ゴールデンウィーク直前の週末金曜日(2023年4月28日)、報道関係者向けに2022年度通期および第4四半期 決算説明会が開催され、ヤフーとLINE、そしてZホールディングスによる新社名が「LINEヤフー株式会社」となることがわかった。合併と同時期の10月にはID連携も開始するともいう。
こうしたニュースを見ると、いよいよ、コロナ後の世界に向けた動きが出てきたような気がする。いろいろな社会の動きが活発になり、コロナ以前の状況が戻ってきているイメージだ。
コロナ禍は3年超に及んで、われわれの暮らしと仕事を脅かしたが、その一方で、これまでとは違ったライフスタイル、ワークスタイルを提案したともいえる。今まではITという特別な存在だったサービスが、より身近なものとして受け入れられるようになった。
今や、小売店舗や飲食店舗などの多くは自前のアプリを持ち、若い店員が、その使い方をスラスラと説明してくれる。その様子を見ると、かつて、コンビニなどでカウンターに立つ若い店員が、クレジットカード決済さえ、よくわからなくて店長などのサポートを受けていた様子が思い出される。今はもう、そんな光景は見られない。
生活に根ざしているヤフーとLINE
ヤフーやLINEについても知らない間に活用していたりする。
コロナ期、農水省の「Go To Eatキャンペーン事業」などにはずいぶんお世話になったのだが、今は遠い昔のように思える。そのチケットの入手などではヤフーを利用した。
また、LINEはオンライン飲み会などのトレンドにのり、ZoomやTeamsといったビジネス系のコミュニケーションツールとは異なるゆるい感じの環境を提供した。また、各自治体は、公式アカウントを使って新型コロナ対策パーソナルサポートなどを稼働させていた。
LINEは2021年に、日本国内ユーザーの一部の個人情報に関して、LINEのグローバル拠点から日々の開発・運営業務上の必要性からアクセスを行っていることについて、不透明だった部分を明らかにし、以降は、日本国外での日本国内ユーザーの個人情報は日本国内に完結することの徹底を明らかにした。
逆の言い方をすると、それ以前は、そうでない部分もあったということだ。総務省から行政指導は行われたものの、漏洩が確認されなかったことで、改善命令などは見送られている。
このことで、一時期は、政府、各省庁、自治体などがLINEを活用したサービスを停止するような動きもあったのだが、今となっては、そんなことは記憶の彼方に消えている。そんな事件くらいではビクともしないくらいにLINEが人々の生活に根ざしていたということか。
メインとは別のスマホでLINEのフル機能を使いたい
LINE、ヤフー、そして、ヤフーの完全子会社であるPayPayなど、もはや、これらのサービス抜きに、日本人の生活は不可能といった印象もある。LINE銀行は断念したが、PayPay銀行は健在だし、PayPayはPayPayカード以外のクレジットカードを使った支払いを停止する。これまでも、そして、これからはこれまで以上に重要なインフラであるといえる。
だからこそ、LINEは真剣にマルチデバイスに対応してほしい。今は、スマートフォン一台に限定されている。別のスマホにLINEをインストールすると、今使っているスマホのLINEは無効化され使えなくなってしまう。
その他のデバイスでLINEのサービスを利用するには、パソコン用には、別途提供されているアプリをインストールするか、ブラウザのChromeやEdgeに拡張機能としてインストールする。これによって、パソコンが何台あっても、それぞれのパソコンでトークなどを使うことができる。一部のLINE機能は使えないが、これは便利だ。
いつでもどこでも使える「国民のインフラ」として
ところがスマホだけは一台に限定される。電話がそうであるように、特定の電話番号への着信応答は一台だけという発想だ。だが、電話はSIMを差し替えれば別の端末でも使える。なのにLINEはそうはいかない。
日本国民のインフラとして、いつでもどこでも使えて、端末の故障や紛失、破壊などにも柔軟に対応できるようにして、何があっても何も失われないようにしておくために、フルサービスを使えるマルチデバイス対応は必須ではないだろうか。
LINEを愛用するユーザー層は広く、そのデジタルリテラシーはさまざまだ。万が一のことがあってはならないと、セキュリティを厳しくして、フルサービスはスマホ一台のみとしておきたいという方針はわからないでもない。マルチデバイス対応のためのインフラは、その維持のためのカネも設備も膨大なものとなるだろう。
だが、今後、もっと広い範囲での国民インフラになっていくことを考えると、ここは、もう覚悟を決めてきちんとすべきではないだろうか。それが合併してできあがるLINEヤフー社へのお願いだ。