コロナ禍の一年で一気にその認知度を高め、広く使われるようになったアプリのカテゴリーがオンラインミーティングだ。TeamsやZoomといったアプリは一気にその利用頻度が高まり、会議やミーティング、さらには飲み会にまで使われるようになった。
もちろんオンラインなので、リアルに人と人が接するわけではないが、電話での声だけのコミュニケーションに比べ、カメラで互いの顔を見せ合うことができるので、いわゆる顔色がうかがえる。だから、コミュニケーションの質が高まる……ような気がする。気のせいかもしれないが……。
参加したいオンライン会議がバッティングする
さて、これらのツールだが、自分も話者になる可能性がある会議等での利用のみならず、一方的に主催者側のアナウンスや講演、セミナーなどを受講するためにも広く使われている。ストリーミングの映像配信で、双方向でのコミュニケーションをあまり意図しないケースだ。早い話がYouTubeで動画コンテンツを視聴するのとあまり変わらない。あるいは、テレビをつけっぱなしで教養番組を見ているようなイメージだ。
こうした機会が増えてくると、午前11時や午後1時など、いわゆる配信のゴールデンタイムのようなものができてくる。つまり、視聴したいコンテンツがバッティングするわけだ。片方をリアルタイムで視聴し、もう片方は録画しておいてあとで見るということもできなくもないが、たいていは、両方を視聴し、画面を見ながら、重要そうなところの音声をオンにするという使い方をすることが多くなってしまった。
聖徳太子は8人とか10人といった大勢の人の話を聞き分けることができた伝説の人物だが、普通の人間にはなかなかそれが難しい。せめて、テレビのように、話者の言葉がテロップ化されて画面に表示されていればいいのだが、今のところはそれも難しい。AIが普及し、もっと正確に、タイミングよく音声をテロップ化してくれるようになる日を待つしかない。
同じツールを使う違う会議に参加できない
さらに、同時に複数のコンテンツを視聴しようとするときに困る問題が2つある。
ひとつは、個々のオンラインツールが複数の異なる会議へのログインを許可していないことだ。複数の会議がバッティングして、両方を聴かなければならないときに困ってしまう。同じオンラインミーティングツールで複数のインスタンスを起動することができないし、別のデバイスを用意して別々にサインインしようとしても、たとえば、Zoomではふたつめのデバイスでサインインすると、既存のサインインからはサインアウトされてしまう。
また、Teamsはデバイスが異なれば同時にサインインはできるのだが、対象はあくまでも同じ会議だけだ。これは、画面の共有などで互いの解像度が異なるような場合に役立つ。でも、ふたつの会議が同じオンラインミーティングツールで同時開催という場合はお手上げだ。カメラはひとつしかなくても、スピーカーがひとつでも複数の会議の音声は同時再生できるという点が完全に忘れ去られている。
もうひとつの困った問題は、ZoomにしてもTeamsにしても、音量を調整すると、そのデバイスのマスターボリュームを上げ下げしてしまう点だ。ふたつの会議が進行中に、片方の音声をミュートし、もう片方を聴き続け、映像を見ながら適当なタイミングでミュートを解除して音声を入れ替えるということができない。
やりたい場合は、OSのミキサー機能を利用することになる。Windowsなら、タスクバー右端にあるスピーカーアイコンを右クリックすると「音量ミキサーを開く」という項目がある。それを使うと、そのときにオーディオを再生しているアプリごとに音量を調整できるようになる。アプリごとの音声ミュートもここからできるので、それを使うことになる。
YouTubeなどは、複数のコンテンツを同時再生するのはカンタンだし、コンテンツごとに音量を調整するのもカンタンだ。ミュートだって、その場で直感的にできる。そっちのほうが使いやすいのは当たり前だ。こういうことを考えると、Google Meetなどがアプリを提供せずに、ブラウザーだけでサービスを利用できるのは、実は、使い勝手をよく考えた結果なのかもしれない。
会議の「新しい当たり前」で使い勝手向上に期待
オンライン会議が一般的になってから、すでに1年以上が経過し、さまざまな点での改良が頻繁に行われているのに、これらの点については手つかずの状態だ。
また、テレワーク環境での会議は、どうしたって相手にあわせる必要がある。同じ組織のメンバーだけでのミーティングなら、会議アプリは固定されているが、組織外組織とのミーティングなどは相手に合わせなければならないこともある。
ひとつの会議アプリを使い、いつも一定のメンバーだけとのコミュニケーションをするというのであれば何も問題はないだろう。でも、会議そのものは、この1年で、きわめてバリエーションが拡がっている。ここはひとつ、会議の新しい当たり前を考えなければならないように思う。
もうひとつ、ライブ配信のコンテンツは、一時停止や巻き戻しを可能にしてほしい。テレビにだって普通になった新しい当たり前なのだから、オンライン会議でも当たり前になってほしい。これは横着な願いかもしれないけれど。