3月17日、MHLコンソーシアムが「superMHL」に関する記者会見を開催した。この日、シリコンイメージが発表したポートプロセッサ「Sil9779」のお披露目も行われ、これからの8K/120fpsの時代の到来を高らかに宣言した。
「superMHL」については、すでに1月中に発表が行われているが、今回の記者会見は、その詳細を解説するものであり、対応する製品としてシリコンイメージの「sil9779」が発表されている。シリコンイメージジャパンの竹原茂昭(代表取締役社長)氏によれば、この製品の導入により、家電機器のsuperMHL化が一気に進むだろうという。
家電機器に装備された映像/音声入出力端子としては、HDMI端子がよく知られている。アナログ時代には黄色、赤、白のピンケーブルやS端子ケーブルなどが使われ、映像と音声を別のケーブルで結ぶ必要があったが、HDMI端子は、デジタル映像/音声を一本のケーブルで運ぶことを可能にした。それがどんなに利便性を高めたかは、使ったことがある方なら誰もが納得していただけるだろう。
後発のMHLは、MicroUSBとの互換性を確保したことから、デバイス側に専用の端子を用意しなくてもよく、小型化、省スペース化が求められるスマートフォンでの採用が多く、大きなシェアを獲得してきた。現在では、7.5億台のデバイスがMHLを採用しているという。
ノートPCの場合、映像出力には長くRGB端子が使われてきた。デジタルのDVI-Dが一般的になっても、そのための端子を持つノートPCは少なかった。だが、HDMI端子の登場以降、それを装備した製品が一気に普及している。送り側が優れていても、受け側がHDMI一辺倒なのだから当たり前だ。もちろん、デジタル映像/音声を運ぶ方法としては他にもDisplayPortがあるし、MacなどではThunderboltが使われている。だが、これらは決して事実上の標準としては迎えられなかったということだ。
superMHLは、それ自身の信号伝送と他規格との互換性を確保し、両端にsuperMHL端子を持つケーブルを使った伝送の他、もう片側をHDMIやMicroUSB、USB Type-C端子を使って伝送を実現する。特に、USB Type-Cは、その規格のオプションとして、本来のUSB信号以外のネゴシエーションなどが可能になるため、仮に、superMHLが事実上の標準にならなかったとしても広く使われるようになるはずだ。実際、発表されたばかりのMacBookは、USB Type-C端子だけが装備され、その端子ひとつで、専用ケーブルを使うことでDisplayPort、VGA、HDMIのすべてに対応する。
同様にHDMI陣営も、次世代の規格の策定に向けて作業を続けている。ただ、MHL陣営は参画している各社が近い位置にあり規格策定のスピードを上げやすいことから、今回の次世代規格については一歩リードしたかたちだという。
現時点では身の回りの家電機器をみても、その入出力端子はHDMI端子で統一されている。だが、このままHDMI陣営の作業が遅れてしまうと、これらがsuperMHLに置き換わってしまうか、あるいは、superMHLと併用されることになる可能性もある。
今、業界のトレンドは8Kだ。特に日本においてはNHKが2016年に試験放送を開始、2018年には実用放送に入り、2020年の東京オリンピックは8K放送になるという計画になっている。つまり、日本が最先端をいっているわけだ。それに対応してTVの世界も様変わりするだろう。個人的に、4Kの時代はそう長くは続かないと予想している。
この先5年たった時点で、BDレコーダーやTVの端子、そしてPCの映像/音声用端子はどうなっているのだろう。まさに狭い背面パネルは激戦区であり、多様な規格への対応はコストへの負担も大きくなってしまう。
理想的にはすべてUSB Type-C端子のみになるようなこともありえないわけではない。それによって、過去のさまざまな規格との互換性を保つことが容易になるからだ。あとから標準化されることになるであろう次世代のHDMIにも対応できることから汎用性も高くなる。
機器と機器を結ぶ規格は、内部的にどんな高度なテクノロジーが使われていようとも、AとBを結ぶというシンプルなユーザー体験で、美しい映像や音声を楽しめるようになるのが理想だ。そういう意味ではsuperMHLも、USB Type-Cも、両端が同じプラグである点はうれしい。願わくば、両端がUSB Type-CでsuperMHL規格といったことで、上り下りが自動的に認識され、ホストとデバイスの関係を人間が意識する厄介さも解消されてくればいいのだが。
(山田祥平 http://twitter.com/syohei/ @syohei)