ロジクールが特大サイズのマウスパッド「G840 XL ゲーミングマウスパッド」(以下、G840)を8月26日から発売するそうだ。
そのサイズ、実に、高さ400ミリ、幅900ミリという巨大さだ。ザックリとA4用紙6枚分の面積。表面は熱処理した繊維、裏は天然ゴム引きになっていて、厚みは3ミリで適度な柔らかさを感じる。
ネーミングからも想像できるようにゲームプレイでマウスを使うときに最高のパフォーマンスを得られるように工夫された商品だ。もう、当然のごとくマウスを使ってのイライラは皆無。狙った位置にピタリと止まるマウスポインタはいっさいのストレスを感じさせない。
巨大マウスパッドで仕事のクオリティを上げる
これはきっとゲーミング用途以外での作業環境にも大きく貢献してくれると直感した。これまでも仕事場ではそれなりに大きめサイズのマウスパッドを使っていたが、それでもA4用紙よりひとまわり程度大きいだけだった。愛用のマウスパッドは素材や感触についてはG840と似ているのだが、サイズ的にどうしてもマウスを使うときに腕がデスクの表面にふれてしまうのが、多少なりとも負担になっていたように思う。
これはキーボードを使うときも同様だ。個人的にキーボードは自分の体からかなり離れた位置に置いている。理由は腕や肘を宙に浮かせると疲れるからだ。ただし、これは本来の正当なキータイプの作法からは外れている。パームレストなどを使ってタイプしないときに手のひらを休めるという手もあるが、ずっと手首から肘までを机の表面にくっつけてのタイプがラクチンだ。
マウス操作のときも同様で、デスクの奥の方で操作している。つまり、腕はほぼまっすぐに近い状態でマウスやキーボードに向かって伸びている。
常用デスクの素材は固い合板だ。ビリヤードのテーブルや麻雀テーブルのように布引のテーブルがあったらどんなにいいかとも思うのだがそういうわけにはいかない。
下敷きなどを敷かずに紙を置き、そこに鉛筆やボールペンで直接文字や絵をかきつけるといったデスクでの前時代的な事務作業のためには、ツルツルでなめらかで固い机の表面は重宝するが、キーボードとマウスの操作がデスクに向かっているときの時間のほとんどを占める現代ではそうじゃない。
手首や肘、そして腕そのものを負担なく預けることができて、さらに操作するマウスがパッドの表面から飛び出さないくらいに余裕のあるサイズというのが望ましい。
そんなことを思っているときに見つけたのがこの製品だ。
マウスパッド自作計画の失敗を経て
実は20年近く前に、こうした素材のマウスパッドを自作しようとして、東京・日暮里の繊維街に行って片っ端から問屋を訪ねて、裏がゴム引きで厚みが数ミリあるウェットスーツ的な素材を探したことがあった。裏がゴム引きであってほしいのは敷いた机の上で不用意にずれてしまわないようにだ。
でも見つからなかった。大きな布でデスク全面を覆ってしまおうとたくらんでのことだったのだが、企画倒れに終わっていた。だから、今回の製品の発売を知って、とにかく試してみたいと思った。
実際に使ってみると実にいい。外付けのフルキーボードはもちろん、ノートパソコンをパッドの向こう側にピッタリとくっつけても使っても、マウスとキーボードを行ったりきたりする腕への負担が一気に軽くなった。
ゲーマーが絶大な信頼を寄せ、勝利のために選ぶというのがわかる気がする。長時間の過酷なプレイで疲れないようにするための処世術でもある。だが、それはゲーマーのみならず、クリエイティブ作業や事務作業でも同じことが求められるのだ。とにかくマウス操作はもちろん、机の表面素材からの直接的な刺激を最小限にすることを考えたい。
また、マウスをキーボードの右側で使うだけでなく、キーボードの手前に置いて使ってもラクができることに気がついた。マウスパッドがあるからそこでマウスを操作するという先入観は、巨大なマウスパッドを使うことでマウスを操作するスペースを大きく拡張した。
そんなに大きなマウスパッドを置くほどデスクそのものが大きくないという場合も、できるだけ大きなマウスパッドを使った方がいい。素材が同じでサイズが半分のG640もある。
手首などの負担を軽減するなら、マウスではなくトラックボールを使うというのもひとつの手だ。ロジクールの製品なら「ERGO M575」がある。10年ぶりの刷新だが、マウス操作はどうしても手首の負担が大きくなりがちなので、使う時間が長い場合はトラックボールの利用というのも選択肢のひとつとしてある。
長いパソコン作業の負担を軽くするために
コロナ禍で自宅でのパソコン作業の時間が長くなったというかたも少なくないはずだ。そして誰もが理想的な環境で作業ができるわけでもないという課題も。不自然な環境で長時間の作業をすることで、この1~2年で体の調子がおかしくなってしまったかたもいるんじゃないだろうか。肩こりなどがひどくなったというケースもあるだろう。
でも、劣悪な環境であっても、ちょっと工夫するだけで、体への負担は軽くすることができる。この先、コロナ過が落ち着く日はきっとやってくるだろうけれど、かつての時代と同じ日々が戻ってくるとは限らない。
前向きに考えれば、オフィスにおもむきチームとのリアルなコミュニケーション、コラボレーションをしながらした方がいい仕事と、自宅にこもって一人で取り組んだ方がいい仕事があるのだから、それぞれの相乗効果で生産性を高めるハイブリッドな働き方が新しい当たり前になるだろう。
もちろん、オフィスに行きたいけれども行けない事情として、出産や子育て、介護といったこともある。だからこそ、いつでもどこでも快適に、そして体への負担を最小限に抑えつつ作業ができるようにしておこう。パソコンだけがあればいいというわけじゃない。