIntelのSSD 760p SSDPEKKW256G8XT(256GB)。市販のヒートシンクには長尾製作所 M.2 SSD用ヒートシンク SS-M2S-HS01(実売価格:1,000円前後)を、マザーボードのヒートシンクにはASUSTeK ROG STRIX Z390-F GAMING(Intel Z390)を使用した。ベンチ台を使ってマザーボードがむきだしの状態でテストしている。室温は約25℃だ。
■テスト環境 | |
CPU | Intel Core i7-9700K(3.6GHz) |
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マザーボード | ASUSTeK ROG STRIX Z390-F GAMING(Intel Z390) |
メモリ | G.Skill F4-3600C19D-16GSXW(DDR4-3600 8GB×2、※DDR4-2666で動作) |
ビデオカード | GIGA-BYTE GeForce RTX 2070 WINDFORCE 8G(NVIDIA GeForce RTX 2070) |
システムSSD | Intel SSD 760p SSDPEKKW256G8X(M.2/PCI Express 3.0 x4、256GB) |
OS | Windows 10 Pro 64bit版 |
テストは、ストレージ向けのベンチマークソフト「TxBENCH 0.96β」を使用し、疑似SLCキャッシュが切れない範囲で5分間シーケンシャルライトを実行している。もっとも熱を持つコントローラに対して意図的に高負荷をかけて温度の変化を確かめよう、という趣旨だ。
ヒートシンクを装着していない状態では、2分を超えたあたりで温度が70℃を超えてサーマルスロットリングによる速度低下が発生した。その後は速度低下によって温度が下がると速度が戻り、また温度が上がると速度が落ちるという状況が繰り返された。
一方でヒートシンクのSS-M2S-HS01を装着した状態では最大でも51℃と十分冷却されており、サーマルスロットリングによる速度低下に見られなかった。さらに、ASUSTeK ROG STRIX Z390-F GAMINGのヒートシンクでは最大で48℃とさらに高い冷却性能を発揮。もちろん速度も安定していた。
今回は意図的に高負荷な状態を作っているため、普段の使用でここまで温度が上がる可能性はあまりないが、NVMe SSDは熱くなるパーツであることがわかったと思う。マザーボードにヒートシンクが備わっているなら積極的に使っておきたい。また、市販のヒートシンクでも1,000~2,000円程度から購入できる。ヒートシンクのないNVMe SSDを使うなら、ぜひとも冷却対策はやっておきたい。
※冷たいことを言うようですが、上記のカスタマイズで動作不良を起こす場合があります。自己責任の範囲でトライしてください。