ワクチン接種も始まり、長い長いトンネルの出口がうっすらと見えてきたように思えるのは単なる気のせいだろうか。でも、そんなことを考えないとやっていられない。とにもかくにも多くの人がストレスをかかえて日々の暮らしを送っている。
アフターコロナでモバイル市場が再燃する
この先、コロナ禍があけたとき、そのリバウンドが、いい意味でも悪い意味でも極端なかたちで起こるのではないだろうか。たまりにたまった鬱憤が一気に爆発するイメージだ。
ITの市場でいえば、ものすごい勢いでモバイルが再燃焼することが考えられる。人々の移動がまた始まるからだ。仕事はもちろん、観光でもだ。
当面は海外旅行は非現実的だろうけれど、国内での移動はものすごいことになる可能性がある。出張が制限されていた中で、必要な出張と必要ではない出張が仕分けされてしまったかもしれないが、コロナが明けたら元の木阿弥で、直近の穴を埋めることを口実にこれまで以上に出張が増えるかもしれない。やはりビジネスにはオフラインでのコミュニケーションが必要だというもっともらしい理由もある。きっと、ものすごい出張ブームがやってくるだろうし、展示会もたくさん開かれ、カンファレンスなども目白押しになる。
仕事のみならず、家庭でのITの使われ方も変わったし、これからも変わり続ける。国内での観光旅行需要も一気に高まり、それにともなって充実したモバイルインフラが求められる。GIGAスクールも本格化し、子どもたちが日常的にパソコンを使うようになる。5Gの環境整備も本格化し、当たり前のインフラとして使えるようになっていく。
コロナ禍で収入が激減した業種も少なくないのは事実だが、そうではない人たちが、消費を始めることで、停滞していた経済が一気に回り始める。それにともなって苦しい暮らしを強いられていた業種も先が見えてくるだろう。
在宅勤務にはじっくり仕事するためのデバイスが必要
コロナ過においては、でかけること、そして移動することは悪とされてきた。だからこそ必然的に、在宅勤務などで、一定の場所にいながらにしてあらゆることを実践することが求められた。
これは、かつてのモバイルがいつでもどこでも仕事ができることを求めたのと違うようで本当は似ている。その世界をめざしてきたのは不幸中の幸いで、だからこそ、いきなり在宅を求められても、すんなりと移行できたという事実もある。もちろん移行がもくろみ通りにできなかった現場もあるにちがいないが、その危機感を現実として早期に受け止められたのは悪いことではない。
その一方で、いつでもどこでも仕事をするためのデバイスが、自宅に腰を落ち着けて仕事をするためには決して最適ではないという事実もあぶりだした。
だからこそ、ノートパソコンに接続する外付けのモニターディスプレイが求められたし、より高音質でコミュニケーションができるようにマイクやスピーカーを内蔵したオンライン会議用のスピーカーフォンなどに注目が集まった。それどころか、複数のカメラを切り替えるためのスイッチャーなどのプロ向けに近い機材もももてはやされたりもした。
暮らしの場である自宅に仕事の場的なスペースを付加することも住宅にとっての重要な要素になった。そんなトレンドとともに、高品位な会議やセミナー開催などのためのノウハウも数多く蓄積されたはずだ。
とはいえ、一回目の緊急事態宣言から1年も経過しているのに、そのくらいのことしかできないのかといった事例も数多く目にし、将来への懸念もある。しかも、在宅勤務の状況は、2割程度にとどまり、一部でしかその環境が新しい当たり前として認識されていない。だからこそ、リバウンドが起こる。そして、そのリバウンドによってパンデミックのリバウンドがもう一度起こらないとも限らない。
デジタルでできることは、できるだけデジタルにしよう
コロナは、必要悪としての在宅勤務やテレワークの重要性を教えてくれたが、そのコロナを怖れる必要がなくなったときに、社会に生きる市民として、移動が当たり前のかつての生活に戻る方が、本当に幸せになれるのかどうかを今のうちに考える必要がある。
コロナはこの1年で、あらゆるコトのデジタル化を一気に推進した。いつかはそうなることはわかっていたが、遅々として進んでいなかった多くの事象のデジタル化が急速に進んだのだ。そのデジタル化が、コロナ明けでチャラになることはない。今後の市民生活を豊かなものにするためにずっと使われることになるはずだ。
キャッシュレスでの支払いや、あらかじめスマホなどで注文しておいてのテイクアウトとオンライン決済、スマートウォッチやバンドなどによる健康管理、一般家庭での固定インターネット接続、使い放題モバイルネットワークの低廉化、高速化、そして子どものパソコン利用に関するさまざまなノウハウなどは、コロナ禍でなくても、きっと豊かな暮らしに直結していくはずだ。
デジタル化がどこまで進めばいいのかという問いに対して正解はない。でも、デジタルでできることは、できるだけデジタルにするという姿勢を持ち続けることは大事だ。