マイナンバーカードの不祥事が続いている。他人のデータがでてきたりするなど、これらはマイナンバーカードが悪いというよりも、保険組合の入力時ミスなどに起因するものがほとんどのようにも見えるが、どちらにしても、入力現場のフェイルセーフが考えられていないことが大きな原因だ。
同性同名で生年月日がいっしょの人が見つかれば、必ず注意を促し、正しいかどうかをチェックするように入力者にうながすくらいは簡単にできそうだ。でも、それをしないで人間の責任にしてしまう。人間は必ず間違うことがわかっているのにだ。どんなにマイナンバーカードが優れた仕組みであっても、こういうことは絶対に起こってはいけない。
スマホ「だけ」で引っ越し手続きや確定申告が可能に
そんな中で、マイナンバーカードのAndroidスマートフォンへの電子証明書搭載サービスがスタートした。
マイナンバーカードの各種サービスを利用するには、公式サイト「マイナポータル」へのログインが必要だ。このログインは、メールアドレスとパスワードや暗証番号で行うが、その際に、本人確認として、使っているデバイスでのマイナンバーカードの読み取りが求められる。
スマホアプリでのログインの場合は、リーダー機能があるのでその場で実物のマイナンバーカードをスマホで読み取る。また、パソコンにはリーダー機能がないことが多いので、そこでのログインの場合は画面に表示されたQRコードをスマホで読み取り、そのスマホでマイナンバーカードを読み取るという、めんどうくさい手順が求められていた。
要するに、本人確認のために、手元に必ずマイナンバーカードがなければ各種サービスを使うことができなかったわけだ。
だが、今回の電子証明書搭載サービスによって、マイナンバーカードに搭載された電子証明書をスマホにも搭載できるようになった。これで、今までマイナンバーカードの実物がなければならなかったいろいろな場面で、カードの実物がなくても生体認証やパスワードの入力だけでよくなるわけだ。
マイナンバーカードを持ち歩く必要はなくなり、スマホだけで多くのことができるようになる。これなら紛失の心配もあまりない。機種変更のときにも、新しいスマホにインストールすれば、古いスマホの証明書は無効になるなど、セキュリティ対策もちゃんと考えられている。
何らかのサービスを受けようと思うたびに、本人確認のためにマイナンバーカードの読み取りを求められ、ゴソゴソとサイフを探してマイナンバーカードを取り出して、それをスマホで読み取るといっためんどうくさいことをしなくてすむようになったわけだ。ただしiPhone対応は先送りにされている。
今後は、スマホだけで利用できるサービスも増えていく。銀行・証券口座開設、携帯電話の契約、キャッシュレス決済申し込みなど、各種民間オンラインサービスの申し込みや利用はこれから順次、コンビニ交付サビースの利用については今年から、そして、来年度には健康保険証としての利用ができるようになる。
来年度というのは2024年度対応予定ということなので、まだ、ずいぶん先の話だ。それに気になることもある。
健康保険証代わりに使うには想定が甘い?
マイナンバーカードを健康保険証代わりに使えるサービスは、すでにスタートしている。病院のカウンターにカードリーダーが設置されていて、そこにカードを置いて、顔認証などをすることで、毎月一度、紙の健康保険証を見せるといったことが必要なくなるわけだ。
あのリーダーは、カウンターの向こう側にあるパソコンにつながっていて、患者が読み取らせたマイナンバーカードを健康保険証と見なして扱い、カウンターにいる人間の係に有効な保険証であることを告げるようになっている。
ただ、このリーダーは、プラスチックカードのマイナンバーカード専用に設計されている。スマホを読み取るようにはなっていない。仮に2年後、スマホが健康保険証として使えるようになったとき、現行のカードリーダーは廃棄されるのだろうか、こうなることはわかりきっていたはずなのに、なぜ、スマホをかざせば健康保険証として使われることを最初から想定しておかなかったのかなど、ものすごくマヌケな印象を持った。
デジタル庁に聞いてみると、既存リーダーを廃棄するようなことはないが、先のことについては公表できないとしている。きっと既存端末やカウンター裏のパソコンに専用のリーダーをUSB接続してリーダーを追加できるようなことが考えられているのだと期待したいが、もしそうなら隠す理由はないようにも思う。
いずれにしても、いろんなことでケチがつくマイナンバーカードではあるが、マイナンバーカードにあらゆるサービスが集約されるのではなく、既存サービスがマイナンバーカード「でも」利用できるようになって、紐付けた人がラクをすることが大事なのだ。だとすれば、紙の健康保険証を廃止するといったことは、まだまだ先でもいいんじゃないかとも思う。